迫り来る悪意の足音 5
「どうする、ゴドリック?」
エーゼルが姿を消した後、俺は背中に乗るゴドリックに聞く。
「手前はエーゼルにも生きていて貰いたい。故に手前はエーゼルに助力する!」
「危険だぞ?」
「無論、承知している」
「ミラフィアはどうする?」
「虫の良い事を言っているのは分かるが、シュラ殿とティアリエ殿にお任せしたい。手前が居ると保護が遅れてしまう。違うか?」
「ま、違わないわな」
ゴドリックが居ると遅くなる。
それは純然たる事実だ。
「であれば、共に向かうのは足手纏いとしかならないであろう。2人であれば安心してミラを任せることが出来る。どうか頼めないだろうか?」
真剣な目をしたゴドリックに問われ、俺とティアリエは互いに目を見合わせる。
そして、
「そりゃ」
「勿論」
「「良いに決まってる」」
当然、そう答えた。
「有り難う……!深く、深く感謝する!」
「礼を言うのはまだ早いよ?それを言うのは君もミラフィア君もエーゼル君も全員が助かってからだよ!」
「だな。俺達全員が全力を尽くせば危機的な状況をひっくり返せるかもだしな」
俺もティアリエもゴドリックとミラフィアとエーゼルの3人の事を気に入っていた。
だから、手助けするのは当然の選択であった。
全員が死んでほしくない眩い人物だからだ。
「じゃあ、作戦を立てよう!と言っても時間が無いから凄いアバウトにだけどね!」
まあ、今の状況ではそれも仕方ないだろう。
「ゴドリック君はエルフの隠れ里方面に向かって、エーゼル君の手伝い。私はミラフィア君の確保。シュラ君は……」
ゴドリックとティアリエの役割は正に妥当だ。
(さて、気になる俺の役目はどうなる?)
そんな事を思いながら耳を傾ける。
「森を出て平地にて向かって来る本隊の迎撃と殲滅。これをお願いしたい」
「なっ……!?」
それを聞いていたゴドリックが戦慄の声を漏らした。
対して俺は……
「了解だ。多少派手にやっても構わないよな?」
下手な気負いも無く、純粋に乗り気であった。
正直、反吐が出る輩なので当然と言えた。
「私の探知だと森の外には知的生命体は居ないみたいだし、環境を変える程じゃなければ好きにやって良いと思うよ。あれだけの大部隊が未帰還ともなれば連中だって下手に手出しをして来なくなると思うから取り逃がしが無い様にだけ注意して欲しい」
「了解、了解。その辺はバッチリやるさ」
隠れる場所が無いからこそ平地という選択なのだろう。
加減する必要が無いのであれば実に俺向きの役目と言えた。
前世からゴミ掃除を生業としてきた俺だ。
それに対する忌避感など今更持ち合わせてはいないのだ。
「ゴドリック君、君にはこれを身に付けておいて欲しい」
そう言ってティアリエがゴドリックに手渡したのはコインネックレスっぽい物であった。
「これは?」
「君の居場所が私とシュラ君に分かるようにする為の『魔力マーカー』さ。作戦中は持っておいて欲しい。私とシュラ君はそれぞれの役目を終えたらゴドリック君の方に加勢に向かう予定だから」
「ティアリエ殿はともかく、シュラ殿はそんなに早く終わらないと思うのだが……」
「いや、シュラ君は私なんかとは比べ物にならないレベルの化物だから開戦したら一瞬で終わるまであると思う」
ティアリエが真顔でそう言うと、ゴドリックがまじまじと俺の方を見た。
『強いのは知ってるがそれ程なのか』とか思ってるだろうな。
あの感じだと。
「化物とは心外だな?」
自分でもそう思わんでもないけど、空気を軽くしておく為そう言っておいた。




