ねえ、魔王ってバレたんだけど~2回目
「あ、ああああーーーー!」
がっくりと膝から倒れて、綺麗なORZを決め込むフィル。
その視線の先には無残にも折れた(折った)聖剣があった。
聖剣は作るのが大変そうだし、大事なものなのだろう。少しだけ罪悪感を感じなくもないけれど、命を狙ってきたのだからそのくらいは勘弁してほしい。
「これで諦めてくれるかな?」
「魔王め……! よくも私の聖剣をっ……!」
そんな睨まれても困る。
というか、帰ってくれると助かるんだけど。
「ベア様、大丈夫ですかっ!?」「ベアちゃん~、大丈夫~?」
フィルの処遇をどうしようかと悩んでいると、騒ぎを聞きつけてきたリムルとマーサさんが部屋へと入ってきた。
来るの遅くない?
かなり騒がしくしていたのだけれど、気づかなかったのだろうか。
――――てか、マーサさんに見られちゃった。
どうしよう。
「くっ……サイレントの魔法が解けてしまったか」
フィルはマーサさん達の方を見て、ぎりぃと歯を擦り鳴らす。
暗殺とか言っていたから、事前に音が漏れないように対策をしていたのだろう。
私としてもそのままの方が助かったのだけれど、聖剣が折れたショックで解いてしまったのだろうか。
そのまま維持しといてよ。マーサさんに変なところ見られちゃったじゃん。
「これは、どういうことかしら~?」
マーサさんは頬に手を当てて、扉の前に立ち尽くしている。
実はマーサさんには『山ごもりをしていた俗世に疎い修行者』と言うことにしていて、多少の荒事ならこれで誤魔化せるはずだった。マーサさんと出会った時も戦っている姿を見せてしまったから、これでどうにかなるだろうとか、適当なことを考えていた。
流石に魔王ですとはいえないし。
だけれど、流石に聖剣を持つ勇者に襲われていて、その言い訳は苦しすぎる。
どう誤魔化したものかと思案していると、リムルが、
「お前は勇者……! おのれ、魔王城での借りを今ここで帰してやる!」
「おいこらリムル」
「ベア様! ここは私に任せてください!」
「いや、だから、ね?」
「なんですか、ベアさ――――「魔王城って、なんのことかしら~?」―――あ」
リムルは顔を蒼白にさせて、ゆっくりとマーサさんの方へと振り返った。
「え、えーっと、これは、そのー………」
「誤魔化しようがないよ、リムル……」
この娘、なんてことをしてくれたのでしょう。
こうなったら、もう正直に話すしかないだろう。騙していて申し訳ないけれど、話せば事情を分かってもらえるかもしれないし。
…………まあ、話がどうなろうと、マーサさんにこれ以上の迷惑をかけるわけにはいかないか。
「お姉さん、ちょっとなにがなんだかわからないのだけれど……詳しく話してくれるかしら~?」
「わかった、話すよ。リムルも、それでいい?」
「ごめんなさい、ベア様………」
「いいよ。それから、フィル―――この子もいい? マーサさん」
「ええ、必要なことなのでしょ~?」
「うん」
逃げられても困ってしまう。
私はフィルの首根っこを掴んで、私と一緒にベッドに座らせた。
日常系、書いててほんわかするんですけど、こういう話はあまり好きじゃない。
はやく日常したい……。