思い出せない日々
# 『君と僕はどのように』
## 第二話 思い出せない場所
朝、目が覚めても、昨日の出来事が頭から離れなかった。
机の上には、小さく折りたたまれた一枚のメモ。
**『今度は、忘れないで。』**
何度読み返しても意味は分からない。
誰が入れたのか。
どうして俺なのか。
そして、一番引っかかるのは――。
「なんで、あいつの顔を見ると懐かしいんだ……。」
俺はメモを制服のポケットへしまい、家を出た。
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教室はいつも通り騒がしかった。
「おはよう!」
「昨日の宿題やった?」
そんな声が飛び交う。
俺は自然と窓際を見た。
神崎澪は今日も一人、本を読んでいた。
昨日と同じ場所。
昨日と同じ表情。
違ったのは、俺だけだった。
気になって仕方がない。
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昼休み。
弁当を食べ終えた俺は、意を決して立ち上がった。
「ちょっといい?」
澪はゆっくり本を閉じる。
「……うん。」
「昨日さ。」
ポケットからメモを取り出した。
「これ、お前?」
澪は紙を見る。
数秒。
何も言わない。
そして静かに首を横へ振った。
「違うよ。」
「ほんまに?」
「うん。」
嘘をついているようには見えなかった。
でも。
彼女の目は、メモを見た瞬間だけ少し揺れた。
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放課後。
昇降口で靴を履き替えていると、澪が一人で学校を出ていくのが見えた。
なんとなく気になった。
「……少しだけ。」
自分でも理由は分からない。
気づけば後を歩いていた。
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十分ほど歩いただろうか。
住宅街を抜けた先に、小さな公園があった。
古いブランコ。
少し錆びた滑り台。
子どもの頃によくありそうな公園。
澪はブランコへ座る。
何もせず、ただ風に揺られていた。
俺は少し離れた場所から見ていた。
すると。
「隠れても分かるよ。」
突然、澪が言った。
俺は思わず苦笑いする。
「バレてた?」
「最初から。」
「ごめん。」
「いいよ。」
怒ってはいなかった。
俺はゆっくり近づき、隣のブランコへ腰を下ろした。
ギィ……
古い鎖が小さく鳴る。
夕日が二人を照らしていた。
しばらく沈黙が続く。
「ここ、好きなん?」
俺が聞く。
澪は前を向いたまま答えた。
「好き。」
「昔から?」
「……うん。」
俺は公園を見回す。
不思議だった。
初めて来たはずなのに。
胸の奥がざわつく。
「なんか。」
「どうしたの?」
「ここ、来たことある気がする。」
その瞬間だった。
澪が勢いよく俺を見た。
「本当に?」
その表情は、初めて感情があふれていた。
「いや……気のせいかもしれん。」
「そう……。」
彼女は少しだけ寂しそうに笑った。
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帰ろうと立ち上がった時だった。
ベンチの横に、小さな傷があることに気づく。
誰かが彫った文字。
古くて読みにくい。
俺はしゃがみ込んだ。
土を払う。
少しずつ文字が見えてきた。
**『ゆうま みお』**
心臓が大きく鳴る。
ドクン。
ドクン。
「……なんで。」
俺は澪を見る。
彼女はその文字を見つめながら、小さく目を閉じた。
「やっと見つけたんだね。」
風が吹く。
桜の花びらが、二人の間を静かに舞っていった。
**――第三話へ続く。**




