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ティアリエとミラフィア 1

ティアリエはミラフィアをしっかりと抱きかかえて空を飛んでいた。


身体能力に長けた種族ではないが、ティアリエは元々レベルが高いのでミラフィアのような小さな子供1人を抱える程度なら負担にはならない。


(思ったよりも時間が掛かっちゃったね。シュラ君は心配ないだろうけど、エーゼル君とゴドリック君は大丈夫かな……?)


魔物達の掃討と原因の排除には成功して、ミラフィアの安全も確保した。


魔物の掃討に関しては一方的であった。


空を飛べるティアリエはミラフィアを抱えたまま、魔物達の攻撃が届かない空の上で翼から魔術攻撃を放つことで向かって来た魔物達を徹底的に蹂躙した。


その様子は戦いというよりほぼほぼ単なる作業であった。


実を言えば船で向かって来るカルディア傭兵国の本隊の殲滅はティアリエでも可能であった。


空の上という攻撃範囲外(アウトレンジ)からの一方的な魔術攻撃をするだけで終わる。


だが、今回はミラフィアの捜索という急務があったので移動速度が一番速く、小回りの利く上に探知能力に優れたティアリエが一番適任だったというだけだ。


ミラフィアを不安にさせない為にも声には出さないがティアリエはエーゼルと彼の手助けに向かったゴドリックを心配していた。


間違い無く一番辛いのは彼等の筈だからだ。


正直、急ぎたい思いはあるのだがミラフィアを抱えている以上彼女の体に大きな負担を強いるようなリスクは冒せない。


魔術的にガチガチに防備を固めれば多少は無茶出来るのだが、魔力に対する感受性が高いエルフの血を引くミラフィアが強力な魔力に曝されれば、その感受性故に圧迫感や吐き気などの体調不良を感じてしまうだろうからそれは避けていた。


幼い内は特に魔力的な感受性が高い上に耐性が無い状態なのでどのような悪影響を及ぼすか分からないのだ。


ミラフィアが図らずも魔物を倒した事でレベルが少し上昇したとはいってもティアリエからすれば誤差程度のものでしかない。


そんな訳でティアリエは限界まで外に放出する魔力を抑える且つミラフィアの体に負担が掛からないギリギリの速度でティアリエは森の上を飛ぶという割と器用な事をしていた。


ティアリエはゴドリックに持たせた魔力マーカーによって彼の位置を常に把握している。


ゴドリックの位置はエルフの隠れ里の中央……


聖樹の神殿の地下だ。


ティアリエはそこに向かって飛んでいた。


今の森はどこが安全か分からないのでミラフィアを連れたままになってしまうが、そこはティアリエ自身が手元に置いていた方が安全と判断しての事だ。


戦いの最中にエーゼルが聖樹を利用して展開されていた全ての結界を解除した事で迷彩を成す結界も解かれた。


その結果、空から里が肉眼で見える様になっていた。


空から見たエルフの隠れ里は凄惨な状態であった。


里全体が魔術で生み出したであろう毒の沼地に囲まれ、更に言えば、里には火の手が上がっており今まさに炎に飲まれようとしていた。


そして、里周辺の空気が異様なまでに活性化した濃密な魔力に包まれている。


その根源が天を衝くような巨大な樹……


聖樹によるものだと一目で分かった。


(アレがエルフ達の崇める聖樹……精霊樹か。本物を見るのは初めてだね)


精霊樹、エルフの国に存在する一番巨大な精霊樹は世界樹とも呼ばれている。


現存が確認されているのは10本も満たない絶滅を危惧されている希少な樹である。


この隠れ里に存在する樹は精霊樹としてはかなり若い樹だ。


だが、それでもその大きさは途轍もないの一言に尽きる。


高さが100mを超す巨大樹だ。


世界樹ともなれば雲を突き抜ける高さになるらしいから、この樹は間違いなく若木なのだ。


ちなみに絶滅が危惧されている原因は非常に単純だ。


飽くなき欲望の結果だ。


王侯貴族が求めて止まない完全版のエリクシルの材料の一つが世界樹の樹液だ。


命を糧に成長し、命を与え育む精霊樹は葉や樹液等が癒しの薬になる。


それだけ言えば十分であろう。


錬金術師であるティアリエとしても非常に興味をそそられる素材ではあるのだが、別に必要という程でもない。


無くても何とでもなる程度でしかない。


それに欲望のままにそれを求めてしまえば、自らの里を滅ぼした者達と同じになってしまう。


それはティアリエにとっては忌むべきことであった。


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