表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/15

タイトル未定2026/07/02 02:23

 四月初めの土曜日、繁華街の夜。

 朝は少し肌寒いものの、日中は暖かく、夜はまた朝と同じく少し肌寒く感じられた。

 繁華街は明るく、賑わいを見せていた。

 繁華街にある、チェーン店の居酒屋。

 繁華街の中でもひときわ大きく、土曜日の夜と言うこともあり、店内は店員の威勢がいい声と、お酒ですっかり気分が大きくなった客たちの声が溢れていた。

 店内のテーブル席に、マスターと白田流花が並んで座り、テーブルを挟んだ向かいに、馬場と友光ちはるが並んで座った。

 最初に頼んだビールのジョッキが運ばれ、四人は「乾杯!」の掛け声と共にジョッキを持ち、ビールを飲んだ。

「この四人で、飲みに来る日がくるとはな」

 電子タバコを吸いながら、馬場が言った。

「卒業するまで待って、ってシロが言い張るから」

 愚痴っぽくちはるが言うと、流花が言った。

「無事に卒業するまでは、落ち着かなくて。すみません」

 笑顔で言う流花に、ちはるは言った。

「ちっとも、すみませんって顔をしていないよ!」

 マスターと馬場は、声を上げて笑った。

 笑いが収まると、ちはるが流花の服装を見て言った。

「黒のジャケット白のブラウスに、黒のパンツ黒のローファー。完全にリクルートファッションね。シロのことだから、ジーパンにスニーカーで仕事に行くと思ったよ」

 ちはるの言葉に流花は、呆れて笑ってしまった。

「マスター、お店休んじゃっても良いの?」

 昼間は、実家の診療所の仕事。

 週末の夜は不定期で、barの仕事をマスターはしていた。

 ちはるの問いに、マスターは答えた。

「barを休まないと、皆さんとこうして飲むことができませんから」

 電子タバコを、空い終えた馬場が言った。

「相変わらず、マスターはやさしいな」

 やがて、オーダーをした刺し身の盛り合わせ、焼き鳥の盛り合わせ、だし巻き卵、アスパラのバター焼き等がテーブルの上に並んだ。

 テーブルの上に並んだ後、各自好きなお酒をそれぞれ注文した。

 次々に、お酒がテーブルの上に届く。

 酎ハイを飲みながら、馬場が流花に聞いてきた。

「シロちゃん、仕事はどうだ?」

「もういっぱい、いっぱい。仕事から帰ってきてからも、一級建築士の資格の勉強をして。そのまま寝ちゃって。朝起きて、慌ててシャワーを浴びて。そんな感じ」

 流花の言葉を聞いたマスターは、心配な表情をして言った。

「そんな生活を繰り返していたら、身体に悪いですよ」

「そうでもしないと、資格が取れない」

「そんなに、慌てなくても。資格は、仕事に慣れてからでも、遅くはありません」

「資格を取って、できれば自立がしたい」

「向上心がありすぎるのも、困りものですね」

 マスターはため息まじりに言ったが、内心はそんな流花を誇らしげに思っていた。

 それまで黙って目の前のマスターと流花の会話を聞いていた馬場とちはるは、そっと顔を見合わせた。

 ハイボールを飲みながら、流花がちはるに聞いてきた。

「前から気になっていたんだけど、馬場さんとちはるさんは、付き合っているんですか?」

 ハイボールを飲んでいたちはるは、思わず吹き出しそうになり、慌てて言った。

「冗談やめてよ!誰が、こんなゴリラと!」

 ちはるの言葉を聞いた馬場は、負けずに言い返した。

「俺の好みは、シロちゃんみたいに可愛くてやさしい子がタイプだ。友光とは、大違いだ!」

 流花は、声を上げて笑いながら言った。

「二人とも、お似合いですよ」

 流花の言葉に、マスターは吹き出しそうになった。

「シロ!あんた本当に、なんにも考えずに、言いたいことを言うのね」

「えっ、けっこう遠慮をして言っているけど」

 流花とちはるのやりとりに、マスターと馬場は笑った。

「マスター、シロちゃんって、いつもこんな感じ?マスターに、言いたいことズバズバ言っている?」

 馬場の言葉にマスターは何も言わず、ただ笑っていただけだった。

 さすがに流花は少し不安気に、マスターを見つめた。

「そんなこと、ありませんよ」

 マスターは、流花にやさしく言った。

「もぉ、マスターはシロに甘々なんだから!」

 少し羨ましげに、ちはるが言った。

 お酒や料理が進んだ後、馬場は

通りかかった店員に声をかけ、メニューを指さして言った。

「この、イチゴパフェ一つ」

 店員がいなくなると、ちはるは顔をしかめて言った。

「あんたって、ホント甘い物好きね」

「馬場さん、甘いものが好きなんですか?」

「おう!大好きだ!……あっ、シロちゃんには内緒にするつもりだったのに」

「大ぴらに注文して、何が内緒にするつもりだったよ」

 ちはるが毒づくと、馬場が言った。

「せっかくのダンディズムが、台無しだぜ」

 この言葉に、テーブル席は凍りついてしまった。


 居酒屋を出ても、繁華街はネオンの光で明るく、人通りが絶えなかった。

 居酒屋の前で、マスターと流花は、馬場とちはると別れた。

 マスターと流花が歩きだすと、どちらともなく、手をつないで歩いていた。

 手をつないで歩くマスターと流花の後ろ姿が、次第に小さくなっていく。

 ふと流花が立ち止まり、マスターも一緒に立ち止まった。

 流花は手を伸ばして、何かを指さした。

 流花が指をさしている方をマスターも流花と一緒に見上げ、マスターは流花の肩を抱いて一緒に笑いあった。

 笑いを収めると、マスターは流花の肩を抱いたまま歩きだした。

 寄り添って歩くマスターと流花の後ろ姿は、繁華街の明かりの中で見えなくなっていった。

 居酒屋の店の前で、馬場とちはるは見えなくなるまで、マスターと流花を見守っていた。

「マスターとシロちゃん、仲良くやっているじゃん」

「恋人って言うより、仲の良い親子って感じ」

 ちはるの言葉に、馬場は笑った。

「これから、どうする?どっか行く?」

「う〜ん……今夜は、このまま帰る」

「そうか」

 馬場とちはるは肩を並べて、繁華街を歩いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ