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ねえ、パン好き?

データが全部吹っ飛んで遅くなりました

「えーっと、ここかな?」


 リムルから貰った地図の通りに進むと、20分ほどで孤児院には着いた。

 このあたりはあまり治安のいい場所ではないようで、周りを見れば目付きの悪い男がちらほらと見受けられる。

 どうやら私の様子をうかがっているようにも見えるけれど、私に手を出してくる様子はなかった。

 というよりも、孤児院に近づいてくる様子はない、と言った方が正しいか。


 孤児院は外から見た感じ、10部屋ほどはありそうな二階建ての建物だった。

 頑張れば、私くらいの子供なら十数人くらいは余裕をもって生活できるだろう。


 よく見ると建物自体が新しいようで、もしかしたら『王女様』とやらがなにか手を回したのかもしれない。


「ごめんくださーい」


 私がそういって扉を叩いて少しすると、扉越しに、


「どちらさまでしょーか!」


 やけに幼い声だった。

 子供特有の高い声だったから微妙なところだけれど、多分、10歳にも満たないくらいの幼女。


「パンを届けに来たんだけどー」


「っ! まってて!」


 そう言うと、推定幼女はパタパタと軽い足音を響かせながら、奥の方へと消えていく。

 しばらくして、その音は段々とこちらに近づいてきて、同時に、コツコツとした硬い靴底の音も耳も入ってきた。


「おまたせしました」


「したー!」


 そう言って扉を開けて出てきたのは、15歳くらいでそばかすのある茶髪の男の子と、10歳にも満たないくらいの金髪の幼女だった。

 ただ、


「…………吸血鬼?」


 思わず、私はそう呟いた。

 二人の背中には、蝙蝠のそれににた二対の羽がぱたぱたと生えていて、よく見れば、人間にしては八重歯がやけに発達していた。

 吸血鬼の特徴そのままだった。

 少年はその瞳に少しばかりの怯えを見せながら、


「あ、えっと………パンは床に置いてもらえれば十分ですので……お代はこちらに」


 懐から巾着袋を取り出して、私に見せてきた。

 中からはジャラジャラと金属がこすれ合う音が聞こえてくる。


「いや、それはどうでもいいんだけど」


「…………やっぱり、気持ち悪いですよね。わかってます、僕たちが人とは違うってことくらい」


「いや、そうじゃなくてね」


 私の視線は蝙蝠の羽でもなく、八重歯でもなく。

 巾着袋のさらにその下に、私の視線は釘付けにされていた。


「―――吸血鬼って、本当にパンが好きなんだ」


「……………へ?」


 そこには私の持つパンを見て、涎をたらす幼女がいた。






◆ ◇ ◆






 私は少年にパンを渡すと、お金の入った巾着袋を受け取った。


「おねーちゃん、今度はこっち!」


「お、おー。こっちでいい?」


 そして今、私は幼女―――メアと言うらしい―――に馬乗りにされて遊ばれている。

 見た目10歳くらいの幼女(わたし)が、8歳くらいの幼女に遊ばれている光景はさぞ微笑ましいのだろう。

 吸血鬼の少年―――スルトと言うらしい―――は私達を見守るように笑いながら、セーターを編んでいた。


「本当にごめんなさい。遊び相手をさせてしまって」


「そう思うなら、手伝ってくれてもいいんだぜ?」


「あはは。すみません。メアがベアさんを気に入ってしまったようで……」


「あっそう……」


 まあ、どのみち『選定会』のパン作りには行き詰っていたから、いい気分転換になるからいいんだけれど。

 それに、マドリアナが今もパンの移動販売をしているのか、余りお客さんも多くないようで、リムルとマーサの二人でお店の方は十二分に回るようだし。

 そんなことを思っていると、スルト君が、


「…………ベアさんは僕たちを見ても何も言わないんですね?」


「え、なにが?」


「いえ、僕たちが魔族だって」


「え、あーあー……」

データ吹っ飛んで萎えたので中途半端ですがここまで。続きはまた。

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