入学試験
月明かりに照らされたオリンポス魔法学園。
大理石の柱が並ぶ円形の試験場には、緊張した面持ちの受験生たちが集まっていた。天井のドームには神話のフレスコ画が描かれ、月光が魔力を反射して幻想的に輝く。
アーサーは周囲を見回し、思わず小声で呟く。
「……ここが、学園か……」
遠くに二人の少女が立っていた。一人は冷静な空気を纏うルミナス・エテルネル。
「……誰だ、あの人……?」
アーサーは一瞬、黒髪に見えたルミナスを認識できず目を細める。しかし光に反射して金髪がちらりと見え、驚きが顔に浮かぶ。
「……えっ、金髪……?」
隣には従者の少女。茶髪ショート、緑色の瞳。静かに立つだけで、必要以上には動かない。
試験官の合図が響く。
「開始!」
受験生たちは次々に魔法を発動する。
火の玉を飛ばす者、風を操る者、水の壁を作る者。
炎と光が飛び交い、闘技場には魔力の音が渦巻く。
アーサーも拳を握り、炎を生み出そうとするが、感情が先走り暴走。
「うわっ……抑えられねぇ!」
手元の炎が跳ね、近くの大理石に火花が散る。
隣の少年が叫ぶ。
「おい、大丈夫かよ!」
アーサーは振り返る余裕もなく、必死で炎を押さえる。
ルミナスは遠くから冷静に観察するだけ。声はかけない。
従者の少女も控えめに立ち、横目でアーサーの様子を見守る。
アーサーは深呼吸して再挑戦する。
「……落ち着け……呼吸……集中……!」
炎はゆらりと揺れながらも、徐々に手元に収まる。
「……よし……少し……安定したか?」
アーサーは息を切らし、汗を拭いながら周囲を見渡す。
試験場では他の受験生たちも必死で魔法を操っていた。
火球が壁をかすめ、風が渦を巻き、光の矢が天井のドームに反射する。
アーサーはその光景を見て、自分の力の小ささと可能性を実感する。
ルミナスは動かず、ただ冷たい視線を送る。
従者の少女がそっと呟いた。
「初めてにしては、上出来だと思います」
アーサーは肩を落としながらも、ほんの少し自信が芽生えた。
「……くそ……でも、やれる……」
試験場の大理石に反射する炎は、未熟な魔力の象徴であり、同時に学園の過酷さを示していた——。
その夜、アーサーは初めて「魔力を自分で制御する感覚」を少しだけ掴んだ。
だが、学園にはまだ多くの試練と、陰謀の影が潜んでいる——。




