15話
夕食後、各自部屋に案内された。
インペリアルトはそのまま部屋に戻ってからすぐに
タンザナイトの部屋へと向かった。
ノックをすると、すぐにアレキがドアを開けてきた。
「今、いいだろうか?」
「あぁ、ルベライトの話ならすぐに話せ」
夕食時からずっと苛ついているのが機嫌が悪そうだ。
インペリアルトは前置きをしてから、ここで見てきた
事を話したのだった。
深夜に見た牢の中のルベライトは、身体中鞭打たれて
ぼろぼろになっていた事や、数日前に慌てるように
牢から引きずられるように出された事。
今、いるであろう端の部屋のあまりに汚い部屋で眠っ
ている事。
そして……。
最近、ことある毎に変わるがわる医師が来ている事な
どを上げたのだった。
「それで、今もその部屋にいると?」
「はい、多分ですが……」
「そうか……もう少ししたら見回りがくるだろう。そ
の後に会いに行こうか。アレキ、いいな?」
「はい、わかっております。もし、ルベライト殿に何
かあった場合は……子爵の責任をとっていただきま
しょうか」
「そうだな。私の妻になる者に怪我を負わせた代償は
高くつく事を思い知らせてやろう」
あまりに不敵に笑うので、一瞬ぞっとした。
が、それよりも聞きなれない言葉を耳にした気がした。
「タンザナイト殿下……妻とは?」
「何を言っている。ルベライトを我が妻にと言っている
のだ。これでルベライトには誰も手を出せないだろう」
多分、これは本気で言っているのだろう。
男を妻に娶るという事の意味。
それは王位継承権を自ら手放すという事なのだ。
アメトリン殿下には婚約者がいる。
もちろんタンザナイト殿下にもいたにはいたのだが、
ルベライトが色々と過去に嫌がらせをしたせいで今
では空白になっている。
まさかそこにルベライトが入るとは思ってもいなか
っただろう。
いや、ルベライトだけはわかっていたのだろうか?
しかし、問題がある。
それは王族の妻となった者の実家が問題なのだ。
ファールマン子爵家は伯爵を飛ばして侯爵になる
だろう。
そうなると、裏で悪事を働いていたファールマン
家についていた貴族達が盛り返しを始めるだろう。
そうなると、国内が混乱して他国につけ入り隙を
与えてしまいかねないのだった。
カチカチと時計の針の音が響く中、廊下を見回る
靴音が響いていく。
「では、そろそろいきましょうか」
アレキがそう言ってドアをこっそり開けると廊下
を確認した。
「その前に、少し別の部屋にもよっていいか?」
「それはどこに?」
「ルベライトの部屋だ。あそこには色々と思い入
れがあってな」
タンザナイトは迷う事なく真っ直ぐな足取りで部屋
に向かった。
そこはただ、静まり返っていた。
灯りを灯すと、まだ片付けていない血に染まったま
まのシーツが置き去りにされていた。
タンザナイトはそれを見て一瞬眉を顰めたが、すぐ
にクローゼットを開けた。
奥にしまってあった古い小箱を取り出すと中を開け
る。そこには海で取れる小さな貝殻が入っていた。
「これは……」
「昔私があげたものだ。いつかは実家に取りに行く
と言っていたのでな」
大事に奥にしまっておいたのだろう。
それだけ取り出すと部屋を出たのだった。




