表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

天から降り注ぐ絶望の始まり

R15ですのでご注意を


今の異世界は

リアルに考えるほど残酷で

その残酷さゆえにいくつかの歪みがあって

それをまとめてみたらさらに残酷で

でも、残酷を利用する者もいる

そんな世界の物語

その言葉は、吐き気がするほどの憎悪と悪意を込めて放たれた


「滅び尽くせ」

「死に尽くせ」


ここは王国の首都にある巨大な聖堂

突如天井から降り注いだ瓦礫をかき分けながら私は

空中に浮遊する声の主、男女の2人を見上げた


「何を言ってるんだ!いきなり仲間たちを殺しておいて!

 この悪魔どもめ!」


「…ラズ」

「フィーよ」


銀髪を後ろで束ねた青い目をした少年と

同じく銀髪のロングで赤い目をした少女が

私の怒りの声に応える


「悪魔なんて心外だわ、悪魔の方が数倍マシよ?」


そういう「フィー」の横で、「ラズ」は手のひらから透明な球体を発生させた

それはたちまち巨大化してラズの身体の数十倍まで膨れあがる

球体の中身からヒュンヒュンと異様な音が響き始める

私はその音を知っている

風の魔法を使う魔物が発動させる「真空の刃」の魔法と同じ音


それが、ラズの出している巨大で透明な球体の中で、大量かつ複雑に飛び回っていた

やがてその真空の刃の軌道が整い始めてくる


「じゃあね『勇者様』」

「…残念だったな」


ラズの持ち上げていた透明な球体が、2人を中心に一気に拡大する

内部にあった膨大な量の細かい風の刃が一斉に解き放たれ、回転しながら周囲を切り刻み始めた


その暴虐を形にしたような凶悪な魔法はもう誰にも止められなかった


無数の鋭利な刃物となった風は、屈強な兵士たちを分厚い鉄の鎧ごと切断し空中に吹っ飛ばす

防御魔法を展開する魔道士もいたが、魔力の尽きた者から容赦なく兵士の後を追うことになっていく

石でできた神殿の柱には一斉に無数の横傷が入り、石材は音を立てて崩れながら周囲を巻き込んでいく


だが、乱舞する無数の風の刃の勢いは全く衰えない

むしろ、球体内にある残留魔力を糧にさらに加速し、拡大する透明な球体に連動して運動範囲を広げた無数の風は神殿の壁を内側から破壊しながら外に向かってその「切断範囲」を広げていく。


石壁の向こう側にあるのは、この異世界最大の中心都市であり、魔物に追い詰められた人間にとっては最後の砦ともいえる街だ。神殿は街の中心にある丘に、王の城と一緒に作られていた。

そこから街に向かい解き放たれた風の刃が、何も知らない人々の頭上から一斉に襲いかかった。


あらゆる家の屋根から壁から全てが横方向に切断されていく

中にいた人は家具の破片に混じってバラバラに吹き飛んでいった

人の多い大通りは一瞬で血の海となり商品の果物と混じって素材のわからないスープになった

街のあちこちに建てられた銅像だけが抵抗していたが、それも次々となぎ倒されていく

発生した巨大な粉塵の塊の中は風に巻き上げられた木、石、鉄、骨、肉が飛び回り、それらは遠心力で周囲にまき散らされ、異変を感じて逃げようとした人たちに容赦なく突き刺さった


逃げられなくなった人々に、無数の刃が追い打ちをかけていく


一つの巨大な街が、このせかいに生き残っていた人間たちの悲鳴と怒号に包まれた


「あはははははははっ!見てよ勇者。スープができるよ。あははははははははっ」

「人間…滅ぶ…消える」


王と共に宮廷魔法団に魔法障壁で守られていた私は、もはや建物の形をなしていないほど粉砕された神殿の瓦礫を踏みしめながら、丘の上から街の惨状を見つめるしかなかった

風の刃は街を完全に包み込み、全てを容赦なく切り刻み続ける

砂埃はいつしか赤色に変わり、どす黒い茶色に変わっていく


「なんということを…」


私を「召還した王様」は、粉砕されていく街を見て膝をガックリと落とす。

目の前で起こった突然にしてあまりにも不条理な出来事を見て、胃の中のものを全て吐き出しても収まりそうにない吐き気を押さえながら


「い…いったい何のつもりだ!」


私は空中で浮かぶ銀髪の2人に向かい精一杯の声を絞り出した


「あのねぇ勇者様ぁ~。世の中にはねぇ、因果応報って言う言葉があるって知ってるよねぇ?」

「やるなら…覚悟、試される」


「私たちはねぇ勇者様ぁ」


魔法障壁を展開していた宮廷魔法団の魔道士たちと王様を魔法で縦方向に輪切りにしながら

銀髪の少女フィーは私の方に向き直り、こう言い放った


「人間なんて汚物は、全ての異世界から消えてしまえばいいと思ってるの」


壊せる次のおもちゃを探す無邪気で無関心な瞳が

殺戮を楽しむ歪みきった笑顔と共に

鈍く不気味に光りながら私を見下ろしていた


「そういうわけだから、反論はもう無理だから」


フィーが杖の先をこちらに向ける

それに呼応してラズがこちらに手のひらを向け、引っ掻く仕草をした


何本もの巨大な剣を振り下ろされたような感覚が頭上から列をなして降ってくる

その圧力に負けた両腕が数カ所で下に折られ手首が吹き飛ぶ様を理解する

頭蓋が砕かれながら割れる音が耳に届き続いて認識が整合性をもたなくなる

全身を包む激痛と力の入らない身体がめちゃくちゃに動いて壊れていく

目の前に迫る地面が目玉と激突する記憶を最後に


私の命はそこで終わった


私の名前は「ゼス」

そう呼ばれていた

「勇者」だった…

ここまで凶暴になるとは思いませんでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ