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女性が消えた世界で幽霊も女性だと気付いた俺は幽霊ハーレムを作るべく心霊スポットを巡る  作者: 黒飛清兎


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1話 双子の幽霊



 某市の郊外にある古びた洋館。

 数十年前に起きた事件を境に無人になったその洋館にはとある噂が立っていた。


 双(・)子(・)の(・)幽(・)霊(・)が(・)出(・)る(・)と。


 そんな無人であるはずの洋館の2階にある窓から、今まさに2つの人影が外の様子を覗いていた。

 手入れがされておらず、既にガラスは割れてしまった窓から顔を覗かせる2人は、まるで何かを待ち構えているかのように、じっと門の方を見つめている。


「久方ぶりの来客ね」

「えぇ、お姉さま、しかも私達と同じくらいの女の子も居るわ」

「ふふ、最近はあまり来てなかったものね……楽しみだわ」

「はい、楽しみですわ」


 2つの人影は上品に笑い、そのまま闇の中へと消えていった。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「み、満(みちる)さん、私怖いです〜」

「はっはっはっ、大丈夫、僕がついているからなぁ!」


 そう言いながら満は隣を歩くリ(・)ン(・)の頭を優しく撫でる。

 リンは左右に可愛らしく結ったブロンドの髪の毛を揺らし、瞳に涙を湛えながら満の腕に抱きつく。


「やっぱりやめましょうよぉ、呪われたりしたら怖いです!」

「ふふふ、その姿が見たかったんだ、やっぱりリンちゃんは可愛いなぁ」

「もう! 意地悪ですよ!」


 ごめんごめんと笑う満も中々の美青年であるため、この2人が並ぶと後輩の女の子と一緒に肝試しに来た先輩というような非常に絵になる構図になる。

 2人はそのままゆっくりと古びた洋館の中へと進んでいく。

 すると、中に入った瞬間に突然、扉が勢いよく締まり、洋館の中に大きな音が響く。

 その出来事にリンは少しわざとらしいくらいのあざとい悲鳴をあげる。


「きゃっ! と、扉が!」

「ん? あぁ、風で動いたみたいだね」

「うぅ……びっくりしましたぁ……」

「ははは、そんなに怖がらなくても大丈夫だよ」

 

満はそう言いながらリンの頭を優しく撫でる。

 それに対してリンは少し頬を膨らませ、不満そうな表情を浮かべるも、その表情は可愛い以外の感想が出ないようなものである。

 満は満足そうにしながらスマホのライトを頼りに先に進んでいく。


「リンちゃん、知ってるかい? この洋館には昔、双子の女の子が住んでいたらしいんだ」

「ふ、双子ですかぁ?」

「あぁ、だけど、ある日突然その双子が亡くなってしまってね。それ以来、ここではその双子の幽霊が出るようになったらしいんだ」

「ふぇ、そ、そんな怖い話しないでくださいよぉ!」

「はっはっはっ、ごめんごめん!」

 

 リンが涙目になりながら満の腕に抱きつくと、満は嬉しそうに笑い声を上げる。

 どうやら、彼にとってはリンの怖がる姿を見ることが何よりも楽しいらしい。

 そんな2人は廊下を進み、やがて2階へと続く階段の前に辿り着いた。

 

「おや、階段があるね」

「えっ……ま、まさか上に行くんですかぁ?」

「あぁ、せっかくここまで来たんだからさ、行ってみよう」


 リンは嫌そうな表情を浮かべながらも、満に手を引かれて階段を上り始める。

 

 ギシッ、ギシッ

 

 足を踏み出すたびに木製の階段が不気味な音を立てる。

 途中、何段か踏み板が抜け落ちている場所もあり、満は慎重に足元を照らしながら進んでいく。

 そして、2階に辿り着いたその時だった。


 クスクスクス


 リンの耳にどこからともなく女の子の笑い声が聞こえてきた。


「……え?」

「どうしたんだい?」

「い、いま、女の子の笑い声が聞こえませんでした?」

「いや? 僕には何も……」

「そ、そうですかぁ……私の聞き間違いだったのかなぁ……」

「ははは、怖い話を聞いたからそう感じたんじゃないかな?」

 

 満はそう言いながらリンの頭を撫で、再び廊下を進み始める。

 しかし、その直後だった。

 

 クスクスクス

 

 再び、先程と同じ笑い声が聞こえてきた。

 しかも、今度は先程よりもはっきりと聞こえる。

 その声にリンは怖がって逃げ出す…………ことはせずに逆に満を突き飛ばして洋館の奥へと走り出した。


「あっ、ちょっと、リンちゃん!?」

「間違いない……今の声……!」


 リンは口元に笑みを浮かべ、笑い声が聞こえた方向へと向かう。

 その勢いはまさに鬼気迫るものであり、そのいきなりの変容ぶりに慌てていたのは満だけではなかった。


「お、お姉さま! 何なんですのあの女の子!」

「わ、わわわ、わからないわ! と、とりあえず扉閉めるわよ!」


 その声にリンは確信を深め、一番奥の部屋へと洋館の廊下を駆け抜ける。

 そのすぐ後にその扉は勢いよく締まり、カチャリと鍵が閉まる音が鳴り響いた。

 リンはその扉のノブをガチャガチャと回す。

 しかし、鍵がかかっているため、それが開くことは無い。


「ちょ、何やってるのリンちゃん?」


 慌てて追いかけてきた満がリンの手を掴むが、リンはその手を払い除ける。


「うるせぇ、失せろ、ここに……ここに女が……イル……!」

「ふぇ?」


 呆気にとられた満の腹部にリンは全力の蹴りをお見舞いし、満を廊下の反対側へと吹き飛ばす。

 

「ぐふっ!?」


 満は情けない声を上げながら、その場に倒れ込んだ。

 しかし、リンはそんな満のことなど気にも留めず、再び扉へと向き直る。

 

「アケロ……アケロ……アケロォォォ!」

「ひぃっ!? ば、バケモノですわぁっ!」

「絶対開けちゃダメよ! 殺されるわ!」


 あまりの恐怖に自分達が既に死んでいる事も忘れ、怯えきった双子の幽霊は部屋の奥隅へと逃げ、ガタガタと震え始める。


「ハァ……ハァ……シカタナイ」


 理性の無くなったリンはそう呟くと、扉から数歩離れ、大きく息を吸い込んだ。

 そして、勢いよく扉に向かって走り出す。

 

「オラァァァァァッ!」

 

 ドゴォォォンッ!

 

 洋館中に凄まじい音が響き渡り、扉はその主人を守るという役目を果たせずに地面へと伏す。

 そして、リンは部屋の中に侵入する。


「オンナダ……」


 リンは奥で震える双子の幽霊を見てにやりと口角を上げる。


「シカモフタリ」


 その様子に双子の幽霊は全身を震え上がらせる。


「ひ、ひぃぃぃっ!? お、お姉さまぁ!」

「だ、大丈夫よ! 私達は幽霊なんだから! 人間なんかに負けるはずが……!」

 

 双子の幽霊は互いに抱き合いながら必死にそう言い聞かせる。

 しかし、そんな2人の様子などお構いなしに、リンはゆっくりと距離を詰めていく。

 

「ハハハハハッ! オンナダ! オンナガイルゾォ!」

「「いやぁぁぁぁぁっ!?」」


 古びた洋館の一室に、2人の女の子の悲鳴と、1人のバケモノの叫び声が響いた。 

 こうして、女性が消えた世界で、女の幽霊を求めて心霊スポットを巡る男の娘の物語が幕を開けたのだった。  


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