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交際クラブの男 ~会員番号の3618~  山城誠四郎  作者: 山城誠四郎
第二章 ハイスペックの女 みどり編
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第7話 次の出会い 慶応卒、元CA ハイスペックの女 みどり

真理との別れから二週間が経った頃、山城は再び交際クラブの担当者加藤に連絡を入れた。


真理のことは、まだ胸の奥に残っていた。そのカンフル剤として、次の女を求めた。何人かの女性を紹介され、夜も共にしたが、心の穴は埋まらなかった。


ベッドを女性と共にすれば忘れられると思った。だが、なかなかその通りにはいかなかった。もちろん、少しずつストレスは緩和されたが、真理を思い出すことが多かった。


ただ、真理に心残りがあるのは間違いないが、もう一度戻りたいとも思っていない。この感覚をうまく表現できないが、山城は「たぶん、彼女の残像だろう」と感じていた。


男は、目で人を愛することも多い。特にこのクラブの特徴はそうかもしれない。


やはり、目に入り、真理を上回る美しさがなければならない気がした。


そんな山城を加藤は上客と見て、毎日のように新しいリストを送ってくるようになった。


「山城様、今回は少し幅を広げて、何人かご紹介させていただきます」


写真、プロフィール、学歴、職業。画面をスクロールするたびに、次々に女たちの顔が流れていく。


山城は、以前のように恥ずかしさを感じなくなっていた。


最初の頃は、自分の好みを伝えることすら躊躇していた。写真だけで選ぶことに抵抗があった。顔やスリーサイズを基準にするなど、まるで自分の性的な好みをさらけ出すようで、とても恥ずかしかった。


だが、交際クラブとはそういう場所だ。好みを正確に伝えた方が、より良い紹介を受けられる。それが分かってきた。


加藤も、山城の遠慮と趣向を手探りながら分かってきていたが、絞り込みをするまでには至らず、少し幅広にリストを送ってきた。


その中で、山城の目に留まったのが羽鳥みどりだった。


顔は整っていて、可愛らしい。身長は168センチ。スリーサイズもモデルのようで、水着姿の写真では見事なバストが目を引いた。


そして、何より驚いたのは、プロフィールに「慶応大学卒」と学校名が明記されていたことだ。


真理の時も学歴は高かったが、学校名は伏せられていた。付き合ううちに有名国立大学出身だと知ったが、最初から堂々と慶応大学と出しているのは珍しかった。


顔バレを避ける傾向があるこの世界で、これほど情報を出すのは、自信があるのか、それとも何か理由があるのか。


山城はLINEで加藤にリクエストを送った。


「この羽鳥みどりさんに会いたい」


しばらくして、返事が来た。


「承知しました。先方も了承されましたので、日程を調整いたします」


数日後、山城はみどりと会うことになった。


場所は、いつものように少し高級な店を選んだ。真理の後にも何人か紹介を受けていたので、山城は少しずつ手慣れてきていた。


最初の頃は誰にでも敬語で接していたが、今は相手によって変えるようになっていた。年齢、雰囲気、話し方。それに合わせて、自分の言葉遣いも調整する。


そうした表面的な対応は、確かに身についてきていた。

みどりは、時間ぴったりに現れた。


写真で見た通り、顔は可愛らしかった。化粧は薄めで、服装は彼女なりにかなり落ち着かせたつもりだったのだろうが、それでも少し派手だった。ブランドのバッグを持ち、高そうなアクセサリーをいくつもつけている。


「初めまして~、羽鳥みどりです」


声は明るく、笑顔も屈託がない。ただ、その話し方が、語尾を伸ばしてしゃべる、どこかキャバクラっぽかった。


「山城です。よろしく」


山城は軽く手を上げて応じた。

席に着くと、みどりは慣れた様子でメニューを見た。


「わあ、このお店、来たかったんです~。有名ですよね」

「そう? じゃあ、好きなもの頼んで」

「ありがとうございます」


みどりは、山城が思っていたよりも砕けた話し方をした。敬語は使っているが、どこか軽い。真理のような知的な落ち着きはなく、もっと明るく、少し子供っぽい感じがした。


「大学は慶応だったんだよね」

山城が聞くと、みどりは嬉しそうにうなずいた。

「はい! 一応、慶応です」

「一応って、すごいじゃない」

「いやあ、勉強はできたんですけどね~。でも、今はもう全然勉強してないです」

「今は何してるの?」

「今は六本木のラウンジで働いてます」

みどりはあっさりと言った。

「ラウンジ?」

「はい。いわゆる銀座のクラブとキャバクラの中間みたいな感じです。私服で行くクラブっていうか」


山城は、銀座のクラブには行くことがあったが、六本木のラウンジという仕組みは知らなかった。


「お客さんは、どんな人が来るの?」

「いろいろですよ~。景気がいい人もいれば、ハングレみたいな人もいるし。たまに、羽振りがいいなーと思ったら、次に会ったら警察に捕まってましたみたいな人もいます」


みどりは笑いながら言った。

山城は少し驚いた。そんな危ない場所で働いているのか。慶応大学を出て、なぜそんなところにいるのか。


「大学を出てから、ずっとラウンジで働いてたの?」

「いえ、最初はJALに入ってCAしてました」

「航空会社の?」

「はい。英語もできたし、勉強もできたので。CAになりたくて」


彼女がしゃべらず、外見だけであれば、CAというのはとても似合う気がした。


「それで?」

「でも、コロナ禍に突入しちゃって。飛行機飛ばなくなって、CAの仕事があっという間になくなって、会社から弁護士事務所の秘書みたいな仕事に派遣されたんです」

「それは大変だったね」

「全然面白くなくて。それで辞めちゃいました」

「辞めて、ラウンジに?」

「はい。お金も必要だったし、夜の方が稼げるので」


みどりは、まったく恥じる様子もなく、淡々と話した。

山城は、その軽さに少し戸惑った。戸惑いながらも、あっけらかんとしゃべる羽鳥の勢いに乗って、質問した。


「お父さんとしては、慶応大学まで出して、ラウンジで仕事というと、ちょっと残念なんじゃないかなぁ?」


突っ込んだ話だが、彼女は答えた。


「母親には言っていません。父親に話したら、おじいちゃんのお墓に連れていかれて、『おじいちゃんに謝れ』って言われました」


山城は、思わず大きな声で笑ってしまった。

何でも羽鳥のお父さんは山城より少し年上で、先祖代々良い家系のようで、筋を通す人のようだ。

ただ、彼女は意外にも笑わずに、その時のことが頭にフラッシュバックしているかのように、表情を曇らせた。


「本当にいやで、お墓の前のコンクリートで正座して土下座したんですよ」

「マジで、死ぬかと思った」

と本当に不機嫌そうに話した。


山城は笑いを抑えながらも、この女の人間らしさを感じた。真理は、自分の過去を話す時、どこか慎重だった。言葉を選び、相手の反応を見ながら話していた。だが、みどりは違った。隠すこともなく、飾ることもなく、ただ事実を話している。


「じゃあ、今は夜の仕事だけ?」

「そうですね。昼間は基本的に寝てます」

「へえ」

「飲みに行くのが好きなんです。カラオケ行ったり、友達と遊んだり」

「楽しそうだね」

「楽しいですよ~。でも、お金はすぐなくなっちゃいます」


みどりは笑った。


山城は、その笑顔を見ながら、少しずつ彼女の輪郭が見えてきた。

学歴は高い。勉強もできた。だが、堅実に生きるタイプではない。お金を使うのが好きで、夜遊びも好きで、プライドもある。

そして、男を「金」として扱うことに、まったく抵抗がない。

真理とは、まるで違うタイプだ。

真理は計算高かった。言葉を選び、距離を測り、相手を見ていた。だが、みどりはもっとストレートだ。欲しいものは欲しいと言い、楽しいことは楽しいと言う。


その分かりやすさが、山城には新鮮だった。

食事が進むにつれ、みどりはどんどん話し始めた。


「この前、友達とブランドのバッグ買いに行ったんですよ」

「買ったの?」

「買っちゃいました。でも、次の日にはお金なくなってて」

「それは大変だね」

「ほんとですよ~。だから、こうやって山城さんみたいな優しい人に会えると助かります」


みどりは、まっすぐ山城の目を見て言った。

その目には、計算も、遠慮もなかった。

「かわいい」と言われて育ったのだろう。そして、その「かわいい」を武器にして生きてきたのだろう。

山城は、少し笑った。


「正直だね」

「だって、嘘ついても仕方ないじゃないですか」

「そうだね」

「山城さんも、私みたいな子と遊びたいから来てるんでしょ?」


その一言に、山城は少し驚いた。

だが、否定はできなかった。


「まあ、そうだね」

「だったら、お互い分かりやすい方がいいじゃないですか」


みどりは笑った。

山城は、その割り切り方が、どこか心地よかった。

真理の時は、いつも相手の気持ちを探っていた。本心はどうなのか。自分のことをどう思っているのか。

だが、みどりには、そんな探り合いがない。

彼女は金が欲しい。山城は若い女と遊びたい。それだけだ。

山城は、そう思い込みたかった。

食事が終わる頃、山城は聞いた。


「このあと、どうする?」


みどりは少し考えるふりをして、すぐに答えた。


「ホテル、行きます?」

「いいの?」

「いいですよ~。山城さん、優しそうだし」


山城は「優しい」という女性の言葉にはもう慣れていた。

優しそうだから、ホテルに行く。

それは褒め言葉なのか、それとも都合がいいと思われているのか。

だが、山城は深く考えるのをやめた。

今夜は、こういう夜でいい。

二人はホテルへ向かった。

部屋に入ってもみどりは変わらず、よくしゃべっていた。


「シャワー、浴びてきますね」


「うん」


みどりがバスルームに入ると、山城はベッドに腰を下ろした。



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