40話
王都に着くまでの日程は順調に消化されていた。
馬車内ではそれぞれがもらったチートについて会話がされていた。
「皐月は魔法使いの才能・極か、一体どんな効果があるんだ?」
エフィムの問いに皐月は無い胸を若干そらして言う。
「どんな魔法でも使えるようになるわ、無詠唱でね。それに魔法の威力が倍になるの」
無詠唱で全魔法使用可能か。
それに威力も倍になる。強力だな。
「強力なチートだな」
「それだけじゃないわよ。このチートの最大の特徴は、魔力切れを起こさない点なの」
魔力切れを起こさないだって?
本当にチートじゃないか。
「庄治のチートは何なんだ?」
「俺のはこれさ」
庄治はそういって巨大なバスターソードを見せた。
「そのバスターソードが?」
「ああ、このバスターソードを握ってる限り、俺は無敵になれる」
無敵に?
どういう意味だ?
「具体的には?」
庄治は思案気に答えた。
「そうだな……例えば敵に攻撃されても傷は負わない。それに筋力増加がされていてこんな巨大な剣なのに紙を振るうくらい軽く感じる。後はスタミナ切れを起こさないって所か」
なんと、文字通り無敵になれるのか。
これも強力無比なチートだ。
「因みに雄治のはそのスマフォで合ってるんだよな?」
「ええ、そうですよ。お二人のと比べると大分見劣りしちゃいますけど」
雄治が恥ずかしそうに言う。
だが、そんな雄治の言葉に二人は苦笑いを浮かべた。
何かおかしなところでもあっただろうか。
「二人ともどうしたんだ?」
俺の問いかけに皐月と庄治はさも可笑しそうに笑うのだった。
何だ、どうしたんだ?
「おい、詳しく話せ」
俺は雄治に詰め寄った。
「いや、本当に大したこと無いんですって! ステータスが弄れるくらいで――」
「それだよそれ!」
「そうよそうよ!」
雄治の言葉を遮って皐月と庄治が言う。
「エフィム、こいつのチートはな、人の能力を数値化して見れることも含まれるんだが、何より自分の数値を弄れることにあるんだ」
「それにね、女神様の祝福の才能って奴が勇者の才能って言ってね、魔法に剣に何でもござれなのよ?」
「なんと――」
二人の言葉に思わず声が出てしまった。
何と言う強力なチートだ。
流石は勇者様といったところか。
「そ、そういうエフィムさんの才能って奴は何なんですか?」
照れ隠しにだろう、露骨に話題を変えてきた雄治に、エフィムは仕方なしに付き合ってやることにした。
「俺のは強靭な精神力という」
エフィムの言葉に三人はポカンとした表情をした。
「それだけ、ですか?」
雄治の確認の言葉に頷くエフィム。
「それだけであんなに強いのか」
「種族適正ってものじゃない?」
王都に着くまでにこんな会話が交わされていた。
そして王都である。
馬車は王城の前で停止した。
次々と降りていく面々。
エフィムもそれに倣って付いていく。
数十分も歩いただろうか、到着したのは謁見の間だった。
そこには椅子に腰掛けた国王がいた。
「おお、勇者よ。此度の大海嘯鎮圧も見事であった」
「いえ、今回は俺は何も出来ずじまいで――勲功はすべてエフィムさんにあります」
その言葉に王の視線がエフィムに向けられる。
「そうか、新たな勇者が勲功を立てたか。それはめでたい」
「ハハッ、いえ、何も無我夢中で戦っていたら手に入ったようなものでして」
「謙遜するでない」
王は愉快そうにそういった。
「では今晩はゆるりと休むがよい」
王のその言葉を皮切りに謁見の間からエフィムたちは退出した。
「ふー、何度やっても慣れないね」
愚痴のように雄治が呟く。
「何事も慣れだ。そのうち気にならなくなる」
そういったのはエフィムだった。
「そういえば、エフィムさんは貴族でしたね。通りで動じないわけだ」
雄治が羨ましそうに言う。
「あんたは肝っ玉がちっちゃいのよ。堂々とすればいいのよ、堂々と」
皐月が雄治の肩を叩きながら言う。
庄治も続く。
「そうだぜ。俺たちは勇者なんだ。この世界の希望なんだぜ? もっと胸を張れよ、勇者様」
その言葉に、雄治は若干だが胸を張った。
「そうだね、俺たちが魔王を倒さないとこの世界は壊れてしまうんだ。愚痴みたいなこと言ってごめんよ」
そうして一行は寝室へと向かった。
そこで驚いたのはエフィムだ。
何と個室ではなく、皆が一つの部屋で寝泊りしていたのだ。
「何故個室じゃないんだ?」
エフィムの素朴な疑問に答えたのは雄治だった。
「何時ご神託が下るか分からないからね。王様に頼んで一つの部屋を寝室にしてもらったんだ」
「なるほど」
言われて見ればその通りで、ご神託が下るたびに皆を起こしてまわっているのは非効率だ。
それにご神託だけではない。大海嘯が発生しそうになるときも同様だろう。
後は、同じ部屋で寝泊りすることで結束を高める意味合いもあるのだろう。
「それじゃあ改めて、今日からよろしく頼む」
エフィムはそういって頭を三人に下げた。
「ああ、期待しているよエフィムさん」
真摯な言葉を語るのは雄治だ。
「くれぐれも足を引っ張りましたなんてことのないようにな。まあ、迷宮の主を一人で倒せる豪傑だったらそんなことも無いだろうがね」
少しふざけて語るのは庄治。
「私が女だからって変な気は起こさないようにね。魔法で消し炭にしちゃうわよ」
恐ろしいことを語るのは皐月。
皆、これから絆を深めていく大切なパーティメンバーだ。




