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ヒーローは誰?  作者: 花名
春の宴
48/48

あなたと歩む未来

これで完結です。


最後まで読んでくださり

ありがとうございます。

 あれから、クラウドが二人で話したいと言い出し、場所を移すことになった……。周りからの目は生ぬるく、身の置き所がない。


 クラウドはからかう隊長達を追い払って執務室に入ると鍵をかけ、唐突に胸の谷間に指を突っ込んできた。


「いぃ!?あぁ゛?」


 突然、何を!?驚愕する私に、クラウドはニッコリ笑うと、布に包まれた小さな何かを取り出す。


 あぁ…。…。そう言えば預かってたね。すっかり忘れてたっていうか、心臓に悪いから止めて。出来れば一声かけて欲しかった、いや、言ってくれれば自分で取ったし。


 クラウドが包みを開くと中からフラニを型どった可愛らしい指輪が出てきた。


「実は、貴女に贈ろうと思って急いで用意したんです。」


 急いで用意した?


 クラウドを見ると、取り合えず座るようにと促される。ソファに座ると、隣に腰をおろしたクラウドが手を取って囁く。


「フラニ、お好きでしょう?」


 うっ…バレてる。


 誰にも言ったことないのに…。いつ気付いたんだろう。


 クラウドがそっと私の手に指輪をはめる。


「貴女の隣で、一緒に人生を歩ませてもらえませんか?これからは私にも不安を分けて欲しい。もう、一人で抱えたりしないで。これからは貴女の側には私がいます。」


 一緒に歩む……。ずっと側にいてくれるの?


「私で、いいの?」


「えぇ。貴女がいい。貴女が欲しいです。この半年あまり、自分がどれだけ独占欲が強いかも思い知りましたしね。

 これ以上、他の男が貴女の側をうろつくのも、貴女が他の男に目を向けるのも、正直 耐えられそうにありません。」


「いや、そんなこと言ってたら仕事にならないんだけど…。でも、そっか…。クラウドの嫁…。」


「私は次男ですし、養子に入っても構いませんよ?

私を貰ってくれますか?」


 クラウドは大きな身体で可愛らしく首を傾げる。いつの間にそんな技を覚えた。


 いや、それより、私の答えは決まってる。



「よろこんで。」



 クラウドに抱きつき背中に手をまわした。胸に頬をよせると温かい体温が伝わり心地いい。クラウドはぎゅっと抱き締め返してくれた。


 クラウドの首を引き寄せて私から唇を重ねると、少し驚きつつも、すぐに角度を変えて深く唇を重ねられる。


 髪の生え際を逆立てるように手を差し込み、クラウドの柔らかい髪の感触を楽しみながら、もう片方の手は脇から回し、堅く筋肉質な背中に爪をたてる。


「ん…。」


 しがみつくように絡ませていた腕を緩めた拍子にドレスとコルセットが腰に落ちた。


 いつの間に!?


 隠そうとすると、何故か手首をつかまれてしまう。


「ダメ。見たい。」


 あらわになった上半身を熱の籠った目で見られ、羞恥心で顔が火照るのが分かった。見られてるだけなのに、何でこんなに恥ずかしいの?


 薄紅に染まった鎖骨に唇が落ちる。


「…ぅん。」


 クラウドの暖かい舌に、たえられず吐息がこぼれた。


「……堪らないな。全部欲しい…。」


 いつもより少し掠れた色っぽい声で囁かれて、何も考えられなくなってくる。


 背中を優しく撫でるクラウドの手が不意に止まった。


 ぼんやり見上げると、目に警戒の色が浮かんでいる。それを見て、一気に頭が覚醒する。


 (もや)が晴れた頭に、踏み鳴らす足音と焦った声がようやく届いた。



 (ダンッ、ダンッ、ダンッ)


 (マジですかぁ?やめましょうよ。)




 誰かが来る。一人はアルだ。




 (ワァア!ガシャーンッ!)


 (俺、やだってぇ。)




 慌ててドレスを引き上げるが、背中のボタンが間に合わない。


 クラウドがこちらを隠すように扉に向かって立った。




「お前達はそこで待て。」


 ダンッ、ダンッ。


 バンッ!!



 扉が蹴り破られ、現れたのは爽やかな笑顔の兄様。その後ろではアルが手で顔を覆って首を振っている。



「セレシア、そろそろ帰るよ?」


「お兄様!?」


「……これを着なさい。」



 差し出された外套は見覚えのあるものだった。これ、私のだよね。屋敷からわざわざ取って来てくれたのかな?いつものそつのないエスコートに素敵な笑顔。それに対して、無惨に壊れた扉がギャップあり過ぎて怖い…。


 畏縮して固まる私に兄様は外套を羽織らせるとボタンをすばやく留めて、優しく帰宅を促した。そして、クラウドに向き直ると、感情のこもらない声で話かける。


「クラウド君、おめでとう。二人が婚約しただなんて、私も知らなかったから驚いたよ。不思議な事もあるものだよねぇ?そう思わないかい?

 それにしても、我が妹は図らずも男の目を引くところがあるから、君もさぞ気を揉んだことだろう。

 けれどもう心配ない。わざわざ皆の前で王太子(ラピス)に発表させたんだ。二人の仲が国中の知るところとなった今、既成事実など微塵も必要ない。安心して“結婚後に”ゆっくり愛を育むことが出来る。良かったな。

 …では、私達はこれで失礼しよう。」


 ほら、帰るよ?と、嵐のようにセレスが連れ去られた後、クラウドは眉間にシワを寄せ、無言で壊れた扉を睨んでいる。


「あ~、まぁ…頑張れ?どのみちあの人は避けて通れない。」


 アルのなけなしの慰めの言葉だけが、部屋に残る。


 強力な番人のいる宝を、本当の意味で手に入れる事が出来るのは、まだまだ先の話。

これで完結ですが、まだ書き残したこと

(黄国ルークス王子など)があるので

書き上がりましたら、再び連載する予定です。


いつになるかは、まだ分かりませんが

またご縁があり、読んでいただけたら幸せです。


ありがとうございました。

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