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レベルアップを目指して



「はい、確かに。確認は完了したので、こちらがクエストクリアの報酬になります」



 ゴブリン討伐の依頼を終え、トシロウとシャロは街に戻ってきていた。戦利品、ゴブリン五体分のそれを手に、向かった先はサポートセンターだ。


 依頼を完了した旨を、受付に確認し……その後報酬を貰う。今回応対した受付はカーミではなかったが、クエスト報酬を貰うだけなので特に問題はない。



「依頼をクリアして、戦利品を証拠として提出。それに見合った報酬を貰う、か。これが冒険者の流れ……」


「おぉ……これが、自分でお金を稼ぐ、ということなんですね!」



 貰ったお金を見つめ、二人が呟く。トシロウには、報酬を貰うといった経験はあるが、シャロはまるで初めてといった具合だ。



「とはいえ、ひーふーみー……これだと、今の宿一泊といったところでしょうか」


「え、そうなんですか?」



 トシロウにはこの世界のお金の数え方はわからないが、どうやらこの報酬は宿一泊分と同等らしい。それが高いのか安いのか、すらもよくわからないが。


 そう考えると……この世界に転生する際にカーミがくれたお金、あれはかなりのものだったのだろう。感謝だ。



「まあ、あれは比較的に簡単なクエストですから……」


「簡単、ですか。ひょっとしてゴブリンってそんなに強くない?」



 簡単なクエストならば、報酬が安いのも納得だ。だがこれが簡単ということは、ゴブリン五体に手こずってしまったのはあまり良くないのではないだろうか。



「いえ、弱いわけでは。ただ、今回は五体という少数、それに草原という開けた地形というのが大きなポイントです。例えば数が多かったり、地形が変わるだけでも報酬の割合は変わります。

 十を越えるゴブリンを狭い洞窟で、なんて依頼だと、割合は跳ね上がりますよ」



 ゴブリンが弱いわけではなく、数や地形などの条件によって変わるのだという。そしてそれを見極めることこそが、冒険者には必要なのだと。


 今回のように、比較的安全なクエストをクリアしてコツコツ稼いでいくか、危険を冒しても一発大きな報酬を狙うのか。


 危険を冒せばそれだけ得られるものも大きいが……それだけ、命の危険も伴うということだ。そしてそれだけの危険を冒す理由は、今のところない。



「まあ、今の状態で危険なクエストに挑んでも痛い目を見るので、やめておいた方がいいんじゃないかな」


「ですよね。まずは冒険者としてのレベルを上げないと!」



 トシロウと同意見のシャロは、フンフンと意気込んでいる。


 冒険者としてのレベル、とはもちろん個々の実力のこともあるだろう。トシロウならば剣術、シャロならば魔法の威力アップといった具合に。


 もちろんそれ以外にもある。複数人の場合はコンビネーションなども重要だ。今回は初というのもあり、ほぼ個々での動きになってしまった。


 それを今後は鍛えていく必要があるだろう。他に、ギルド自体のレベルを上げるには……



「他には……メンバーの増加、か……?」



 メンバーの強化はもちろんのこと、そもそも二人だけでは限界があるだろう。どれだけ個人が強くなっても、圧倒的な数の暴力には敵わない。


 なので、単純にメンバーの人数を増やす。そこから、また開ける新たな道もあるだろう。



「確かに難しいクエストに挑むなら、いつまでも二人、では厳しいかもしれません。名のあるギルドは十人以上……少ないところなら四人のところもあると聞きます。

 剣、武術、魔法、回復……必要最低限でもこの役職は欲しいですね」


「な、なるほど。頼りになります」



 この世界ではどういったギルドが活躍しているのか全く知らないトシロウにとっては、こういった知識を持った仲間はありがたい。



「えへへ」


「これからはメンバー集めも視野にいれて、か。とはいえ、こんな作りたてのギルドに入る人なんて……」


「いないですよねぇ」



 いろいろメンバー増加について話し合ったものの、結局は入ってくれなければ意味がない。誰が欲しい言っても、まずは入ってくれたくなるようなギルドでなければならない。


 そのためには、作ったばかりの、名の知られていないギルドでは話にならないわけだ。誰も知らないギルドでは、余程の物好きでもなければ入りたい人なんているはずがない。


 よって……



「簡単な依頼をこなしつつ、個々のレベルアップ……」


「及びコンビネーションも、強化しないといけませんね」



 ひとまずの道筋は決まった。いろいろ考えても、結局は地道に頑張るしかないのだ。


 そう、方針が決まったところで……



「あのー、ちょっといいですか? そちらのギルド、入らせてもらえません?」



 無名のギルドに声をかけてくる、余程の物好きが声をかけてきた。

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