七
「…あっ、そうだった、そうだった! 明日、俺は朝イチで蘇さんの宿屋に行って話を聞いて来るから。君らは、被らないように訪問出来る?」
そう游さんが言って立ち上がると、能も坦もハッとした様子で言葉を続けた。
「はい。それでは…一応、私は他の、小動物や人間を襲う大型動物がいないか探索をしてから参ります」
「じゃあ、俺も一応、虎挟みの探索範囲を広げてみますよ。ないとは思いますが。それと…南境国出身者が付近にいないか、それも続けて調べてみますよ」
私は2人の話を聞くと、自分も何かしなくてはと焦った。
「ぼ、僕も、何か…何かやります!」
それを聞いた周りに私は何故かほほえましい視線をもらったのだが、坦だけはため息交じりに私へ声をかけた。
「…分かった分かった。お前、俺と一緒に来な。游さん、能、いいでしょ。俺はそんな危険な探索しないし、見たり聞いたりしてもショックがないようなことですから」
「…そうだね。坦ちゃんなら大丈夫だね。一緒に行っておいで。能ちゃんも、それでいいでしょ?」
「えぇ。異存はありません」
坦の提案に游さんと能が許可をくれて、晴れて探索組に入った私は、やっと、ホッとした気持ちになれた。…と。そこで。
「じゃ、明日することは決まったね。もうこれで解散しよう。紫ーちゃん、お部屋に帰っていいよ。坦ちゃんも。ありがとね。能ちゃんも。帰って良いから…俺はここで少し考えをまとめてから出て行くから。このまま出て行って大丈夫だよー」
游さんは皆へ礼を言うと、自身はまた王座へ続く階段へ腰を下ろした。そして、2段目に座っていた私の頭をふっさりと大きな手でなでると、周りに優しい笑顔を向けた。
そうなると我々は解散せざるを得なかった。自然に皆、[[rb:雯月殿 > ぶんげつでん]]を出た。能は扉が閉まった後、振り返って雯月殿を眺め、それからすぐに静かに歩き出した。
能の方をうかがっていた私の後ろから、先を歩いていた坦が、彼へ苦々しい声で言葉をかけた。
「…美味かったかよ」
「………!」
「……今は指で満足してるがいいさ」
その言葉を聞いた途端、能は頬をカッと紅くして視線を厳しくした。
「俺は指だけじゃ満足しないぜ? 味わい尽くすさ。お前の妨害にも屈しないからな。
………じゃな」
坦は言いたいことを言い終えると、手すりを片手で押さえてそのまま体を浮かせ、サッと飛び越えた。片手には大事そうに小箱を握っていた。そして着地すると同時に軽い足音をさせながら離宮方向へ消えていった。
能は後ろ姿をしばらく見つめた後、私の目の前を無言で横切って、自室のある方向へ歩いて行った。
さて。
ここで私も自分の部屋に帰ってしまったからね。
次の日の話へ移ろうと思うが、よろしいかね?




