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第九話 ふっ、雑魚か

更新が遅くなってしまいました。すみません!

 そもそも、ゴブリンって何なんだろうか。これは哲学的な問いとかそういうものではなく単純な疑問だ。


 よくわからないのだが、俺はさっきから不安なのだ。


 一般的に、ゴブリンは最弱のモンスターという風に言われている。見た目は人型で肌の色は緑、そして醜いというのが定番と言えるだろう。ついでに言うと、悪臭がするという設定も定番だ、まったくもって嬉しくない設定なのでこの世界に反映するのはやめてほしいが。


 そんなわけで、まったく不安に思う必要のない相手であるはずなのだが、いざ戦場に出てみると、外でわざわざ作戦を立てていたことだったり、さっきから呼吸が浅く早くなっている仲間たちの様子だったり、そういった何でもないような普通のことがどうしても強調されてしまい不安になってしまうのだ。


 しかし、ゴブリンと出会う前から不安になっていてもしょうがない。ゴブリンをどう倒すのか、それについて考えるのが建設的だろう。


 まず、俺はショートソードっぽい何かを持っている。これは学校で借りた武器であるので、多分だが、あまり強くない安い武器だろう。そもそも、俺は普通の高校生だったので、武器の種類はゲームでちょっと知っている程度だし、扱いに関しては完全に素人だ。


 そういう風に考えてみると、素人に良い剣を渡したところで使いこなせるはずもない。豚に真珠というやつだ。だから、この剣が安物かもしれないということは問題ない。


 そうはいっても、この後には必ず戦闘が待っている。正直に言って、今まで平和な日本という国で暮らしてきたただの高校生が、命懸けで戦えるのかといえば無理だ。それに、俺は絶対に命を懸けて戦うなんてことはしたくない。したくはないのだが、状況はそう簡単にはいかないようだった。





 オオヤマダはゴブリンにはもう気づかれてしまっているというのに、こそこそと息をひそめるようにして言った。


「ゴブリンが三匹近づいているみたいだぞ。どうする西宮!」


 あれは完全に人の姿をしていない、当たり前だが化け物だった。だが、奴らのビジュアルは思ったよりは悪くなかった。ただ、ラノベでよく見るような緑色の皮膚を持っていて、持っていて……刺激的な臭いがした……。まるで塩酸を直接嗅いだようなひどい臭いだった。


「三匹なら作戦に変更はないわ! あと、オオヤマダ、もうすでにやつらは私たちの存在に気づいているわ! まずは、オオヤマダ、あなたが敵の注意を集めてちょうだい!」


「ああ、分かった。任せろ!」


 オオヤマダは何を考えているのか知らないが、戦闘中だというのに急に目を閉じて動きを止めた。そして、オオヤマダはどこか決心したような様子で叫んだ。


「俺は肉壁だ!」


 すると、能力を使ったようで、オオヤマダのもとにゴブリンどもが集まってきた。それも、嗜虐的な笑みを浮かべて。よくあんな状態でオオヤマダは守りを崩さないでいられるよな……ってあいつ棍棒でタコ殴りにされているけど、ダメージが全然入っていないだけっぽいな。守りは普通に崩れている。あれがあいつの能力なのか?


「アオキ、あなたは後方を警戒して異常があれば知らせてちょうだい! 能力の使用は任せるけど、安全が最優先よ!」


「任せろ! 剣は使ったことないけどな!」


「ええ……アオキ君、それは絶対に今言わないほうが良かったよ……」


 すまんな、シズカちゃん、でも、情報の共有って大事だろ。俺は本当に素人なんだ。そういえば、刃物を振り回すことになると思うんだが、後ろに勢い余って刃を向けないようにしないとな、目も当てられない結果になっちまう。


「アオキ! ふざけてないで真面目にやってちょうだい! 私が魔法を打つまででいいから真面目にやって!」


「すまな――」


「すまん! 俺の肉壁があと少ししか持たなそうだ! 西宮の魔法の準備はできたか!?」


 オオヤマダ、俺の謝罪をキャンセルしやがって何のつもりだ? あれ、ちょっと待てよ、今あいつ肉壁があと少ししか持たないって言ったか、早すぎるだろ、まだ戦闘始まって十秒とかそのくらいだと思うぞ。というか、この状況やばくないか? オオヤマダが決壊したら、俺があのゴブリンどもを迎撃しなきゃいけないってことだよな。一人で、素人が三体を? いや、無理だろ。


「オオヤマダ! 必死で耐えてくれ! お前が崩れたらこの戦線は崩壊するぞ!」


 そう言って、オオヤマダはさわやかな笑みを浮かべた。


「すまないが、それは無理だ。俺の想像力と痛覚とかもろもろの均衡はあと少しで崩れる。もしそうなったら、ごめん!」


 そう言った瞬間、オオヤマダの守りは決壊した。


「オオヤマダ、笑顔で許されるわけないだろ! 後で覚えておけよ!」


 とは言ったものの、ゴブリンどもとの距離はあと数メートルってところだ。俺の後ろには西宮とシズカちゃんがいる。西宮は……魔法の準備中だから守らないといけない。シズカちゃんは……加勢してもらえるかもしれないな。


「シズカちゃん! 加勢できそうか?」


「任せて! 魔法だと怖いから、槍で加勢するね!」


 なるほど、フレンドリーファイアがあるから槍で応戦するのか。シズカちゃんは冷静だな、これは期待できるかもしれない。


「ああ、頼む!」


 二人で守りを固められそうなのは良いことだが、いつまで俺たちは西宮のことを守ればいいのだろうか。


「西宮! あとどのくらいで魔法を撃てそうだ?」


「もう撃てるわ! ただ、あなたたちも巻き込まれてしまうから、今は撃てないわ! オオヤマダは動ける?」


「俺は無理だ。回復してもらわないと能力の再使用は厳しい!」


「分かったわ。ヤマモトさんとアオキは能力を使って、ゴブリンの動きを離れた状態で止めてちょうだい。オオヤマダは怪我自体はほとんどしていないんだから、アオキ達をサポートしてあげて!」


 オオヤマダは不満がありそうな顔で西宮を見た。


「西宮、正気か? いや、分かった。痛くてもサポート頑張るから睨まないでくれ!」


 能力を使うといってもどう使えばいいんだ? こいつらは棍棒を本気で振り回しているんだぞ、そんな状況でどう想像しろと? ゴブリンだからといってなめてかかるのは早計だった。ゴブリンさん、すみません!


「アオキ! お前の動きに不安しかないから、ポジション交換だ! この状況じゃ西宮は魔法を撃てない。お前の能力でなんとかしてくれ! ファイト!」


いや、不安しかないのは確かだけれども、面と向かって言われると傷つくんだが。しかも、あいつファイトって……他力本願かよ。あれ? ファイト、ファイト……? 入学式のときのオオヤマダか! これだ!


「入学式の日に凍らせられた非常識なやつがいたよな、式典!」


 俺はあの時の校長のオオヤマダだけを器用に凍らせた氷魔法とあの時のオオヤマダの様子を思い浮かべて、三匹のゴブリンをオオヤマダに見立てて能力を発動した。


「グガ? ギャ!?」


「ギャー!」


「おい待て! それは俺の黒歴史だ! 掘り返さないでくれ!」


「ギャア! ギャア!」


 ゴブリンどもの表情からは嗜虐的な笑みは消え去り、やつらは羞恥心に悶えるような表情で凍った。





 これはあとで知ったことだが、あの場には若干一名真っ赤になって悶えている経験者もいたらしい。オオヤマダ、ありがとう。

最後までお読みいただきありがとうございます!

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