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煙草一本  作者: 若旦那
中等部編
34/45

33話

「先ずは、お集まりいただき感謝申し上げる」

 サイヤーン神聖王国城内の一室で、サイヤーン国王は近隣から集まった王達に頭を下げていた。

 その数実に九人。九カ国の首脳達が雁首そろえて座っている。

「早速本題に入ろう。問題は魔王復活とそれに伴う魔物、モンスターの活発化だ」

「それについては我らもみな頭を悩ませていることよ」

 ジョゼール共和国議長が他国の王達を代表していった。

「我が共和国も現在大海嘯が発生しておるし、他の国々も似たような現状だ。この際は各々過去の遺恨は捨て、団結してことに望むのが最上と心得るが如何」

 ジョゼール議長の言葉に各国の首脳陣から賛成の声が上がる。

「ジョゼール議長、忝い」

 そういってサイヤーン国王は頭を下げた。

「何、気にすることはあるまい。世界の危機なのだ」

 世界の危機。なんとありふれた言葉だろうか。

 だが、その危機は確かに各国を疲弊させていた。

「現在、我が宮廷魔法使いによる勇者召喚の儀が執り行われている。皆様方にも是非立ち会っていただきたい」

 サイヤーン国王はそういうと九カ国の首脳陣を連れて一室を後にした。

 場所は移り、城内のある一室に王たちは連れてこられていた。

「ここで行われるのか?」

「分かりかねる」

「だが床に魔方陣があるぞ」

「おお、まことだ」

 王たちは所在無さ気に囁きあっていた。

「皆様方、これより召喚の儀を執り行います。ご静粛に」

 サイヤーン国王の言葉に囁きあいは止んだ。

 それと同時に、五名の魔法使いが部屋に入ってきた。

「皆のもの、頼むぞ」

「お任せ下され」

 サイヤーン国王の言葉に返事をした魔法使いたちは、それぞれが所定の位置に付くと詠唱を始めた。

「神よ、神よ、我らが暁の女神よどうか我らの願いを聞き入れたまえ……勇者をここへ、勇あるものを誘いたまえ……サモンズ!」

 魔法の言葉と共に部屋中が明るくなった。魔方陣が輝いているのだ。

 その光が収束すると同時に、魔方陣の上には一人の青年が立っていた。

「あれ? 俺は確か死んだはずじゃあ――」

「おお、勇者様!」

 青年の独り言を遮って、サイヤーン国王は青年の手を握り締めた。

「う、うお!? だ、誰ですか? と言うより、ここはどこですか? 天国? 地獄?」

「貴方様は勇者なのです。ここはカリスエ、どうか世界をお救い下され勇者様」

「勇者様!」

「勇者様!」

 皆が皆、目の前の奇跡に熱狂していた。

 一人その輪から外れているのは召喚された青年のみだった。

 そして時と場所は移り、冒険者養成所へ――。

「勇者様への御前試合?」

 朝食の時間帯、珍しく四人揃った場でエリクは首を傾げて見せた。

 勇者様というのは一年前に突如として現れた青年であった。

 現在次々と迷宮を踏破している、世界の救世主である。

「何で今更?」

「さあ、詳しいことは俺にも分からないよ。ただ、何で今更ってのは同感だね」

 話題を持ってきたラインも詳しいことまでは知らないらしい。

「だれぞ勇者パーティで欠員が出たんじゃないか?」

 ゼルブが妥当な意見を出す。

 確かに勇者一人で迷宮に潜っているわけではないから可能性としては尤も高い話だ。

 だが、勇者のパーティメンバーと言えば腕っこきが揃っているのは当然で、わざわざ養成所の生徒を見るまでもないと思うんだが。

「まあ、出る出ないは個人の自由だし、ゼルブとかエフィムは出てみたら?」

「そういってお前は何で出ないんだよ」

「俺はほら、柄じゃないし」

「何言ってやがる、本当は出たくてうずうずしてるんじゃないのか?」

 ゼルブとラインはじゃれあっている。

 でもそうだな、出てみれば何故俺が勇者の祝福持ちなのか分かるかもしれない。

「出てみるか――」

 俺の呟きに反応したのはエリクだった。

「エフィム君、パーティやめちゃうの?」

「時と場合によっては、そうなるな」

 その返答に、エリクの眦に涙が浮かぶ。

「いやだよ、出ちゃ駄目!」

 突然のエリクの豹変にエフィムはどうしたら良いか分からなかった。

「エリク、突然どうしたの?」

「おい小娘、仲間の晴れの舞台になるのかも知れんのだぞ? 何も泣くことはあるまい」

 ラインとゼルブが宥めにかかる。

「やだったらやだ! エフィム君はずっと僕たちのパーティにいるの!」

「エリク!」

 エフィムは駄々をこねるエリクを一喝した。

「俺たちは今年で卒業だ。最後の晴れ舞台ぐらいいいだろう? それに、何故俺が勇者の祝福持ちなのか分かるかもしれない。これはチャンスなんだ、聞き分けてくれるな?」

「――うー……」

 エリクは唸り声を上げただけで、黙りこくってしまった。

 その反応に三人は苦笑いを浮かべるのだった。

 時は移り、御前試合前日。

 エフィムは一人、自室で紫煙を燻らせていた。

 明日はいよいよ御前試合か。

 完全装備での決闘になるから、相手を殺さぬように気をつけねばなるまい。

 それにしてもゼルブやラインも結局は出るというのだからお祭り好きに違いない。

 エリクはあれ以来沈んだままだし、俺のパーティもどうなることやら。


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