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それぞれの戦い(ミラフィア) 4

新たな脅威と対面して、投降を持ちかけられたミラフィア。


彼女の答えは……


「絶対にイヤ!」


当然、拒絶であった。


ミラフィアは目の前の騎士達から先程の狼の群れよりも嫌な気配がするのを感じ取っていた。


「やれやれ、こちらとしても大事な商品に手荒な真似はしたくなかったんだが……仕方あるまい。捕獲するぞ、絶対に大きな傷を付けるなよ」


「「「了解!」」」


命令を受けた3人の騎士達が漫然とミラフィアに歩み寄って来る。


狼達との逃走劇で体力を大きく減らしているのが分かっていたからこその余裕だ。


だが、彼らが見たのはミラフィアが追い詰められていたあの瞬間だけであった。


それはミラフィアにとって何よりも幸いだった。


それまでの経過を見ていたら決して油断などしなかったであろう。


「えい!!」


ミラフィアが狼達に囲まれていた時から握っていた何かを騎士達に向かって投げる。


幼いミラフィアのフォームもなっていない投擲では当然騎士達まで届く事は無く、ポトリと丸い小さな球のようなものが騎士達の目の前の地面に落ちる。


「おいおい、そんなんじゃ仮に当たっても痛くも痒くもないぜ?」


3人の内の1人がそう言って、全員が笑ったその瞬間。


バンッ!!!!


迸る閃光と轟音。


そして、その後に視界が利かなくなる程の煙を吹き出す。


「「「ギャァァァァッ!!?」」」


そして聞こえて来る絶叫。


ミラフィアはそれを投げた瞬間に踵を返していたので閃光による被害を免れていた。


轟音によって耳がキーンとしていたがそれだけで済んでいた。


狼達との睨み合い、そして先程までの会話でミラフィアは少しだけ体力を回復させていた。


レベルが上がった事でST(スタミナ)の上限値が上がっており、それに伴って単位時間当たりの自然回復量が増えていたので再び走り出せる程度には回復していたという訳だ。


ミラフィアが投げた物は閃光と轟音で騎士達の視覚と聴覚を奪っただけでは無かった。


「目が、鼻が、喉が痛ェッ!!」


「うぎゃぁぁッ!!全身が痛い!」


「苦しいィィ!!?」


煙に包まれていた3人が悶え苦しみ、その場に蹲ってのたうち回っていた。


正に阿鼻叫喚といった風情だ。


「クッ!目と耳が……しかも、何て臭いだ!鼻が曲がる」


彼らよりも離れた位置にいたリーダーだけは閃光と轟音で視覚と聴覚を奪われ、同時に撒き散らされていた激臭で嗅覚も奪われる程度で済んでいた。


濛々と立ち上る煙で視力が回復しても視野が利かない状態だったので、煙から距離を取った。


ティアリエ特製『激臭閃響催涙弾』はその効果を遺憾無く発揮していた。


それは初めに轟音と閃光と激臭を周囲に撒き散らし、その後に濃縮したカプサイシン、硫化水素等の水溶性の刺激物を含む煙を大量に噴き出すという凶悪な代物であった。


効果は見ての通り。


目、鼻、口といった粘膜の部分は煙に触れると即座に刺激物が水分に溶けて激痛をもたらす。


少しだけ時間は掛かるが皮膚も同様だ。


つまり、この煙をまともに浴びると聴覚以外の殆どの感覚がしばらく使い物にならなくなる。


「クソが!やってくれる」


最悪の被害を免れたリーダーは明らかに危険な煙を睨んで悪態を吐く。


そうしてミラフィアの逃走劇の第2幕が幕を上げた。


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