ねえ、それでいいのか吸血鬼
四コマ風味。
夕方に差し掛かった頃、厨房はパンの焼けた香ばしい空気に包まれていた。
「「おおー………!」」
私とリムルはその発生源を見下ろして、感嘆の声を上げる。
揚げパン、ジャムパン、クリームパン。
どれもこれも焼き立てで、かすかに湯気を立てていた。
見ただけでもわかる。これはおいしい。
「……………(じゅるり)」
「リムル、ダメだよ?」
「……はっ!」
案の定、リムルの手がパンへと伸びていた。
私だって食べたいところを我慢しているのに、一人で食べるなんて許さないぞ。
そもそも売り物だし。
「そういえば、リムルって吸血鬼なのに普通のご飯食べてるよね」
「だって、血って臭いじゃないですか」
「吸血鬼とは一体………」
トゥルーな吸血鬼だからって、主食は人間の血のはずなんだけど。
けど、思い返してみれば、魔王城にいたときも人間の血を飲んでいる気配はなかった気が……。
「それより、このパンはそのままお店に並べるんですか?」
「いや、少しだけ熱を冷ますんだよ。熱すぎて舌を火傷しちゃうから」
冷ましすぎても焼きたて感が無くなってしまうので、注意が必要だ。
「試食するのは、冷めてからね」
「え…………いいんですか?」
「味見は必要だからね………というか、目が血走ってるよ、リムル……」
どれだけパンが好きなんだ。
美味しいのは同感だけれど、必要以上に食べないように見張っていなければ。
◆ ◇ ◆
「早く冷まさないといけませんねっ!」
「冷ますと言っても、氷とかで冷やすのはダメだよ。団扇でかるく煽るのがベストかな」
私は部屋の隅の棚から団扇を取り出して、リムルに手渡した。
風魔法でもできなくはないのだけれど、魔法は調整が大変だ。
そよ風レベルの強さで一定時間拭かせ続けるのは、私でも相当に神経を使う。
「なるほど、やってみますね!」
リムルは両手で団扇を握ると、パンに向けてゆっくりと振り始めた。
強すぎず弱すぎず、ちょうどいいそよ風がパンの周囲に流れていった。
「そうそう、その調子」
力加減を間違えないかと少し不安だったけれど、この調子なら大丈夫そうだ。
私はリムルから目を離すと、パン用のトレーを机の上に並べていく。
こうしておけば、店先でトレーを取り換えるだけで新しいパンを店頭に並べることができるのだ。
「ベア様、見てくださいっ!」
「うん?」
おおよそトレーを並べ終えたところで、リムルに呼ばれた。
何かあったのだろうか。
私は振り返ってリムルの方を見やった。
、
「これなら楽ちんですよっ!」
「…………マーサさんに見られないようにね?」
リムルは自慢の羽をばっさばっさと動かして、団扇替わりにしていた。
ブクマ評価ありがとうございます。
書いてるうちにお腹が空きました。




