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それぞれの戦い(エーゼル) 14

エーゼル達は最善を尽くしていた。


だが、それ故に状況はジリ貧であった。


元より分かっていた事だが、矢の残りが減っていく事に精神的に追い詰められていくのを全員が感じていた。


敵である騎士達は味方の死体を盾にして強風の中をジリジリと前進してくる。


矢の残りもそうだが、全員が魔力(MP)も段々と減っていく。


魔力枯渇による疲弊の色が浮かんで来ている。


(これはもう長くは持たんな)


敵の強さから言って2割も残っていればエルフ達は蹂躙されるのは確実なのだが、3割も削れていない現状に苛立ちが募る。


(ここは一度賭けに出るか?)


ゴドリックから受け取った魔力ポーションの残りは1本。


エーゼルは選択を迫られていた。


このまま自身の魔力切れまで強風による強制的な停滞を強いるか、全員の魔力が残っている間に一度攻勢に出て敵の数を削るか。


どちらを選択してもリスクは存在する。


前者は確実に時間を稼げるが、敵の数は多いまま。


後者は成功すれば敵の数を削ぎ落とせるが、失敗したら即座に蹂躙されるのが確定する。


(いや、ここは大きなリスクを抱えるべきでは無い。我の役目は一刻も長く時間を稼ぐ事だ。下手を打つ訳にはいかん)


「皆の者!我がギリギリまでこの場で時間を稼ぐ!その間に里まで撤退し、矢の補充と魔力の回復を行え」


矢と魔力さえ補充できればまた時間を稼げる。


接近戦では話にもならないが遠距離戦ならまだ分がある。


騎士達が先に撤退した方を追って行ったのならば背後から襲撃を仕掛けられ、里の方に向かえばそのまま籠城戦を強いる事が出来る。


問題は残存する部隊を2つに分けて行動された場合だが、それに関しても考えがあった。


「な!!若様!?」


「ハッ……撤退するにしても我1人の方が楽なのだ。サッサと行け」


(北で戦った騎士達が『ハイエルフはエルフ100人分以上の価値がある』と言っていた。我が北に撤退すれば、あの騎士達は確実に我の方に多い人員を割く筈だ)


少ない人数で数多くのエルフ達を捕えるよりも、疲弊したハイエルフ1人を囲む方が労力は少なく確実。


更に収入も期待できるとなれば逃がさない為に多くの人員を割くだろうとエーゼルは読んでいた。


「若様の覚悟を無駄にするな!全員、矢を置いて里まで撤退!!」


『り、了解!!』


狩猟部の長の指示に従いその場に居た戦闘員達が撤退を開始する。


「若様、残りの矢は全てあなたに預けます」


狩猟部の長はその場に残された矢を回収して、エーゼルの背負う矢筒に入れる。


(重さからして30~40本といった所か……本当にギリギリだったようだな)


確実に1人1射すらできない本数だ。


「貴様もサッサと退け」


「若様、ご武運を」


「フン、我は運などには頼らん。後は任せた」


「ハッ!」


狩猟部の長が撤退していく音を聞いて、エーゼルは魔力回復ポーションの最後の1本を一気に飲み乾す。


ポーション中毒による頭痛と倦怠感に襲われるが、ティアリエの手によって中毒症状が抑えられていた事もあって耐えられない程では無かった。


ポーション中毒によりMND(マインド)ステータスの減少が発生していた。


(減少したのが速度(AGI)で無かったのは幸いだな)


自身の状態を確認してエーゼルはそう判断していた。


どちらにせよ追い付かれたら終わりなのだ。


速度以外であればどのステータスが下がっても一緒だからだ。


(さて、我のやることは限界まで連中をこの場に押し留めて狩猟部と警備部の者達が里まで撤退する時間を稼ぐ事。魔力枯渇する寸前で撤退し、出来るだけ多くを引き付けて数を減らす事。そして、体力が尽きるまで逃げ続けて、逃走と回復の時間を稼ぐ事。その3つだけだ)


頭の中で自身のすべき行動を明確化させて、エーゼルは本日何度目になるか分からない覚悟を決めた。


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