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それぞれの戦い(ミラフィア) 2

窮地に立たされたミラフィアは実に懸命だった。


即座に逃げる選択をしたのもそうだが、逃げると決めた瞬間から真っ直ぐにゴドリックの家の方に向かって逃げていた。


オークの変異種であるゴドリックは身体能力だけでこの近隣の魔物を一蹴できるだけの強さを持っている。


それにここ最近ゴドリックの家に住み着くようになったティアリエとシュラの2人はゴドリック以上に強いと精霊達が教えてくれていた。


エーゼルは立場的にミラフィアを堂々と救えない可能性がある中、この窮地で頼りに出来るのは彼らに他ならなかった。


そして、ミラフィアは何というか運が良かった。


ティアリエから貰った非殺傷型の逃走用アイテム。


それらが上手い具合に奇跡的な掛かり方をして、追って来ている狼達の頭数は最初の半分以下になっており、残り5頭まで数を減らしていた。


周辺から徹底的に摩擦力を奪う液体を撒き散らす道具と激熱のトリモチのコンボによって、3頭が走っていた速度をそのままにトリモチへと頭から突き刺さり、足場の摩擦が無い為に踏ん張りが利かず、頭を引き抜く事も出来ないまま窒息死。


1頭が足を引っかけて吊るし上げる為の括り罠が首に掛かって首吊り状態で死亡。


踏むと風で相手ふっ飛ばすと共に麻痺針を撒き散らす罠に掛かった1頭は、吹き飛ばさて当たった先が蜂の魔物の巣だった為に、巣に対する攻撃行為と認識されて、麻痺して体が動けない状態で蜂に集られて毒死。


そのとき近くに居た3頭程が蜂にロックオンされて巻き添えに……


強烈な砂塵を撒き散らして視界を奪う道具は、1頭がミラフィアに喰らい付こうとしていた為に口の中に入ってしまい、胃袋の中で爆裂的な砂塵が噴出してしまい内圧によって内臓のあちこちが破裂して即死。


といった具合に本来の仕様では想定されていない形で発動して、次々と狼達の命を奪っていたのだ。


それによって元々レベルの低かったミラフィアは急激なレベルアップを果たしていたが、当の本人は逃げるのに必死なあまり全く気付いていない。


どんどん追って来る狼達の数が減っていく中、ミラフィアはある違和感を感じ取っていた。


(どうして、ここまで酷い目に遭っても引かないの!?)


普通であれば数が半分以下になれば撤退してもおかしくは無い。


余程飢えている場合はその限りでも無いが、追って来る狼達の肉付きはしっかりしていた。


間違いなく急を要するほどに飢えてはいないのは確実であった。


なのにひたすらにミラフィアを追って来ている。


まるで、狼達の狙いはミラフィアのみとでも言わんばかりだ。


それともう一つ不可解な点があった。


ミラフィアは向かう先に猪の魔物が居るのに気付き、道具入れの中に入れていた石を投げて猪の魔物の体に当てた。


すると、猪の魔物は当然石が飛んできた方向を振り向いて、鼻息を荒くさせてザシザシと後ろ足で土を蹴る。


そして、一直線に全速力で向かって来た。


その突進はミラフィアに向いていると思いきや、猪はミラフィアの真横を通り抜けてミラフィアを追っていた狼達の内2頭を吹き飛ばしていた。


ミラフィアは逃走する間も木々との気配の同化を切っていなかった。


猪は赤や緑といった色をあまり認識できないので、ティアリエに渡された森の中での保護色となる濃緑色のローブを頭から被っていたミラフィアは纏う気配もあってその辺の木か何かと認識されていた。


故に視線の先に居た唯一の生物である狼達に襲い掛かったという訳だ。


森と気配を同化させた状態で逃走中に何度か完全に視界を奪ったにも関わらず、どうやって自分を認識しているのか?


今の猪の反応から気配の偽装は完璧だと分かる。


これまでに何度も今追って来ている狼の魔物と同じ魔物とも遭遇した事は当然ミラフィアにはあった。


しかし、匂いも含めて偽装しているので気付かれなかったのだ。


なのに何故、今日に限ってこうも正確に捕捉されるのか?


それがミラフィアには分からなかった。


ただ、それを深く考えている余裕はミラフィアには無かった。


(く、苦しい……わたしの体力、ゴドリックの家まで持たないかも)


レベルが上がってステータスは上がるがHP、MP、ST(スタミナ)の値は上限値が上がるだけであり、全回復するとか増分だけ回復するとか、そういうのは一切無いステータスである。


STは休めば回復するのだが、今はその休む暇が無かった。


追って来ている狼達はもう残り3頭だけではあるが、たとえ1頭だけであってもミラフィアには荷が重過ぎる相手なのである。


狼達もミラフィアの体力が残り少ない事を理解しているようで、無理に距離を詰めることなく何か危険物を投げられても反応できるだけの距離を保ったまま、ミラフィアの体力が尽きて足が止まるのを待って追っていた。


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