それぞれの戦い(エーゼル) 11
数分もしない間に騎士達を全滅させたゴドリックはエーゼルの方へ振り向いて、
「エーゼル、無事で良かった」
優しい声で言った。
先程まで暴力の化身といった風情で暴れ回っていた者と同一人物とは思えないような変わり様であった。
「この馬鹿者が!何故来た!?」
「無論、エーゼルを助ける為。エーゼルも手前の恩人。助けたいと思うのは当然」
責めるエーゼルに対し、特に気にした様子も無くゴドリックは答える。
「ミラフィアはどうした?」
「ミラはティアリエ達に任せて来た。だから、大丈夫」
ゴドリックのその目には信頼が覗えた。
「魔力欠乏による疲弊が激しい様である。これを飲むと良い」
ゴドリックはティアリエから貰った空間袋から澄んだ緑色の液体の入った瓶を取り出して、エーゼルの前に掲げる。
「これは?」
「ティアリエ殿特製のポーション。緑色のは魔力回復用。ある程度だが体力も回復させる効果もある」
「あの変人の手製か……」
エーゼルからしたらティアリエは変人という認識であった。
間違いでは無い。
本人も認めているぐらいである。
「効き目は保証する」
「チッ……この際仕方ないか」
漠然とした不安感を感じて顔をしかめるが、状況を鑑みてエーゼルはそれを受け取って飲み乾す。
「意外と味は悪くないのだな……」
「うむ。ティアリエ殿のポーションは味が良くて飲み易いぞ。果実の味を模しているものが多い。ティアリエ殿曰く『不味いと飲みたくなくなるじゃないか!』との事だ」
その辺りはティアリエのこだわりであった。
訓練で怪我に魔力欠乏、体力的な疲弊等でティアリエ特製ポーションの世話になる事が多かったゴドリックにはその辺り馴染み深いものがあった。
「……一応だが礼は言っておく。助かった」
「エーゼルが無事ならそれで良い」
「……貴様はそれを本気で言っているのだからタチが悪い」
「?」
「何でも無い。チッ……向こうも状況は良くないか」
魔力を回復させたエーゼルは風の精霊を介して、他のエルフ達の状況を確認して舌打ちする。
むしろ、逃げたエルフ達の方が危機的な状況だと分かった。
逃げた先に先程の一団よりも強い集団が潜んでいたらしく、警備部と狩猟部が連携して奮闘しているようだが押し切られるのは時間の問題であった。
(我の探知で察知出来なかった一団が居たか。となると、今彼らが戦っている相手は相当な手練れだ)
数も先程の一団より多い。
勝率は限りなく低いと言わざるを得ない。
「行くのか?」
「無論だ。それが我の役目だ」
「ならば、手前も行こう」
「止めておけ。今は我1人だから良かったが、貴様が里の者達の前に出れば貴様も攻撃されるぞ」
「構わない。エーゼルが役目を果たすのと同じだ。何があっても手前はエーゼルを助けるとそう決めている」
「チッ……何があっても知らんぞ」
「覚悟の上である」
応えるゴドリックの瞳には本気の色しか見えなかった。
「勝手にしろ」
それが分かったからこそ、エーゼルは顔を背けた。
「ああ。勝手にする。エーゼル、手前に何があっても気にするな」
「我が貴様を気にする訳がなかろう」
「それで良い。エーゼルはエーゼルの成すべき事を成すと良い。手前は手前で成すべき事を成す」
「貴様の鈍足に合わせていては里の者が危うい。我は先に行く」
タッ……!
身体強化の魔術と風の精霊によるアシストでエーゼルは風のように駆けて行く。
「手前も向かうとしよう」
そして、ゴドリックもエーゼルには及ばないものの自身に出せる全速力で走り始めた。




