下位の魂、中位の魂、上位の魂
「…………見えない」
魂をみよう!と意識しても、全く見えない。何も視界に変化が起こらない。試しにヘノーの方を見ても、主さまの方を見ても、何も魂らしきものがない。
そもそも魂とはどういう風に見えるんだ?
『……眼に少し魔力を込めよ』
「魔力を?」
『体内の魔力を眼に集中させるんだ』
しばらくして僕が見えていないことに気がついたのか、主さまがアドバイスをくれた。
早速体の中の魔力を操作する。
ちなみに、僕は前魔力がなかった。
しかしいくら『心魔力』があるとはいえ、『封ジラレタ鏡』の中でどうせなら魔力欲しいな、と思った。
なので、身体を改造するときに、魔力を大量に保持できるように作り変えた。
そのときに『心魔力』の仕組みをいじって、いくら消費しても瞬時に回復するようにもした。なんでそんなことができたのかは謎だ。が、『鏡』の中ではそれができたのだ。なんとなくこうしようかな、でできた。
だからこそ、今は魔力があるし、それを眼に回すということが可能なのだ。
「………これ、か?」
うっすらと、ヘノーの体に光が見える。これまで見えてなかったものだ。
形がはっきりとわかりそうで、絶妙にぼやけて揺らいでいる光。美しく神聖で、だけどどこか儚い感じだ。
これが、魂の光なのだろうか。
『無事見えたか』
「ええ、多分」
そう言ってふと主さまの方を向くと、今度ははっきりとした光が見えた。
「主さまの魂ははっきり見えますね」
『……それはそうだろう。なにせ我は霊獣だ』
何気ない一言だったのだが、主さまから説明が返ってきた。
「霊獣だとはっきりとした魂なんですか?」
『正確には、神の名を持つであれば、だ。神の名を関する技能を持つ、それは魂が完結している証拠。故に明確に知覚できる』
「魂が完結?」
『それだけで存在が完結しているということだ。肉体に依存せずに存在していると言ってもいい』
魂が肉体に依存していないのが、神の名を持つ証拠? いまいち捉えづらい。
「逆に魂が肉体に依存する場合もあるんですか?」
『ある。前提として、全ての生物は魂を持っている。そしてそれは大体、下位、中位、上位に分けられる』
魂に分類があるのか。生物には分類があるが、魂も似たようなものなのかな。
『多くの魂は肉体の死と共に霧散し、バラバラになって自然に還る。一部は殺したものに取り込まれ、一部はまたどこかに流れる。そしてこれは下位の魂だ。下位の魂は、肉体が滅んだ場合、その存在を維持できない』
つまり、下位の魂が、肉体に依存している、ということか。
「じゃあ僕の魂はどうなんですか?」
僕は一度殺されてもこうやって転生している。下位の魂は霧散するはずだから説明に合わない。
『客人は中位だ。肉体が滅んでも、そうやって記憶を保持して転生しているだろう。それが中位の魂の証拠だ』
「ボクも中位だよ〜。霊獣の子だし!」
アオイと一緒だね〜と言って笑っている。
「そうだったんだ」
もしや転生できるのはこの世界では結構ポピュラーなのか? こんなに身近にいるとは思わなかった。
『そして、上位の魂は完全だ。それ持つのが神の名を冠する技能を持つもの。例えば我ら霊獣だ』
「中位となにが違うんですか?」
『中位の魂は、全く別の肉体に転生するだろう? 上位の魂は、体を不老不死にする。転生もやろうと思えばできないことはないが、まあ普通しないな。するとすれば、なんとなく今の肉体に飽きた時くらいだ………たまに肉体を永遠に殺し続けるとかいう決定打にはならないくせに不死を相殺するふざけた面倒な術があるからその時は転生するが………』
「ん?」
『気にするな』
最後の方がボソボソ言っていてよくわからなかった。
前に霊獣は肉体が壊れても転生できるとか聞いたが、まさかの衣替えの気分での転生だったとは。
『上位の魂を持つものは、神の名を持つ。中位の魂を持つものは、屍の名を持つ』
「え!?」
まさかそういう法則性だったとは。『技能』の名前を聞かれるのは、魂のレベルを聞く意味もあったのか。
……ってことはヘノーも『屍』の名前が入った『技能』を持ってるのか。
『ちなみに中位以上の魂を持つものを根本的に殺す方法は存在する。客人も用心しておけ』
「あるんですか!?」
『我ら霊獣や一部の者ははそういう手段も持っている。魂を壊す、攻撃手段を』
「……」
『客人、もう一度言うが、油断するなよ』
Q 転生できる人(中位)がこの世界では多い?
A そんなわけない。
ヘノー →霊獣の子供
アオイ →初めから中位魂の天才
この二人が弱いのは主さま(霊獣)基準




