反撃の狼煙
サンガチャルイ基地 5月24日 0741時
「今回は敵の飛行場を攻撃します。グルジアのバツミ空港です。そこは敵の爆撃機や攻撃機たまり場になっていて、ラウンデイルの無い軍用機の発着が偵察部隊によって確認されています」
情報担当将校のウラジーミル・ドネツク中尉がブリーフィングを開始した。
「この飛行場はすでに使われなくなっていたと考えられていました。しかし、エアーアイ社の無人機による偵察の結果、多数の軍用機が配備されていることが確認されました。所属は不明で、Su-24、FC-1、ミラージュ2000などが確認されています。ZSU-23、SA-6、SA-10が対空兵器として確認されています」
ドネツクは一息置いた。
「ここは間違いなく我々を今まで攻撃していた航空部隊の拠点の一つと考えられます。なお、グルジア政府は件の航空部隊や対空兵器の存在を否定しています。しかし、我々の味方がRQ-2パイオニア無人偵察機で探ってみた所、先ほど言った通りのものが見つかっています。写真をどうぞ」ドネツクは写真を全員に配り始めた。
「なお、今朝のハチマスとトブスに対する航空攻撃もここから離陸した攻撃機によるものと考えられます。実際、件の爆撃の前に我らが傭兵"エレクトロ・レイヴン"が国境付近に飛ばしていたRC-135VとEP-3が攻撃直前に空爆命令を出す通信をバツミから捕えています。それが決め手となりました。それではみなさん、幸運を」ドネツクはブリーフィングを終えた。
「ハワードたちの居場所はまだわからないのか」
佐藤がコガワに話しかけた。
「ああ。残念だが、全く手がかり無しだ。無人機でアゼルバイジャン領内は探してみたが、ダメだった。それも同じ場所を何度もな。しかし、破片らしきものの見つかっていない。もしかしたら、グルジア領内かアルメニア領内に拉致された可能性も無しでもないな。なあに、連れ戻して見せるさ」
「それにしても越境攻撃か。厄介だな」
「アゼルバイジャン政府はグルジアがテロリストを支援していると非難しているが、当然の如く、グルジア政府は沈黙している」
「待て、否定していないのか?」
「ああ。どういう訳だかは知らないが」
「ううむ」
「まあ、それは後回しだ。出撃しよう」
コガワは自分の装具を取りに行った。




