それぞれの戦い(エーゼル) 37
ここ数日社内旅行で更新できませんでした。
エーゼルの言葉に神殿部の者達も覚悟を決めたようだった。
その目に宿る光が変わったのをエーゼルは見た。
恐怖を感じながらも尚、立ち向かう意思が見えた。
「来るぞ。障壁展開準備!」
風の精霊を使って騎士達の動向を監視していたエーゼルが告げる。
(連中の神殿前広場への侵入を許せば乱戦は避けられん。連中が広場に侵入するのをどれだけ押し留められるかだな。強風で押し留めるのは無理だろうな。一度見せた手口が通用するほど甘い相手では無い)
神殿部の術士達が展開する魔力障壁がどれだけ持つかが鍵になるとエーゼルは読んでいた。
今は聖樹からの供給で魔力に関してはほぼ無尽蔵の状態だ。
この状態は術士であればより大きな影響を受ける。
それに関してはレイシィとの戦闘でエーゼルが身を以って体感した事実だ。
「さぁ、仕事だ!総員突撃!」
神殿へと続く小さな小道。
騎士達が3列縦隊で真っ直ぐに突っ込んで来る。
「障壁展開!」
エーゼルの指示と共に多数の魔力障壁が展開される。
レベルの低い神殿部の者達の魔力障壁では当然簡単に砕かれる。
だが、一枚一枚は弱くて脆い物であろうとも確実に衝撃を削り取る。
何十枚と砕かれながらも続々と障壁が絶えることなく展開され続ける。
その結果、騎士達の突進が止まる。
「押し戻せ!」
更に障壁を展開し続けて騎士達を押し返していく。
「障壁自体は脆い、砕きながら突き進め!」
剣を振るいながら押し戻されていた騎士達が再び前進を開始する。
時期に押し切られるのは確実だ。
だが、それを黙って見ているエーゼルでは無い。
「援護射撃!」
エーゼルの指示と共に上方へと向けて矢が放たれる。
放物線を描く矢が騎士達へと向けて降り注ぐ。
障壁に干渉しないように曲射だ。
「くっ……」
上から降り注ぐ矢の対応に手が止まっている間に障壁が騎士達を再び押し戻していく。
(ここから先は根気と体力の勝負だ)
そう読んでいたのだが、しばらくするとエーゼルの計算違いが明らかになる事態が発生してくる。
「ぐぅぅッッ!」
神殿部の者達が次々と膝を着いていくのだ。
魔力供給には滞りは無い。
魔力枯渇ではない。
何があったのかと目を向ければ、
「痛い、熱いッ!」
と胸や頭を手で押さえてのたうち回っていた。
(しまった。神殿部の者達は里の中でも屈指の引き籠もりだ。こいつらは『痛み』に慣れていない)
聖樹による強制魔力供給。
それは一気に魔力を供給すればする程に魔力回路に負担をかける。
自身が普段流している魔力の出力よりも遥かに大きな魔力を通すのだ。
魔力回路に負担が掛かるのは当然であり、それは痛みという形で出力される。
巨大なタンクに細い配管を繋げて小さなコップに水を供給している図を思い浮べると分かり易いかもしれない。
タンクの中に水が入っているほどに配管に加わる圧力は大きくなる。
ここで言うタンクは聖樹、水は魔力、配管は魔力回路、コップはエルフだ。
エーゼルや狩猟部、警備部の者達は苦痛に慣れているので魔力回路からの痛みを感じながらも治癒力を強化して魔力回路を修復しながら戦える。
だが、神殿部の者達はその痛みに耐えきれるだけの精神力を有していないのだ。
自分や周りの者達がそうだったから当たり前と思っていたが、そうではないと今更になって気付かされたのだ。
それに神殿部の者達は総じてレベルが低い。
保有している魔力量も、魔力回路に流せる魔力量もエーゼル達よりも遥かに低いのだ。
エーゼル達よりもより大きな痛みを感じてしまうのだ。
配管とコップ自体の強度も低い。
最悪、全身の魔力回路が焼き切れてしまう危険性すらある。
(これは想像以上に事態は悪いな)
「障壁を突破されそうだと判断したら、貫通の矢をありったけ放て」
それを受け入れて、エーゼルは狩猟部と警備部の者達に指示を出しておいた。




