それぞれの戦い(エーゼル) 41
狩猟部の長が神殿前広場の入口へと突っ込んで行く。
解体に使われる狩猟ナイフを腰だめに構えて全力で真っ直ぐ。
だが、非力なエルフの特攻だ。
当然、そのナイフは打ち払われ、逆に騎士の握っていた剣が腹を貫く。
騎士が剣を引き抜こうとした時、『ガシリ!』と狩猟部の長は騎士の背中に腕を回して力強く掴んでそれを阻止する。
「な!?」
狩猟部の長のその全身が眩いばかりに発光していた。
それは魔力の輝き。
彼らは魔術に長けているという訳では無い。
だが、エルフという種族特性上内在する魔力は多い。
普段は身体能力の強化や、矢の強化に使っている魔力の全てに加え、聖樹に彼に残された時間を捧げて寿命を魔力へと変換。
爆発的に増大する魔力を無理矢理圧縮して抑え込む事で密度を増した魔力が強い光を放ち始めていた。
「この歳になっても一人は寂しくてな。悪ィが一緒逝って貰おうか」
(若様、後は頼んます)
「やめ……」
笑いながら告げられたその言葉に狩猟部の長が何をするつもりなのか理解してしまった騎士はその顔に恐怖が浮かべながら止めようとしたが、それは間に合わない。
言葉にする前に、抗う前に、本人ですら御しきれない量の魔力が暴走して爆弾の様に弾けたからだ。
至近からの衝撃に音が消えた。
否、音よりも先に伝わった衝撃が鼓膜を破裂させ、騎士の肉体を崩壊させたからだ。
体が何かを感じるよりも早く、騎士を木っ端微塵に吹き飛ばす。
狩猟部の長も当然無事では済まない。
というか、騎士と共に粉微塵となっていた。
自身ですら制御できない量の魔力の暴走をその身に受けたのだから当然だ。
まともに戦っては一方的に倒されるだけであるならば、自爆前提の特攻で最低一人一殺を敢行し数を削る。
それが彼らとエーゼルの選択だ。
「連中、マジかよ……」
エルフ達の覚悟に流石の騎士達も怯みが生じ、足が止まる。
前に出た者から自爆の餌食になる、しかも近くに居た場合多いに影響を受けるのだから当然と言えた。
「怯むな!進め!敵が自爆を決行する前に首を刎ねるなり、心臓を潰すなり、頭を叩き割るなりして即死させろ!我々には時間が無いと知れ!!」
それは実に的確な指示であった。
この自爆には魔力を臨界まで圧縮する工程が必要とされる。
故に圧縮段階で即死させれば、魔力の圧縮は解除されて霧散する。
騎士達が怯んだ間に全身に燐光を纏ったエルフ達が次々と殺到していく。
「クソったれ!」
その間にも動いていた状況に騎士の誰かが悪態を吐きながらも、エルフ達へと向かって行く。
このまま何もせずにいても状況は悪くなる一方だと嫌でも分かるからだ。
「何とかこの細道を突破しろ!押し込まれるな!」
退路が塞がれている以上逃げ場がない。
前に進むしか活路を開けない。
部隊長の示した通りに先頭に立った騎士は目の前のエルフの首目掛けて剣を振るう。
その指示は当然エルフ達にも聞こえていた。
振るわれる剣に対し、両腕を翳す。
右腕とナイフが斬り飛ばされる。
それでも剣は左腕の骨の中程まで食い込んで止まる。
腕に魔力を集めて強度を向上させた結果だ。
狙われる場所が限定されるのであれば、どれだけ重症を負ったとしても一撃だけなら防ぐことは難しくは無い。
元より命を捨てる覚悟を決めているエルフ達にとってその程度は今更なのだ。
「さらば」
剣を止めたエルフが一言告げた次の瞬間、燐光が極光となり魔力の圧縮が臨界点を突破する。
こうなっては殺した所で魔力の暴走は止まらない。
本能的に命の危機を感じ取った騎士は剣を手放して離れようとした。
だが、それは間に合わない。
大きな衝撃と共にまた1つエルフと騎士の命が尽き果てた。




