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一夜明けて今日は金曜日、運よく明日は休日だ。
軽い気持ちで、軽い気持ちで…そう意識するたびに緊張が募っていった。
視線の先に茶髪の男の子が見えた。
その瞬間、今まで考えていたことが吹っ飛ぶほどの緊張が走った。
「颯をデートに誘う」と考えているからいけないんだ、あくまでも遊びに誘うだけ、深呼吸、深呼吸。
「あ!那由多くん!」
見つからないように隠れていたが、背筋がピンと伸び切り、そのまま固まってしまった。
岡名さんの時も含め、どうやら僕は全身が隙だらけらしい。ジャパニーズ・ニンジャの心得でも習得すべきなのだろうか。
「あ、ぁぁ、あ˝、やっほぅ」
何ともぎこちない返事を返した僕は、もう一度深呼吸した。
颯の方を見ると、やはり不思議そうに僕を見ていた。
(何て純粋なのでしょう!!かわいい!!)
気を抜けば勝手に口から零れ出そうな言葉を押し込め、あたかも普通であるように会話を続けた。
「あー、あのー、おはようさん」反射的に関西弁が出てしまった。前世が邪魔してきたようだ。
「おはよっ、那由多くん」
「あのさ、明日でも遊び行かん?」
「えっと、えっ……いきなりだねw」
[タイミングを間違えました。] 脳内AIが計算結果を出した直後、颯が恥ずかしそうに言った。
「でもそれって、デートってこと?」
「へっ?」恐らく今日イチの阿呆な声を出して混乱する僕。
「いやだって、那由多くん一昨日から僕と付き合ってるから、デートってことになるよね?」
「あ、いや、あの、その…」
ふんわりとデートに誘おうとしていたのに、初っ端からこちら側の手は読めていたようだ。
「いや…そうじゃなくて…遊びに行きたいな~って…へへ」苦し紛れに弁解する僕を、"彼氏"は微笑みながら眺めていた。
「ついに来ちゃったよ、デート…」
待ち合わせ場所は花宮駅前、最寄り駅の一つ隣の駅だ。さすが大都会HANAMIYA、辺りには超高層ビル(十階前後)がひしめき合っている。最寄りの花宮町駅とは比べ物にならない。
颯曰く目印はちょっとデカめの銅像らしいが、何せここは大都会HA((ryの駅直結型ショッピングセンター、大勢の人と看板と商品で目印なんてあったもんじゃない。
目印より先に案内板を探していると、どこかから颯の声が聞こえてきた。
「那由多くーん、こっちこっち」
声の方向が分からず見まわしていると、後ろから肩をたたかれた。
「那由多くんっ」少しうれしそうに話しかける颯は、私服も相まっていつもの数倍格好良く思えた。
「あ、はやてじゃん」
「どうしたの?当たり前のこと言っちゃって」
「いや…私服はちゃんと男の子してるなーって」
「そうでしょ~、僕の最近のトレンドは…」
颯はパーカーに目線を向けさせるようポケットに手を入れて言った。
「『カーキ』」
「なにそれwじゃあ、行こっか」
「うん!楽しみ!」
二人は指を絡めて大都会に向けて歩き始めた。




