第二十三話 大森林突入そして再開
門を潜り抜けると少し開けた場所があり、
その向こうには大森林の大きな木々が聳え立つ。
大森林の内部へと続く道はまだまだ広く、大勢の者達が行き来している。
ソラ達一行は、真っ直ぐ大森林へと入って行く。
ソラ「これが大森林かぁ。凄い大きな木ぃ」
ソラは上を見上げながら上空を覆う木々の枝や幹を眺めている。
フレイムジャイアントのフレイちゃんが普通のサイズの人に見えるほど、木々は大きい。
テツ「そういえばよ、パーティ名なんて名前だ?」
キノ「パーティ名?」
にゃん吉「そんな物はないぞ」
オト「そもそもパーティ登録はしていないよな」
サキオ「やんすねぇ」
テツ「なんだよ、せっかくパーティになってるのに名前ないのかよ、じゃぁかっこいいパーティ名考えようぜ」
ソラ「興味ない」
テツ「興味ないって、おま…。かっこいいパーティ名は冒険者の憧れだろぉ?」
ソラ「憧れてない」
テツ「な、なぁ、お前達はどうだよ」
テツはオトとサキオに同意を求める。
オト「あんましそういう事ぁ考えねぇなぁ」
サキオ「あっしはソラさんに同意でやんす」
テツ「ぐぬぬ、かっこいいの考えようよお」
にゃん吉「うるさい奴じゃのお」
ソラ「ほんとだよねー」
サキオ「たしか性格の設定できるでやんしたねぇ」
テツ「お、そうだぜ。どんな性格が良い?」
ソラ「無口で大人しくて根暗な奴でお願い」
テツ「んな…」
サキオ「そりゃぁ良いでやんすね!あははは」
キノ「ふふふふ」
オト「はははは!」
タマ「ぷうふふふふ」
テツ「そりゃぁないぜ」
ソラ「ふんっだ」
……………………………………
大森林の道は真っ直ぐ奥に続いている。
途中でいくつも枝分かれしながら、
道は徐々に狭くなっていく。
にゃん吉「そう言えばタマよ」
タマ「はい」
にゃん吉「どれくらいでお主の集落に辿り着けるのじゃ?」
タマ「えっと、普通なら、多分1年くらい…かな?」
にゃん吉「い、1年じゃと?!」
ソラ「え〜!そんな遠い所から探しに来たの?!」
サキオ「1年も奥に進んだら、大森林の中心部でやんすよ!まだ誰も到達した事ない秘境でやんす」
テツ「おいおい…」
タマ「!!ご、ごめんなさい、ほんとはよく分かんなくて」
にゃん吉「分からんとはどういう事じゃ?お主は集落から来たのじゃろ?」
ソラ「みんなやめなよ、怖がってるじゃん」
タマ「お姉ちゃん、ありがと…」
ソラ「んーん、良いよ。けど、よく分からないってなんでなの?」
ソラは優しく聞いた。
タマ「えっと、昔からある秘密の門に行くと、7日くらいで行けるんです。」
ソラ「秘密の門?」
サキオ「もしかして転移門でやんすか?」
タマ「大人達はそう呼んでます」
キノ「転移門ていや、ダークエルフにしか使えない秘術だって話しじゃなかったかねぇ」
タマ「ごめんなさい、よく知らないんです」
タマは申し訳なさそうで、
今にも泣き出しそうな顔をしている。
ソラ「大丈夫だよ。普通なら遠い所だって事は分かったから、気にしないで案内して」
ソラは優しくタマの頭を撫でながら言った。
タマ「ありがと、ソラお姉ちゃん」
ソラ「う…かわいい…」
サキオ「やんすね」
テツ「その、転移門の場所はちゃんと分かっているんだろうな?」
タマがビクッとなる。
ソラ「言い方!」
テツ「う!す、すまん」
ソラ「ふんっだ。タマちゃん、あいつは無視で良いからね。あいつソラより弱いんだから」
テツ「ぐぬぬ」
タマ「うん、ありがと…」
……………………………………
だいぶ進んだ。
道はまだまだ続く。
テツ「な、なぁそろそろ休憩にしないか?ずっと歩きっぱなしだぜ」
ソラ「だらしないなぁ、タマちゃんだって文句言わないのに」
にゃん吉「じゃがソラよ、そろそろ日が影る頃じゃ。森の夜は早いぞ」
タマ「あ、あの、もう少し行くとスポットがあります」
テツ「へぇ森にもスポットがあったのか。それじゃそこまで急ごうぜ」
やがてソラ達はスポットに着いた。
何組かの冒険者達も集まっている。
オト「さて、野営の準備だ」
サキオ「あっしは火を起こすでやんす」
キノ「ここは男達に任せようかねぇ」
と言うキノの横で、
テツが腰を下ろす。
テツ「ふう、なんだか疲れたぜ」
オト「おい!テツ!テメーも動け」
テツ「な?!少し休ませろよ」
オト「ただでさえ森は陽が差さないんだ、あっという間に暗くなる。その前にいろいろ準備しやがれってんだよ」
テツ「分かったよ、やりますよ」
テツは文句を言いながも動きだす。
ソラ「文句あるなら着いてこなきゃ良いじゃん」
テツ「今、準備しようとしてるだろぉ」
ソラ「ふんっだ」
……………………………………
ソラとテツは打ち解ける事もなく、
そのまま数日が過ぎた。
一行はだいぶ進み、
既に森の中の道はだいぶ細くなっていた。
そして、ある看板を見つける。
サキオ「看板があるでやんすね」
『これより先危険地帯。心して進め』
にゃん吉「この先から魔物が出るという事じゃな?」
キノ「今まで魔物が居なかったからねぇ」
サキオ「どうやら道もここで終わりでやんすね」
ソラ「タマちゃんはこの先から来たの?」
タマ「そうです。もう少し先に、最初の門があります」
ソラ「うん、じゃぁ行こう」
道がなくなり、足場が悪くなった。
しかし、日中もあまり陽が差さない地面は、
枯葉などが多くあったりもするが地面が見えている。
一行は大きな木の根などを避けながら、
タマの案内で森を進む。
タマ「ここです、この木がそうです」
ソラ「この木?」
見たところ直径1メートルは超えてると思える大木だが、ここらの木はみんな大木なので他の木とそんなに変わらない。
キノ「この木が転移門なのかい?」
タマ「そうです」
タマはそう言うと木に触れた。
にゃん吉「魔力を感じるのじゃ」
タマ「そうです、魔力を流してます」
すると、タマが触れている所を中心に、
徐々に木の表面が透明に変化していく。
あっという間に表面の皮が消えて、
木の内部に入れる入り口が現れた。
「「「「おお…」」」」
タマ「少しの間だけ通れます。時間が経つと元に戻ります」
ソラ「すご〜い」
にゃん吉「あ、そう言えばじゃ」
ソラ「どうかした?」
にゃん吉「これではフレイちゃんが通れないではないか」
「「「「あ!」」」」
皆がフレイちゃんを見上げる。
サキオ「ここまで着いてきたのに。どうするでやんすか?」
フレイ「みな、先に行く。オレ、このまま走っていく。行き先分かる」
キノ「喋ったねぇ」
サキオ「やんすねぇ」
ソラ「行き先分かるの?」
フレイ「分かる。だから、先行け」
ソラ「どうする?こう言ってるけど」
テツ「行くしかないだろ。どのみちフレイちゃんは転移門潜れないんだから」
ソラ「そ」
ソラは素っ気なく答える
テツ「むぅ」
タマ「向こうに何かいる事もあるので、なるべく密集して行きます、急がないと閉じてしまいます」
ソラ「分かった。行こう!フレイちゃん!待ってるからね!」
ソラはそう言うと転移門に入って行く。
タマもそれに続いて入った。
キノ「フレイちゃん、あんたにも世話になったねぇ。無理しなくて良いんだ。元気でねぇ」
キノはフレイちゃんに、別れの言葉を言って転移門に入って行った。
後の男達3人もそれに続く。
……………………………………
ソラは転移門を抜けた。
出口も変わらず森の中だ。
振り返って出口を見る。
そこには入り口と同じような木があった。
ソラ「あれ?出口は?」
そう思った時に、
木の中からタマが現れた。
まるで水面から浮上するように出てきた。
ソラ「おおぉ」
少し間を置いてキノ達も出て来た。
テツ「こいつは凄いと思うんだが、ここってさっきの場所と変わってるのか?」
にゃん吉「いや、明らかに違うのじゃ。何か気配を感じる。さっきの場所にはこんな気配はなかったからの」
タマ「あ、あ、そんな」
タマが明らかに怯えだした。
ソラ「タマちゃん!どうしたの?!」
にゃん吉「あれか!」
タマの見る方向を見ると、
巨大な頭を擡げている魔物がソラ達を見ていた。
サキオ「あれは!口縄でやんす!」
テツ「あれが口縄?馬鹿言うなよ、口縄なんてデカくても精々20メートルあるかないかだぜ。ありゃどう見ても…」
サキオ「いや、あの頭に出てる鋭いツノ、褐色の鱗。間違いないでやんす。あんなでかい口縄なんて初めて見るでやんすよ」
オト「確かにな。でかい、50メートルあるか?」
「ふしゅるるるる…」
キノ「どうやらヤル気のようだねぇ」
タマ「どうしよう…逃げられないかも…」
不安がるタマにソラが言う。
ソラ「タマちゃん、大丈夫だよ。見てて」
そう言うとソラは見る見る龍人化した。
ソラを中心に風が舞う。
テツ「ヒュー」
テツがソラの龍人化を見て口笛を吹いた。
ソラ「変な口笛鳴らさないで!爺ちゃんいくよ!」
にゃん吉「待て!様子が変じゃ」
ソラ「ん?」
口縄は動きを止めて襲ってくる様子は無い。
それどころか、高く擡げていた頭を、
力が抜けたようにそのまま横に倒れてしまった。
ドゴーン
と激しく音を立てて倒れた口縄。
一同が何事かと見守る中。
口縄の脇から一人の女性が現れた。
女性はソラ達に近寄って来た。
ソラ「誰?」
ソラは警戒して龍人化を解かない。
キノ「そこで止まりな!」
女性は立ち止まり、ソラを見た。
いや、正確にはソラの肩に乗るにゃん吉を見ている。
女性「我が番よ。待ち侘びたぞ」
「「「「…!!つがい??」」」」
にゃん吉「お主は!」
ソラ「あはっ」
ソラは女性に駆け寄り抱きついた。
ソラ「シロ!人間の姿になれるようになったんだね!」
シロ「ソラ、そうだ。我は進化したのだぞ」
一同驚く中、
にゃん吉だけは違う反応をしていた。
にゃん吉「わしは番ちゃうわい…」
……………………………………
テツ「この美人はソラ達の知り合いなのか?にゃん吉の番?」
シロはにゃん吉を腕に抱え、
一緒に歩いている。
シロ「我は美人などと言う名前ではない。シロだ。そして、このにゃん吉は我の番だ。やっとまた会えたのだ。ふふふ」
にゃん吉「番ではないと言うとろうに、どうしてもわしを離さないらしいのぉ」
シロ「せっかく人の姿になれたのだ。問題無かろう。」
ソラ「あははは!相変わらずだねシロ」
キノ「番と言うのはまぁ良いとして、シロさんとやら、聞いても良いかい?」
シロ「我はシロサンではない、シロだ。なんだ?」
キノ「…。あんたは何者だい?こんな森の深くで、何してるのさ?」
シロ「我は森を守る存在。それ以上でも以下でもない」
キノ「森を守る?」
ソラ「シロは白虎なんだよ。300歳くらいだっけ?」
タマ「えっ?!白虎様??」
「「「「白虎?!」」」」
サキオ「それでにゃん吉と番でやんすね。確かに綺麗な白髪でやんすね。それにうっすら縞もある」
オト「それに巨乳だな。にゃん吉が埋もれそうだ」
テツ「それな」
サキオ「やんすね」
シロ「そうだ、我は白虎だ。獣人の子よ、我の事はシロと呼べ。それ以上でも以下でも無い」
タマ「凄い…白虎様が2人も…あ、シロ様とにゃん吉様か。あ、あたしはタマです。」
キノ「シロと言ったかい、さっきの口縄は一撃で倒したのかい?」
シロ「倒した?我は眠らせただけだ。彼奴はこの辺りの主なのだ。殺してしまっては混乱が起きる」
キノ「眠らせたのかい」
シロ「我は無用な殺しはしない。特にこの森の中ではな」
ソラ「ふうん、それはそうと、シロはずっと人の姿でいるの?」
シロ「なかなかこの姿は気に入っている。我が番も元は人だと聞いているのでな。この方が良いと思っている」
にゃん吉「もう何でも良いが、番と呼ぶのはやめよ」
「「「「えっ?!元は人間?!」」」」
オト「そう言えば、ソラとにゃん吉はどういう関係なのか聞いてないな」
サキオ「そうでやんすね。ソラさん、たまに爺ちゃんとも呼ぶでやんすよね?」
テツ「こいつが元は人間??」
ソラ「あー、話してなかったよねぇ」
にゃん吉「いちいち話す事でも無いと思っておったがなぁ」
キノ「白虎はこういう者だと、普通に思ってたねぇ、まぁ話したい時に話せば良いさね」
にゃん吉「ならばそうさせてもらうのじゃ。話せば長いからのぉ」
シロ「失言だったか?」
ソラ「気にしなくて良いよ」
テツ「俺は気になるんだがなぁ」
ソラ「うっさい。シロ、コイツはアホって言うの、相手しなくて良いからね」
シロ「アホか。分かった、我は相手にするのはやめておこう」
テツ「おい!ひでーじゃねーか!」
ソラ「なに?!文句あるわけ?着いて来なくても良いんだけど」
テツ「ぐぬぬぬ」
にゃん吉「やれやれじゃな…」




