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それぞれの戦い(ミラフィア) 5

ティアリエ特製の『激臭閃響催涙弾』は煙が消えるまでに5分、煙を浴びて悶えていた男達が回復するまでに10分、合わせて15分程の時間を稼ぐ事に成功していた。


「あのクソガキやってくれやがる!」


「苦しくて死ぬかと思った……!」


「でもどうするよ?完全に見失ったぞ」


煙を浴びた3人は貴重なポーションを用いて回復したが、万全とは言い難かった。


服に付着した刺激物で今もそれなりに痒い思いをしている。


この場所では洗い流すだけの水場は近くに無く、更に言えば全員が水属性の魔術を保持していなかった。


その結果、痒みは我慢するしかないという結論に達した。


「森に潜むエルフを見つけ出すのは難しい。だが、あの歳と疲労ではそう遠くへは行っていない筈だ。それに相手に精神的な余裕は無い。気配を追えずとも足跡を追える筈だ」


普段であれば残さない痕跡も余裕がなければ難しくなる。


「流石、隊長!」


「行くぞ、時間との勝負になる」


「「「了解!」」」


その場に残されたミラフィアの足跡を追って偵察隊の4人は捜索を開始した。


足跡の追跡を始めて10分程が経った辺りで隊長はその異変に気付いた。


「足跡が消えた?」


前方と左右の3方向が繁みに囲まれた所で前方の繁みの手前で足跡がプッツリと途絶えていた。


前方の繁みの先に足跡は無く、左右どちらの繁みの先も同様であった。


「これはあの少女は思っていたよりも強かなようだ。止め足か」


止め足とは野生の動物等が見せる行動で自らの足跡を踏みながら後退してから繁み等の足跡が残らない場所へと跳んで追跡を攪乱する行動の事だ。


もし仮に偵察隊の4人が5分で復帰していたら、ミラフィアは精神的な落ち着きを取り戻せなかったであろう。


だが、10分程で少しだけ冷静さを取り戻した彼女は足跡を消す行動に出ていた。


ティアリエのおかげで稼げた15分という時間は非常に大きいものだった。


「魔力の痕跡も無しか……仕方ない3方向に分かれるぞ。俺は正面。お前達は適当に左右に分かれて捜索しろ。見付けたら即座に念話を飛ばせ」


「「「了解」」」


「一応言っておくが、復讐心に駆られて商品価値が落ちるような事はしてくれるなよ。あの少女は下手をすればハイエルフよりも高値が付く可能性がある。それを頭に入れておけ」


「「「了解!」」」


男達はそこから3方向に分かれて捜索を開始する。


一方でミラフィアは樹上を飛び移るようにして移動していた。


今までそんな事は出来なかったのだが、レベルが上がった事で全体的にステータスが上がったのと体力と同様に魔力の上限値が上がり、身体強化の魔術が使えるようになっていたからだった。


身体強化の魔術はエーゼルが良く使う魔術だったので、術式そのものは知っていたので魔力さえ足りれば使う事ができた。


植物の精霊と結びつきが強いミラフィアは森の精霊達から魔力を分けて貰ってその魔力を回復させていた。


ミラフィアが頼んだ訳では無い。


ミラフィアの危機を察知した森の精霊達が勝手にそうしていただけである。


森の精霊達は魔力を分け与えるだけでなく、ミラフィアでも使える魔術と精霊術についても教えてくれた。


森の精霊達はミラフィアを寵愛していた故であった。


エルフ達が信仰する木の精霊達がエルフ達の嫌悪するミラフィアを寵愛しているというのは皮肉としか言い様が無い事実であった。


樹上の移動は地上を走るより遅いのだが、痕跡を残し難く、発見もされ難いという利点があった。


止め足を使って足跡の痕跡を消したミラフィアは少しだけ大回りをしてゴドリックの家へと向かっていた。


レベルが上がったと言っても、森の魔物達を相手にするにも心もとない程度のステータスしかなく、逃げるぐらいならなんとかなりそうと言った具合なので、当然、あの偵察隊の騎士達には勝てる見込みは皆無と言えた。


ミラフィアもそれを理解していたから、今必死で逃げているのだ。


ただ、問題があるとすれば樹上の移動は地上を走るより体力を使うのである程度定期的に休憩を入れないといけないという点であった。


でも休みを入れなければ足を踏み外して落ちる危険性が上がるので、休まない訳にもいかないという状況だ。


(もう少し先に進んだら地上を走ろう)


止め足を使った地点から離れた位置から800m程離れた所まで来ていたミラフィアはそう決めた。


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