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異世界人育成ゲーム ~生贄の少女たち~  作者: 鬼影スパナ


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第1話


 その日、俺は会社の同僚にゲームを勧められた。

 新作ゲームで、タイトルは『カイト・ア・ルイセ』。携帯端末から気軽にプレイすることができる、ファンタジー世界観――それ以外の内容は不明。

 チャットツールで送られてきたURLのキービジュアルには、聖女のような女の子が杖を抱いて祈るポーズで描かれていた。

 怪しすぎるゲームに俺は眉を(ひそ)める。


「その、ほかにいくらでもあるだろうに。なんだってこんな怪しいゲームを見つけて来たんだ?」

『今時珍しい、買い切り型のソシャゲだってぉ。MMOでもなくソシャゲ。でも詳細は不明! 発売は今夜! どうだぉ? こういうのそそらないかぉ?』

「は? まてまて。そんなの常識的に考えてすぐサービス終了するにきまってるだろ。最初に稼いで逃げ切るヤツだってば」

『それはそれで伝説になって、そのプレイヤーだったと自慢できるから損はないぉ!』


 確かにそういうものは仲間内で話す分には話題にはなる。納得した。

 俺を巻き込むのも、一人で自分しかしらないゲームの話をしてもあまり盛り上がらないからだろう。それに、プレイ情報も共有できて攻略が捗る。そういうことだ。


『どうだぉ? コンビニおにぎり5個分で伝説を名乗れるなら悪くないぉ?』

「コンビニおにぎりとか嗜好品乙。結構な値段だぞ……まぁバージョンアップで課金要素が追加されるかもな。あるいは有料DLC」

『それはそれで続くって事なら問題ないぉー』


 それも確かに。と納得する。続くなら続くで、ユーザーは自分が飽きるまで遊べばいいだけなのだ。


『それにこの手のゲームはサービス終了時にローカル化対応してくれるはずだぉ……多分……おそらく……きっと! だから、無駄になることはないぉ!』

「だったらいいね」

『絶対大丈夫だぉ!』


 その言葉は多分自分に言い聞かせているのだろう。いや、チャットだから書き読ませてる、というべきなんだろうか? まぁいいか。


「わかったわかった。じゃあ俺もやってみるよ。予約ポチっと」

『おぉー! THX(サンクス)だぉ! いやー、爆死した時の道連れは多い方がいいからなー』

「おい同僚」

『あはははー、冗談だぉ! 発売と同時にプレイしたいし、事前DL推奨だぉ!』

「分かってるよ。今時常識だろそんなの」


 ともあれ、俺はそのゲーム――『カイト・ア・ルイセ』をプレイすることになったのだ。

 事前DLを行いつつ……このときはまだ、ただのゲームだと思っていた。



  * * *


 ゲームの販売開始時刻である夜9時。仕事を終えた俺は部屋でゲームを起動した。

 この手のゲームによくある問題――サービス開始直後のメンテ地獄やら、ログインが最初の難関やら――もなく、すんなりと事前DL時に作成したアカウントにログインすることができた。


 OPのムービーが流れる。剣と魔法のファンタジー世界で、光る玉のような精霊が少女を助け、強そうなモンスターに立ち向かう。町に潜む悪の組織を見つけ出し壊滅させる。最後は大きな剣を構えて魔王のような黒いドラゴンに立ち向かっていくシーンで締められた。

 そして、地球のような星をバックに『精霊は、死の運命を覆えし救いを(もたら)す――』というテキストの後、ゲームタイトル『カイト・ア・ルイセ』のロゴ表示。


 うーん、事前情報なしだったからOPをスキップせず全部みたけど……特にゲームプレイ画面のようなものも出ず、本当にファンタジー世界のムービーだったなぁ。

 買い切りでコンビニおにぎり5個分の金を払ってなかったらもうそっと閉じてアンインストールしていたかもしれない。やるけどね。買ったからには。


「お? シナリオの選択――ふむふむ」


 いくつかの選択肢。『盗賊の獲物』『大樹の肥料』『大亀の生贄』『魔物の眼前』――ざっと10個ほどの選択肢がある。それぞれが「死の運命」とやらにある者たちなのだろう。端末の画面を長押しすると詳細が表示され、それぞれ危機的な状況であることが分かった。あるいは死んだ直後のようだ。

 選択肢にはタイマー表示もついていた。一番カウントの短い『魔物の眼前』は、残り10秒。9,8……と減っていき、どうしようか悩んでいる間に時間が切れてしまった。選択肢が、消え、新たな選択肢『断頭台の悪役令嬢』が追加された。


 ……しまった、もしかしてレアなやつだったのだろうか。と、悔やんでもしょうがない。とりあえず一番上の『盗賊の獲物』を選ぼうとタップ――しようとしたら、『他の方に選択されました』と一瞬出て、同じく選択肢から消え、また新たな選択肢が追加された。


「まさか、これ、シナリオ個別でしかもプレイヤーによる争奪戦なのか!?」


 だとしたらとんだクソゲーとしか言いようがない。おにぎり5個分で買ってなかったら本気でアンインストールしてる。そもそもゲームとして同じゲームをプレイしても同じストーリーで語ることもできないのは欠陥だろう。……いや、世界は同じっぽいから、この町が良いぞ、とかある意味リアルな情報共有させるデザイン……?


「となれば、ストーリーが異なるのは最初だけで、途中から合流できる感じか?……うん、きっとどれ選んでも同じ町に行けるとかだろう……ならどれ選んでもいいはず!」


 と、俺は適当にタップ。選んだシナリオは『大亀の生贄』だった。

 端末の画面に、ストーリーが流れる。



 ――『とある寒村。かれこれ雨が降らない期間が2ヶ月を超え、川は細り、井戸も枯れかけている。身寄りのない少女は雨を呼ぶとされる魔物、大亀様の生贄に選ばれた。岩で手足を潰され逃げることもできず、あとはただ死を待つのみ。救いますか?』


「はいはい。救いますよっと」


 YESをタップすると、キャラメイクに入った。……キャラメイクは外見、スキルを設定できるが、合計100SPでやりくりする形式のようだ。

 キャラクターの外見はデフォルトでは素朴な村娘といった感じ。デフォルメされた少女のキャラクターなのだが、シナリオに合った外見である。つまり手足が潰された、とのことなので手足が途中から黒にフェードアウトしている……


「お、結構色々変えられるな。……ん? というかSP消費するけど手足も普通に設定できるじゃん。こういうのって無いまま進めたらデバフ付与されちゃうやつだろ? そういうゲームあったぞ」


 あれは生き物を創り出すゲームだったが、目玉を付けなかったら視界がほぼ皆無だったり、足がなかったら移動手段が這いずり回るだけになったりしていた。そういうのは御免なので、手足は必須だな。

 うーん、シナリオ的に手足にSPを割く必要がある分、ハズレ枠なのかも? まぁ今からキャンセルはできないし、このまま進めよう。シナリオを選ぶときに出ていたカウントダウンはあと3時間と出ている……あ、これこの時間内にキャラメイク終わらなかったらキャラメイクリセットされてシナリオから選びなおしになるやつなんだ?


 中にはキャラメイクに凝って1日使う人も居るし、こういう制限があったほうがいいのかもしれない。

 ん? だったらさっきの残り10秒だったやつは選んでもキャラメイクせず即開始しないと間に合わなかったってわけか。キツイな? やっぱりクソゲーなのでは?

 でもおにぎり5個分払っちゃったし……同僚との話題にもなるし、やるかぁ。むしろここまで来たらクソっぷりを逆に堪能するべきか。


 とりあえず、せっかくサービス初日からプレイするわけだしキャラメイクは程々にしてストーリーを進めていきたい所存である。


「……へぇ、精霊が付くと頭の後ろに光輪(ハイロゥ)が出るんだ。で、そのデザインもできるしSP無料か。ネタを仕込むかどうか悩むな……」


 ……程々にしてストーリーを進めていきたい所存である!!









 その後1時間かけてキャラメイクを行い、プレイは開始された。





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