バツミ空爆-1
サンガチャルイ基地 5月24日 0833時
戦闘機のエンジンがスタートする音がサンガチャルイのエプロンに響き渡る。西側から東側まで様々な種類の機体が次々とタキシングし、離陸して行く。最初に上がったのは傭兵のF-14Aの4機編隊だ。彼らが先導し、敵の迎撃を迎え撃ち、攻撃機を護衛する。次に離陸したのは4機のEA-6Bプラウラーだ。敵の防空レーダーを探知して妨害し、さらには破壊するのが任務だ。3機のトーネードIDSと4機のミラージュ2000DはBLU-107デュランダール滑走路破壊爆弾を搭載している。飛行場の制圧には欠かせない兵器だ。さらにMiG-25が6機、離陸する。今回の攻撃目標は敵の航空基地であり、当然の如く、迎撃機が現れることは予測済みだ。KC-135とA330MMRTも次々離陸する。長距離攻撃に空中給油は欠かせない。
"ウォーバーズ"の戦闘機も離陸した。爆装をしたF-16とF/A-18をF-15、MiG-29、Su-27が護衛する形だ。
「敵さんはどれだけあそこに集めているんだ?」コルチャックが言う。
『さあな。情報によると爆撃機がほとんどだろう。あとは輸送機と空中給油機のようだ。そこを叩いておけば、かなり敵の戦力を減らすことができるだろう。そうすれば、今後は手出ししずらくなる』答えたのはカジンスキーだ。
「しかし、グルジア政府が未だに黙っているのが不思議だな。奴らに手を貸しているのを公然と認めているようなものじゃないか」
『確かにな。または『軍部が勝手にやってることだから、俺たちは知らん』という事かもな』
「気に食わんな」
『または本当に奴らの事を知らないのか。もしくは完全に奴らに政府自体を乗っ取られているのか』
「脅迫されてやむを得ずというパターンもあるぞ。ほら。この前、モロッコであったような」
『ああ。あったな』
2年前、モロッコ軍が突如として友好関係にあったはずのスペインとポルトガルを空爆や艦砲射撃で攻撃したのだ。NATO軍が規定に従ってモロッコを限定的に空爆したが、この話には裏があった。テロリストがモロッコ政府に対して、正規軍でイベリア半島を攻撃しろ。さもないと都市部に持ち込んだ炭疽菌や天然痘のカプセルを破裂させ、さらに神経ガスや放射性物質をまき散らすと脅迫し、実際にモロッコ政府がスペインとポルトガルを攻撃するまでカサブランカでサリンやVXガスが散布され続け、市民に多数の犠牲者が出たのだ。この事件はPMCとスペイン海兵隊特殊部隊が協力したため、世間が思っていたより早く解決することができた。
『あと50マイルで戦闘空域に入ります。気を抜かないように』
リー・ミンが注意する。カジンスキーは"ジッパーコマンド"で返答した。
グルジア上空 5月24日 0855時
佐藤は下を少し眺めてみた。山間部で小さな村が点在しているようだ。風力発電所の風車が林立し、ダムもあるようだ。他に軍の施設らしきものは見当たらない。どうやら、そこまで大きな基地を攻撃するわけでは無いらしい。
『レーダーに反応あり。2機。IFF反応無し。敵機とみなします』
原田の声が無線越しに聞こえてきた。
「"ウォーバード1"より"ウォーバード4"へ。敵の歓迎委員会だ。相手をしてやろう」
『"ウォーバード4"了解。交戦する』
F-15とSu-27は編隊から離れ、敵機に正対した。レーダーの反応を見ると、確かに2機の戦闘機らしき機影がマッハ1.6で接近している。
「いたぞ。MiG-23のエレメントだ。撃ち落としてやる」
佐藤はレーダーでロックするとAIM-120を選んだ。機関砲やサイドワインダーで遊ぶつもりはない。やがて、レーダーがロックしたことを知らせる鮮明なトーンが聞こえてきた。
「"ウォーバード1"、Fox1!」
『"ウォーバード4"、Fox1!』
R-27T1とAMRAAMがランチャーレールから飛び出し、敵機を目指して行った。ミサイルはそれぞれの先端部に搭載されたアクティヴレーダーで敵機を発見し、追尾を開始した。
ミグのパイロットうちの一人はすぐに反応した。レーダー警報装置が敵のレーダー波を浴びている事を知らせる。チャフとフレアをばら撒きながら加速し、逃れようとする。AIM-120は最初は敵機を捉えていた。しかし、途中で誘導装置に不調をきたし、目標を失って最後はロケット花火のように明後日の方向に飛んで行って最後は地面に墜落した。しかし、彼の相棒はそこまで幸運ではなかった。R-27に真正面衝突され、コックピットごと黒焦げになった。
「くそっ!1発外した!」
佐藤は自分の不運を激しく罵った。しかし、まだ敵あこっちにやって来る。考えている暇は無い。
『まだ生きている奴がいるぞ!』
コルチャックの警告が無線から聞こえた。敵機はすでに10マイルまでに接近している。他に手段は無い。佐藤はアフターバーナーに点火して敵機との距離を一気に詰めた。
ミグのパイロットは驚愕した。こいつ、ドッグファイトをする気なのか!?しかし、それと同時に興奮も感じていた。戦闘機に乗ってきて、心のどこかでずっと望んできた事。空中戦。殺し合い。面白い。あのイーグルのパイロットがどれだけの腕前なのか試してみようではないか!彼はイーグルと正面で向き合うように機体を旋回させた。正面からすれ違った後、後ろに回りこんで巴戦を開始しようと考えた。しかし、敵はそれをしようとするほど律儀では無かった。
今度は佐藤が驚く番だった。このパイロットは、まるで第二次世界大戦の戦闘機乗りのように、真正面から突っ込んで来た。こうなったら一撃離脱戦法を使おう。空自にいた時に、模擬戦でよく使った手だ。
MiG-25とF-15Cは正面からぶつかって行くような体制を取った。先に動いたのはF-15の方だった。彼我の距離が残り0.5マイルに入った時、機関砲の引金を引いた。20mm砲弾はコックピット、レードーム、エンジンを破壊した。フォックスバットは煙を引いて背後に飛び去っていった。佐藤はチラリと後ろを見ると、パラシュートが飛び出すのが見えた。運の良い奴め。
「こちら"ウォーバード1"、敵機撃墜。繰り返す、敵機撃墜。これより攻撃部隊に再合流する」
『了解"ウォーバード1"』AEWからスタンリーが言う。
すぐ隣に僚機のSu-27SKMが現れ、翼を振った。
『さすがだ。また撃墜マーク追加じゃないか』
コルチャックはそう仲間を讃えた。
戦闘シーンを追加しました。(加筆修正 2014 8/25)




