表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/34

ねえ、このパン美味しくない? 前編

時は一か月前に遡る。


「ここが王都かぁ…………」


 私は透明化の魔法で適当に門番を躱して、バルーン王国の王都へと忍び込んでいた。


 大魔王の魔王城と、生まれ育った森から出たことのなかった私にとって、そこは未知の世界だ。


 空飛ぶ巨大建造物や、道行く多くの人々。

 魔王城でよく食べていた赤い果実が積まれた木箱、遠くに見える巨大なお城。


 ―――――だがそれよりも、おいしい匂いの方が重要だった。


 リムルに聞いたことがある。

 人間の街には、道の隅で色々なものを売っている『露店』というものがあると。


 『露店』には武具やアクセサリーといったものから、大道芸と思われる娯楽もあった。


 その中でも、特に目を引くのは香ばしい煙を漂わせている、数々の食べ物だ。


「おいしそう…………」


 思わず涎があふれてくる。


 串にさし、焼いて蜜をたらした青い果実。

 香辛料をたっぷりとまぶした焼肉。

 噛めばパリッと心地よい音を鳴らしそうな腸詰。


 どれもこれも、城ではほとんど見たことのない物ばかり。

 今度、リムルが帰ってきたら作ってもらおうと、私は心に硬く誓った。

 だが、まずは、


「ねえ、おじさん、これちょーだい!」


 この空いた腹を満たそうと、甘い香りの骨付き肉を売っている『露店』の男に話しかけた。


「あいよ! 一本500ガルムだ」


「……………ごひゃく、がるむ?」


 あ、と思った。

 そういえば、人間の国の金を持ち合わせていない。

 魔族の国の(かね)なら、『空間収納』に大量にぶちこんできたが、言われてみれば、これは人間の国では使えない。

 どうしよう。


「もしかして、金を持ってねえのか?」


「…………(こくん)」


「ありゃ、それじゃあ、これは売れねえなぁ」


「んー…………」


 まさか、人間を脅して金を奪うわけにもいかない。騒ぎになって、数多いる勇者にでも嗅ぎつけられたら―――負けはしないだろうが―――面倒だ。

 であれば、正攻法で稼ぐしかないだろう。


「ねえ、お金を稼ぐのって、どうすればいいの?」


「そりゃあおめえ、働くしかあるめえよ。働き口がない時は、冒険者ギルドで仕事を貰うのが普通なんだが…………」


 ちらり、と男は私の体を眺めて、


「お嬢ちゃんじゃあ、無理だなぁ」


「え、なんで?」


「冒険者の登録は15歳からなんだよ。おめえさん、10歳やそこらだろ?」


「あー…………」


 実年齢はプライバシーなので伏せるが、普通の人間なら寿命で死ぬくらいは生きているとだけ言っておく。


 だけど、確かに私の見た目は人間でいうところの10歳くらいだろう。

 変身できれば変わってくるだろうが、生憎、私はできない。

 魔王と言っても、万能ではないのだ。


 入国するときはそれで問題なかったのだけれど、こういう時、暴食の魔王ゲルゲルのような変身ができる種族が羨ましい。


 胸も大きくできるし。


「まあ、行ってみるよ。ありがとねー」


「おうよ。昼間なら大丈夫だろうが、気を付けてな」

モチベ上がるのでブクマ評価くれると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ