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クマに襲われた?

姉貴から花南たちが山で迷子になったと聞き、俺は身体から血の気が引いた。花南もまみも都会育ちで山の怖さを知らない、もうすぐ日も暮れる一刻も早く見つけ出さないと!


「Cafeの裏山に小さな滝があるでしょ?その辺りではぐれたらしいの」


あの滝の近くに居てくれればそんなに危険はないがパニックになって歩き回ったら?その先には崖がある、あの谷に堕ちたら命はないだろう。


「黒澤、とにかく行こう!」


「その滝からそんな遠くに行ったとは思えないですよね?危険な場所なんですか?」


「歩き回って奥まで行くと谷がある危険だ……」


「まみじゃわかんねぇけど花南が一緒だ、パニックになる事は絶対にない」


秋月の言う通りかも知れない。花南のことだ必ず何処か安全な場所を見つけてじっとしているはずだ。俺はこの数か月ずっと花南を見てきた、彼女は感情に流されて意味なく行動する女じゃない。常に本当の自分を隠し強がって生きている、そんな気がする。本当の花南がどんな女なのかそれはまだ俺にもよく分からないが……


「秋月達はココで待機していてくれ、素人が暗くなった山に入るのは危険だ」


「わかった……なんて俺達が言うわけねーだろボケッ!お前から離れねぇから心配すんな」


「もし二人がケガしていたらどうしますか?一人で二人を抱えることは無理ですよ、僕達も行きます」


「わかった、絶対に俺から離れるなよ?」


花南たちがいなくなった滝の辺りから姉貴と秋月・俺と藤咲に分かれて探すことにした。一時間経ったら広場に戻りまた別なルートから捜索しようという姉貴の提案だった。そして1時間後……


「この近くで見つからないと言う事は私達だけじゃ無理だわ、叔父さん達にも応援を頼みましょう」


それがいいだろうと思った時だった、三人のスマホが一斉にライン着信音を告げた。


「まみだっ!」


姉貴がまみから送られてきた何枚かの画像を見つめじっと考えている。


「イワナシにミズに山ブドウ、この花が今こういう感じで咲いていて、この景色が見える場所」


「姉貴?」


「わかった!たぶんあの辺りだわ。あの場所だとしたら少し車で移動して回りこんでから上った方が早い、みんな車に乗って!急ぐわよ」


まみが今いる周りの景色と目に入る植物を知らせてくれたお蔭で、姉貴にはその場所がわかったようだった。花南・まみ無事でいてくれ!


「しかしなんだな、さすがまみだな?」


「ん?」


「こんな時でも食い物だぜ?何が役立つかわかんねぇよな、あはは」


「黒澤くん?そんな顔しなくても大丈夫です。あの二人の事ですから今頃のんきに山の景色を眺めていますよ?」


「あぁ……」


クマに襲われてないだろうか?どこか怪我して動けなくなってるんじゃないだろうか?俺は二人の無事をこの目で確認するまでは安心できないと思った。


挿絵(By みてみん)


「行くわよ、三人とも私から離れないでね?」


「姉ちゃんの体力より俺達のが上に決まってんだろ、なに言ってんだよ」


と言えたのは最初のうちだけで、ひょいひょい♪と軽やかに斜面を登っていく姉貴に俺たちは息を切らしながらついて行くのが精いっぱいで、何とも情けない男子三人であった。


「きぁぁぁぁ!いやぁ!アッチいってー!こないでー!」


上の方から悲鳴が聞こえ俺たちは一瞬みんなで顔を見合わす。まみの声だ!なにかあったんだ!俺は姉貴を追い越し必死でその声の方に向かって走り出した。無事でいてくれ!


「まみっ、そんな走り回らないで!落ち着いて!」花南の声も聞こえてくる、騒いでいる二人の声がだんだん近づいてきて……


「花南!まみっ!」


俺はようやく二人を確認した。花南に抱きついて泣きじゃくっているまみ、辺りにクマがいるのかっ!とにかく俺は二人を抱きかかえ周りを見回した。


「二人とも大丈夫か?」


「カエルー!カエルがいたのぉー怖いよぉ」


「へっ?カエル?クマじゃなくて?」


どうやらまみは座っていた自分の足元にピョン♪とカエルが跳ねたのをみて大騒ぎで走り回ったらしい、人騒がせな奴……


挿絵(By みてみん)


無事に二人を保護し俺たちはcafeに戻った。義兄の淹れてくれたコーヒーを飲みやっと一息つけた。


「ご心配おかけしました、勝手な行動をとり申し訳ありませんでした」


「いやいや君たちが悪いわけでも誰が悪いわけでもない、こうして無事に戻れたんだ終わり良きは全て良しだよ」


騒いていた原因がカエルだったとは呆れてものが言えねぇよと秋月にからかわれ、花南まみコンビは最強ですねと藤咲に褒められ?俺たちに笑いが戻った時、姉貴につれられて杏が下を向いたままやってきた。


「お姉さんたち……ごめんなさい」


「杏ちゃん……」


「私達こそ勝手にあの場所を離れてしまってごめんなさいね」


杏は下を向いたままぎゅっと唇をかみしめている、この子は桃と違って気が強いとこがあるが人に意地悪したりする子じゃない、生まれた時からみてきてるんだそれくらいはわかる、なのになぜだ?


「杏、なんでこんなことになったんだ?お兄ちゃんにちゃんと説明してくれ」


「……」


「なんでこんな事になったんだと聞いている。地元の人間だって油断すればこういう事になる、お前がそれを知らないわけないだろう!」


何度聞いてもだんまりを決め込んでいる杏に苛立ち、俺はつい声を荒げ怖い顔をして杏を叱りつけた。


「黒澤君、私が、えっと……私がアッチに食べ物があるーって走り出しちゃって、その……それで迷子になって、それで花南も私を追いかけてきて、二人で迷子になっちゃって、だからごめんっ!」


まみは明らかに嘘を言って杏を庇っている、なぜだ?なんで初対面の杏をこんな庇うんだ。花南たちが迷子になった事と杏がなにか関係しているのか?さらに俺が杏を問い詰めようとした時。


「まみなら食い物追いかけて迷子になるってのあり得るな!あははっ。黒澤?二人とも無事だったんだ、そんなにその子を責めるな」


「そうですよ。二人とも無事だったんですから、今はこの美味しいコーヒーを堪能しましょう」


二人にそう諭され、花南を見ると「これ以上は何も聞かないで」と言う顔をしていたので、俺は仕方なくその場をひいた。



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