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ねえ、自分勝手なんだけど

「勝負って、どういうことかしら~?」


 マーサが私とリムルの言葉を代弁するように問いかけた。


「…………そのままの意味。私に勝てたら、私はこのエリアから去る。私が勝ったら、この店は私の物」


「ちょっとまって、なんでそうなるのさ」


 いつの間にか『マーマレード』が賭けの対象にされて、私は待ったをかけた。


「…………私はいつか店を持ちたい。でも、良い立地の場所がない。ここは最適」


「自分勝手すぎる……」


 大人しくしていたと思っていたけれど、マイペースなところは何も変わっていない。

 むしろ、私以外に被害が行くあたり、(たち)が悪くなっている。


「…………どうするの、やるの? やらないの?」


「そんなの、やるわけ―――「いいじゃないの~、やりましょう~」――――ちょっと、マーサ!?」


 ちょっとお茶しようみたいなノリで承諾しようとするマーサ。

 勇者のことといい今回といい、私がいるせいで魔王関連のことにマーサを巻き込みすぎている。

 流石にこれ以上の迷惑をかけるわけにもいかないだろう。


「良いよ、マーサ。私がこいつボコって追っ払うから、そんなリスク侵さなくても!」


「ベア、だめよ~? マドリアナちゃんは、清々堂々と味で勝負しようと言ってきているのだもの~。『マーマレード』の店主として、ここは譲れません!」


「それはそうだけど…………」


「それに、ちょうどいい機会だと思うのよ~」


「…………機会?」


 一体どういうことだろう。


「…………あ、マーサさん、まさか」


「わかるの、リムル?」


「はい。マーサさんは()()のことを言っているんですよね?」


「流石、リムルちゃんね~」


 二人の間で意志共有ができているのか、彼女達は顔を合わせてにやりと笑った。

 まって、ついていけてないの私だけなんだけど。


「……………今度、この国の王女による『王都パン選定会』がある」


 私の疑問に答えるように、マドリアナが言った。


「『王都パン選定会』?」


「王都のパン屋さんで、一番美味しいパンを焼くのはどの店の物かを決める大会ですよ、ベア様。なんでも、『選ばれたパン屋は王女様の主食のパンを作る名誉が与えられる!』みたいな謡い文句のチラシがうちにも届いてました。ちなみに審査員は王女を含む宮殿料理人の計5人らしいです」


「そんな大会が………」


「チラシが入ってきたのは今日でしたからね。後で言おうと思ってたんですけど……」


「ベアにはパンの仕込みを頼んでいたから、言いそびれちゃったわね~」


 『王都パン選定会』か。

 多分、優勝すれば『マーマレード』の名前は王都中に広まるはずだ。そうなれば、売り上げも大きく伸ばすことができるに違いない。

 けれど、マドリアナに負けたら店が取られてしまう。

 まさにハイリスク・ハイリターンの話。もちろん、決定権は店主であるマーサが持ってはいるけれど、


「私は反対」


「ベア………」「ベア様………」


「だって、そうでしょ。私が居なきゃ、マドリアナがこんな勝負を持ち掛けてくることなんてなかったんだから、それにお店を賭けるなんて迷惑はかけられない」


「…………それなら、賭けの対象を変える」


 マドリアナはそう言ってじっと私を見て、


「…………大会に出るのは、私とベア。賭けの対象は――――」

続くー

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