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錯綜する戦い 11

エーゼルも簡単にはいかないだろうと予想していたが、想像以上であった。


「厄介な事だ」


事実を認めた上でエーゼルがぼやく。


「それでも君は諦めないんだね」


「当然だ。里の戦士として戦えるのはもう我しかいないのだからな」


どれだけ絶望的であろうと最後まで抗う。


それがエーゼルの在り方だ。


「それが責務だからかい?」


「それもあるが、我は友として貴女を止めたいのだ」


「嬉しいな。こんな風になった私を友達だと思ってくれるんだ」


心も体も壊れて変わり果ててしまったレイシィではあるが、エーゼルのその言葉は嬉しく感じられた。


「我はその関係を切った覚えは無い。それに先程会った時、貴女自身が『唯一の友達』だとそう言っただろう。我も同じだ」


「……君は本当に真っ直ぐで眩しいね。そういう所、全然変わってない」


少しだけ目を細めて言うレイシィは嬉しそうでもあり哀しそうでもあった。


ただ一人の友人が変わらず綺麗なままであった事の嬉しさと、対する自身の変わり果て様が浮き彫りとなってしまう哀しさを同時に感じてしまったからだ。


「この命尽き果てようとも友として貴女の暴走を止める。その覚悟を持って我はこの場に立っているのだ。故に我は最後まで決して諦めんぞ」


「そっか。じゃあ、私も君を張り倒してでも全力で押し通させて貰う。君の言葉を聞いてより強く確信した。君にこの里の闇に触れさせてはならないと。闇は闇のままに葬り去る」


レイシィには確信があった。


エーゼルの父、エルアルトを殺害した犯人が誰であれ、その目的や真相は碌なモノではないと。


嫌われ者のハーフエルフ故にレイシィはエーゼルよりも里の暗い部分を見る事が多かった。


だからこそ、この隠れ里がどす黒い歪んだ悪意を内包しているのだと知っているのだ。


これまで隠れていた存在にエーゼルは気付いた以上、ひたむきなエーゼルは必ず辿り着くだろう。


その真相は十中八九エーゼルの心に深い傷を残す。


レイシィはエーゼルの心が傷付き、最悪の場合、絶望してしまう事すらも有り得ると予想している。


エーゼルが里に対して見切りを付けるのにはその方が都合が良いのかもしれない。


だけど、自分と同じように傷付いてしまうエーゼルの姿を見たくないというのはレイシィの願いであった。


だから、エーゼルに敵対されてでも、エーゼルが何も知らない間に里そのものを滅ぼして、エーゼルを様々なしがらみから解き放つ。


最初は自分が壊れる原因となった里のエルフやカルディア傭兵国などの人間達に対する恨みからの行動だった。


なのに、エーゼルと再会して殺し合いをして、レイシィの中の最優先は恨みよりもエーゼルそのものとなっていた。


カルディア傭兵国の騎士達については完全についでだ。


あの国にエーゼルというハイエルフの存在が知られてしまえば絶対に追手がかかる事になる。


その面倒を避けるために全滅させて情報が漏れないようにする。


高潔なエーゼルの姿は眩しくもあるが痛ましくもあった。


このままでは遠くない未来にエーゼルが壊れてしまう。


既に心が軋みをあげている状態だと分かる程だ。


大人びてこそいるがエーゼルは13歳と成人もしていない年若い少年なのだ。


そんな若さの少年に色々と重すぎるモノを背負わせ過ぎている。


レイシィからすれば、なまじ優秀なだけに潰れずにやっていけてしまったのが不幸だったのかもしれないとすら思える程であった。


この期に全ての禍根を絶つ。


その思いでレイシィは今この場に立っていた。


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