5月
5月1日 土曜日
山「よ!」
赤「・・・何しに来た」
山「おいおい、こっちは客だぞ」
赤「ここは山奥の秘湯じゃあないんだ。猿が入っていいわけがないだろ」
山「殺すぞ」
赤「座れよ」
山「マスターいつもので」
赤「気取るな。ハニージンジャーパイと炭酸水でよかったか」
山「よくわかってんじゃねーか」
赤「言ってろ」
赤「ホレ」
山「・・・バカすぎる。なんでこんなに旨いんだ」
赤「はっ、当然だろ。んで何しに来たんだ?」
山「親父の手伝いだよ」
赤「あぁ、パワポか」
山「テスト週間だけどまぁ、仕方がない」
赤「・・・そうだな。クッキーでも食べるか?」
山「タダか?」
赤「出世払いでいい」
山「さんきゅ。この店ジュースさえあれば完璧なんだけどな。わざわざ俺のために炭酸水買うのも億劫だろ。なんかコーラとか置くつもりないの?」
赤「・・・善処する」
山「・・・・・・お前、なんかあった?」
5月2日 日曜日
赤『そういえば、店来た時にもらったマドレーヌ、おいしく頂いたよ。ありがとう』
麗『どういたしまして』
赤『もしかして手作りだった?」
麗『どっちだと思う?』
赤『・・・店売りだと思っとくよ。とにかくありがと』
麗『うん。ちゃんと毎日勉強してる?』
赤『どっちだと思う?』
麗『しててほしいな』
赤『じゃあ、ご期待には沿えなかった。とだけ』
麗『え』
赤『もう10時だよ。いい子は寝る時間だ。夜更かしはお肌が荒れるよ』
麗『誤魔化さないで。勉強したの?』
赤『おやすみ』
麗『こら』
5月3日 月曜日 憲法記念日
茜「あれ、山口」
山「あれ、上地だ」
茜「何してるの?」
山「赤羽に頼まれて買い出しだな」
茜「あの店、赤羽が好き勝手に営業してるの?」
山「そうだったはずだよ。マスターがたしか赤羽と仲良しで、税金対策の店を赤羽にあげたって感じだったはず」
茜「へー、よく行くの?」
山「程々に行くよ」
茜「仲良しだね」
山「まぁ、小学校からずっと一緒だし」
茜「幼馴染みってわけか」
山「阿比留と上地は?」
茜「いや、1年の時に私が話しかけたんだよ」
山「そうなんだ」
茜「麗ちゃん、私が話しかけたときすっごいびっくりしてたな」
山「そうなんだ」
麗「それは茜ちゃんの声が大きかったからだよ」
茜「わ!びっくりした」
麗「ごめんね、ちょっと遅れて。山口もおはよう」
山「おはよう、2人で遊ぶの?」
茜「そうだよ、一緒に来る?」
山「いや、そろそろ赤羽の機嫌が悪くなるし、帰るよ」
茜「そっか、また遊ぼーね!」
山「ばーい」
麗「赤羽の機嫌が悪くなる?」
茜「なんか頼まれて買い出ししてるんだって」
麗「ふーん。じゃあ、行こうか。どこ行く?」
茜「靴屋さん!」
5月4日 火曜日 みどりの日
茜『ねぇ、麗ちゃんの誕生日って知ってる?』
赤『寡聞にして存じ上げてないぜ』
茜『5月20日だよ』
赤『それを俺に言ってどうするの?まさかプレゼントを用意しろと?』
茜『察しがいいね』
赤『悪いのは運だったな』
茜『ちなみに山口と赤羽の誕生日は?』
赤『山口は7月15日』
茜『赤羽は?』
赤『初夏の晴れた昼下がり、私は生まれたと聞きました』
茜『アンマーじゃん』
赤『内緒だ』
茜『なんでよ!』
5月5日 水曜日 こどもの日
麗『誕生日はいつなの?』
赤『女子って耳が早いよな』
麗『なんのこと?』
赤『上地さんに聞くように言われたんでしょ。俺そういうのに詳しいんだ』
麗『え?』
赤『え?』
麗『茜ちゃんからはメッセージも来てないし、なんにも言われてないよ』
赤『うーん、墓穴』
麗『じゃあ、どういうことか聞こうかな』
赤『墓の上でタップダンスしないでくれ』
麗『それを日本では盆踊りって言うんじゃないかな?』
赤『まぁ、俺の誕生日は内緒だ』
麗『なんで隠すの?』
赤『それも内緒だ。遺書に書いとくよ』
麗『気が向いたら教えてね』
赤『茶柱が立ったら教えるよ』
5月6日 木曜日
麗「明日テストだけど、余裕?」
赤「任せて欲しい。給水地点も確認したし、靴紐も靴も新調した」
麗「池の周りを走る兄弟だけがテストに出るとは思わないなぁ」
赤「任せろ。自転車で忘れ物を届けるイメージトレーニングもしてある」
麗「その2つがもしテストに出てきたら、平均点80点超えちゃうよ」
赤「冗談だ」
麗「んで、勉強はちゃんとしてたの?」
赤「ああ。泥を塗らないように頑張るよ」
麗「そんなに気負わなくて大丈夫なのに。大丈夫赤羽は頭がいいよ」
赤「・・・もし」
麗「なに?」
赤「・・・もし俺が阿比留さんよりいい点取ったら、なんか奢ってくれるか?」
麗「うん。勿論。じゃあ、赤羽が私より点が低かったら、私のことは阿比留って呼んでね」
赤「じゃあ、いいや」
麗「あ、逃げた」
5月7日 金曜日
山「どうだった?」
茜「うん、完璧だね。普通に90点ありそう!山口は!」
山「うん、完璧に赤点だ」
茜「あははっ」
山「笑い事じゃあないんだよなぁ」
茜「じゃあ、土日一緒に勉強する?」
山「いいね。どこ行く?赤羽の店?」
茜「流石に土日はテスト期間中はしてないでしょ」
山「ところがどっこい」
茜「えぇ・・・。まぁ、普通にこの前4人で行った喫茶店行こうよ」
山「お、もしかして物理教えてくれるのか?」
茜「勿論。赤点取ったら一緒に遊べなくなっちゃうし」
山「じゃ、明日のお昼集合で」
茜「ノートとペン忘れちゃだめだよ!」
5月8日 土曜日
赤「いらっしゃ・・・」
麗「ほんとに働いてるんだ」
赤「誰から聞いたの?」
麗「茜ちゃん」
赤「やっぱ女子って口軽いよ」
麗「はい、これあげる」
赤「別に来るときに何か持ってこないといけないってわけじゃあないぜ」
麗「別に手慰めだし気にしなくていいよ」
赤「ふぅん。なに飲む?」
麗「・・・マスターのおすすめは?」
赤「レッドブル。お手製のクッキーを添えて」
麗「あははっ、頂こうかな」
赤「じゃあ、この贈り物は頂こうかな」
5月9日 日曜日
山「なるほど。重さは浮力に影響しないんだね」
茜「やっとわかってくれた!本当に長かったよ」
山「んで、表面積が浮力になるんだ!」
茜「ちがーう!」
山「なんだよもう!何が浮力だ!」
茜「だから、水に入った部分の体積分、浮力が働くの!」
山「んーと水に入ってる体積が、10×2×6の120。答えは120!」
茜「惜しい!それで重さと比較してこの物体Xが水に浮くのかどうか比べるの!」
山「わかった!沈む!」
茜「なんで!」
5月10日 月曜日
山「上地さん上地さん!俺赤点取らなそう!」
茜「ほんと!やったぁ!」
山「大問4まで全部解けたんだ!」
茜「すごいじゃん!」
山「本当に助かったよ!上地ありがと!」
茜「ん、どういたしまして・・・」
山「じゃあ、明後日の英語も教えてくれ!」
茜「まったく、しかたがないなぁ」
5月11日 火曜日
山「んでよー上地が俺を避けてる気がするんだ」
赤「知らん。ん、釣れた」
山「くっそ調子いいなお前」
赤「まぁね。そっちは何匹だ?」
山「2」
赤「俺4。今日もお前の奢りか」
麗「・・・何してるの?」
山「・・・」
赤「げ」
茜「そーだそーだ!なにテスト期間中に遊んでんの!」
赤「遊んでない。環境保護のボランティアだ。特定外来種のブラックバスを釣って地域貢献だ」
麗「ふふふ」
茜「嘘つけ!」
山「上地も釣る?」
茜「・・・じゃあ、やってみようかな」
赤「阿比留さんも、ほら」
麗「えーと、こうであってるかな?」
5月12日 水曜日
麗「今回の英語、難しかったね」
赤「そうか?」
麗「だってほら、あそこの2人悶えてるよ」
赤「知らん知らん。アイツが英語教えてって連絡来て、魚釣りながら文法とか教えてたのに、アイツ聞き流しやがったからな。てか上地さん英語苦手なの?」
麗「たしかそうだよ」
赤「ははっ、話し上手なのは英語力を代償としてるのかな」
麗「君は代償を払ってないね」
赤「よせよせ」
5月13日 木曜日
赤「マジで助けてください」
麗「・・・まぁ、次のテストは生物だもんね」
赤「大体おかしいだろ!俺らは文系なんだぞ!」
麗「いや、生物は一番文系に近しい理系じゃないかなぁ・・・」
赤「本当に助けてください。俺が生物で知ってるワードはメンデルとボルボックスだけなんだ」
麗「・・・じゃあ、メンデルは何した人なの?」
赤「えーっと、エンドウ豆で実験した人だよね」
麗「うん、運よく今回の範囲はその遺伝の問題だよ。じゃあ、進化の種類って何がある?」
赤「名前がわかんねーんだよなぁ・・・確か必要だからできたやつと、不要だからなくなったって感じだったよな」
麗「・・・教えてあげようかなって思ってたけど、多分赤羽なら大丈夫だよ」
赤「・・・見捨てないでくれよぉ」
麗「じゃあ、家で頑張ってね!」
赤「酷い」
5月14日 金曜日
麗「今日でテスト終わりだね。みんな勉強した?」
茜「うん。生物は得意だし、歴史も苦手じゃないよ」
山「大丈夫。覚悟はしてきた」
赤「大丈夫。遺書は書いてきた」
麗「ほんとにもう・・・」
茜「せっかくこんないい高校に入学できる頭があるのにもったいないよ!」
山「宝の持ち腐れってやつか」
赤「宝を持ってから言えよ」
山「なんだと!このメンデル野郎!テストに出たらうっかりメンデルスゾーンって書く呪いをかけてやる!」
赤「やったな!三角貿易のことを三角形貿易って書く呪いでお返しだ!」
茜「・・・そんなこと言ってる暇あったら教科書読んだら?」
赤「テスト週間になんで教科書を持ってくるんだ?」
山「そうだよ。せっかくリュックが軽い1週間なんだから」
麗「・・・」
茜「・・・赤点取ってもしーらない」
5月15日 土曜日
山「テストどうだった?」
赤「このバケツの中の通りさ」
山「満杯じゃねーか!いい点取れそうなのか?」
赤「まぁな」
山「てめぇ!」
赤「お前はどうなんだ?・・・っとまた釣れた。絶好調だ」
山「英語と古典がマズい」
赤「よっと。つまりいつも通りってわけか」
山「お前こっそり勉強すんなよ」
赤「いや、堂々と勉強した」
山「クソが!」
赤「・・・また釣れた。どうなってるんだ今日は。もう俺の勝ちでいいな?」
山「ちくしょー!餃子しか奢らん!」
5月16日 日曜日
山『赤点取ったら、助けて戴けませんか?』
茜『すでに赤点取ってそうだね』
山『なんでや!』
茜『戴くの漢字がもう違うもん。頂くだよ』
山『え』
茜『まったくもう。釣りなんかして遊んでるからだよ』
山『上地だって遊んだじゃねーか』
茜『私も麗ちゃんも普段勉強してるの。君たちと違って』
山『まるで勉強をしてないみたいにいいやがるな』
茜『してたの?』
山『してない』
茜『ほんとにもう、ほっとけないなぁ』
5月17日 月曜日
赤「ばーん、96点」
麗「・・・・・・」
赤「はっはっは、現代文では負ける気がしないねぇ」
麗「・・・負けた。79点」
赤「にゃっはっは、じゃ、山口に自慢してくる」
麗「・・・」
赤「何点だった?何点だった?」
山「うっざいなぁ・・・58点」
茜「なんと81点」
山「見てよあのドヤ顔・・・」
茜「・・・何点だったの?」
赤「はっはっは96点だ」
山「クソ野郎!」
茜「えっ!赤羽って頭いいの?」
赤「どうとでも言え!今日の俺は有頂天だ!」
5月18日 火曜日
山「なんで今日学校サボらないといけなかったんだ?しかも俺まで巻き込んで」
赤「理由はまぁコーヒー飲みながら教えてやる。本当に思い出せてよかった」
茜「今日、2人来てないね」
麗「うん。赤羽が休むとは思えなかったからな」
茜「どーせサボりだよ!」
麗「そうかもね。まぁいいや。テストどうだった?」
茜「英語がやっぱりよくないよ。66点。麗ちゃんは?」
麗「80点」
茜「さっすが!」
麗「・・・・・・」
5月19日 水曜日
茜「なんで昨日サボったの?」
山「んーと、阿比留の誕プレ選んでたんだよ」
茜「!」
山「俺は決めたけど、あのチンピラまだ迷ってたから、今日もショッピングモールにいるはず」
茜「・・・!」
麗『ねぇ、大丈夫?』
赤『大丈夫だ、問題ない』
麗『神は言っている。寝言は寝て言えと』
赤『おたくの神様は手厳しいな』
麗『テストの勝負忘れてないよね?』
赤『それは、俺が辞退したはずだろ』
麗『辞退を却下しました』
赤『どういう字体の事態だよ』
麗『明日は来るの?』
赤『信じてくれたら、ウルトラマンは帰ってくるさ』
麗『・・・ばか』
5月20日 木曜日
麗「おはよう」
茜「おっはよ!これ誕生日おめでとう!バスボムだよ!」
麗「ありがと、今日使うね」
山「ん!おはよう!そしておめでとう!これがプレゼント!」
麗「え!ありがとう」
茜「なになに?」
山「何がいいかわかんなかったから、ふりかけだ!」
麗「・・・」
茜「・・・」
山「じょ、冗談だよ、静まらないでくれ」
麗「・・・わぁ、タンブラー!」
山「あげたあげた。俺の誕生日は7月の15だからね!」
茜「ちゃっかりしてんなー」
山「・・・あれ?あいつは?」
麗「・・・いないね」
茜「・・・?」
山「・・・!・・・!」
茜「!!」
麗「・・・なーんだ」
赤『俺の店まで来てくれ』
麗『ん』
赤「いらっしゃい」
麗「・・・」
赤「いや、色々迷っちゃってさ。とりあえずなんか作るから座ってよ」
麗「・・・・・・」
赤「あの・・・」
麗「すごい心配したよ」
赤「・・・」
麗「すごい嬉しいけど、そんなに派手じゃなくていいよ。ありがとね」
赤「・・・ただの自己満さ」
麗「今日のメニューは?マスター」
赤「ハニージンジャーパイとキャラメルラテ」
麗「うん、頂くよ」
赤「生憎ろうそくはないんだ。我慢してくれ」
麗「大丈夫だよ。うん、おいしいね、ありがと」
赤「や、こんなんはプレゼントじゃない。プレゼントはこれ」
麗「・・・!開けてもいい?」
赤「勿論」
麗「・・・・・・!」
赤「気に入らなかったら返品してくれ」
麗「赤羽」
赤「ん?」
麗「ありがと。大事に使うね」
赤「ん・・・使い潰してくれ」
5月21日 金曜日
麗「・・・・・・♪」
茜「おはよ!ごっきげんだね!」
麗「ん、おはよ」
茜「何貰ったの?」
麗「これとこれとこれ」
茜「うわぁ・・・可愛い。しかも上質そう。いいセンスしてるね」
5月22日 土曜日
山「結局、お前何贈ったんだ?」
赤「・・・気障で取るに足らない物だよ」
山「いいから教えろって」
赤「お前がタンブラーにするとか言い出したから死ぬほど迷うハメになったんだかな」
山「知らねー。んで何にしたんだ?」
赤「取るに足らないけど、毎日使うものさ」
山「・・・・・・?わからん」
赤「一生そのちっちゃな脳みそで考えとけ」
山「この野郎!」
5月23日 日曜日
赤「兄上。お伺いしたいことがあります」
兄「なんだ?」
赤「兄上はどんな風に告白をしましたか?」
兄「・・・それを聞いてどうする?」
赤「鼻で笑います」
兄「死ね。罰として今日の晩飯は貴様だ」
赤「いつもそうだろ」
兄「冗談だ。お前は馬鹿じゃない。お前がイケると踏んだならイケるんだろう。だが、打算で愛を伝えるな」
赤「?」
兄「男たるもの、正しくあれ。私からは以上だ。わかったなら飯作ってこい。海老フライな」
赤「・・・手間がかかるものを要求しやがって」
5月24日 月曜日
茜「ねぇねぇ、何位だった?」
山「クラスで29位」
赤「流石だな。お前には敵わん」
山「うるせー!3人はどうだったんだ?」
茜「なんと私11位」
山「凄い!偉い!」
茜「でしょでしょ!麗ちゃんは?」
麗「うーん、2位。悔しいなぁ」
山「・・・ということは?」
茜「嘘でしょ!?」
赤「何そんなに期待してんだよ。普通に20位だよ」
山「なーんだ。お前も大したことないな」
赤「はっ、言ってろ」
茜『ほんとは何位だった?』
赤『なにをそう期待してるんだよ。20だよ』
麗『嘘はよくない』
赤『なんのことやら。阿比留さん』
麗『負けたとしたら、私のことは呼び捨てだよ』
赤『サレンダーしたんですけど・・・』
麗『私君より馬鹿だからわかんない』
赤『クラス2位なのにそんなこと仰るなんて、まるでわたくしめが1位みたいじゃあないですか』
麗『いや、普通に見えただけだよ』
赤『・・・趣味が悪い。俺そういうのマジで無理』
麗『カマかけただけ』
赤『・・・マヌケは見つかったようだな』
麗『約束通り、奢ってあげるよ。週末空けといて』
赤『なけるぜ』
5月25日 火曜日
茜「あれ?山口は?」
赤「今日は休みだ」
茜「また、その、家庭の事情?」
赤「ああ」
茜「どういう事情なの?」
赤「本人に聞け」
茜「でもさぁ、そういうのって本人に聞くのってタブーじゃない?」
赤「そう思うなら聞かなければいい」
茜「・・・もしかして、怒ってる?」
赤「さぁな」
5月26日 水曜日
茜「昨日はごめんなさい」
赤「謝らなくていい」
茜「・・・赤羽って、妙に真面目だね」
赤「妙って・・・失礼だな」
茜「明日、山口は来るかな?」
赤「来ない」
茜「・・・・・・」
赤「そんなに気になるなら連絡してやったらどうだ?これ、連絡先」
茜「いや、持ってるけどさぁ・・・いきなり連絡したら変じゃないかな?」
赤「さぁね」
5月27日 木曜日
茜『山口、元気?』
山『あれ!上地さん。元気だよー』
茜『連絡先は赤羽から貰ったの』
山『なんでもいーよ』
茜『ねぇ、山口ってなんで休んでるの?』
山『あんまり面白い話じゃないけど、聞く?』
茜『うん、聞きたい』
山『じゃあ、明日学校終わったら、赤羽の店に来て』
茜『赤羽の店じゃないとダメなの?』
山『嫌だった?』
茜『嫌じゃないけど・・・』
山『じゃあ、また明日』
茜『うん、おやすみなさい』
5月28日 金曜日
茜「おじゃましまーす」
山「ほい、月見酒」
赤「アームだけじゃねーか。ふざけんな」
山「こいこいはしねー。カスと酒で6文」
赤「クソ野郎。・・・あれ、いらっしゃい」
茜「うん、こんにちは」
赤「・・・うっ、なんだか頭が腹痛で奥歯が筋肉痛だ。病院行ってくる。長丁場になりそうだ」
山「は?」
茜「・・・」
赤「じゃ、ちょっとごめんね。店番頼んだ。アイタタタタ」
茜「・・・」
山「・・・・・・」
茜「・・・」
山「・・・マスターいないし、俺が何か作るよ。なに飲みたい?」
茜「作れるの?」
山「ここにレシピ本がある。手書きの」
茜「・・・じゃあ、ほうじ茶ラテ」
山「あんのかんなぁ・・・あったわ。3ページ目にもう書いてある。作るから待っててね」
山「お待たせ。アイツほど上手にできなかった。ごめんね」
茜「いやいや、ありがとう・・・うん、超おいしい!」
山「そりゃぁよかった」
茜「・・・」
山「・・・」
茜「・・・・・・」
山「・・・・・・話してもいい?」
茜「勿論。聞きに来たんだよ」
麗「・・・今日は1人なのね」
赤「ん、阿比留さんが来たから2人だな。やりたい?」
麗「今日はいいや。眺めてていい?」
赤「面白いもんじゃないよ」
麗「それでも」
山「・・・俺はさ、両親が離婚してるんだ。父さんの方についてるんだけど」
茜「それは・・・」
山「離婚の原因は、母さんなんだ。接待で1回行って、その後、ホスト狂いになった」
茜「・・・・・・」
山「父さんは母親の借金を背負いながら、俺と妹を育ててるんだ。でも、たまに母親が家に来るんだ」
茜「・・・そんなの、おかしいよ」
山「ああ。おかしいよ。ホストに自分の娘を渡そうとする母親なんて、っ、どこにいるんだよ」
茜「・・・ひどい」
麗「中々釣れないね」
赤「釣りってのは待つものだよ」
麗「今日1人なのってさ、山口に関係がある?」
赤「・・・・・・ある」
山「だから、母親が家に押し掛けてきた日は、妹を守らないといけないんだ。家から出れないんだ。だから、またたまに学校は休む」
茜「そんなっ、警察には言ったの?」
山「何度も言ったさ。でも、母親が娘や息子に会いに行きたいだけですから、大目に見てやってくださいって、何回も言われたさ」
茜「・・・・・・」
山「な?面白くない話だろ。ごめんね、こんな話しちゃって」
麗「ふーん。それで気を利かせて店から出たってわけか」
赤「まぁ、山口からメッセージが来て、んで次の日上地さんの表情見て、そういうことかってなったんだよ」
麗「・・・随分、察しがいいんだね」
赤「なにやら、皮肉を感じるよ」
麗「別に」
山「・・・」
茜「・・・」
山「ず、ずいぶんしんみりしちゃったな!赤羽呼んでくるよ」
茜「待って!」
山「な、なに」
茜「ねぇ、、その、・・・ハグしてもいい?」
山「え?」
茜「んっ」
山「・・・」
茜「・・・山口、よく頑張ってるよ。うん。私は、凄いと思う」
山「・・・」
茜「・・・」
山「・・・」
茜「・・・」
山「・・・お、俺さぁ、お兄ちゃんだからってさぁ、っ、守んないといけないし・・・」
茜「うんうん。よく頑張ったよ。泣いていいんだよ」
赤「暗くなってきたな。帰ろうぜ。よかったら家まで送ろうか?」
麗「ご親切に。よろしくおねがいします」
赤「え」
山「・・・ん、ごめん。カッコ悪いとこ見せた」
茜「全然全然」
山「ありがと。今日は話聞いてくれて」
茜「いいんだよ。だって、友達じゃん」
山「・・・っ、そうだな!」
麗「ん、ここが私の家だよ。覚えといてね」
赤「なんでだよ」
麗「よかったらあがる?」
赤「あがらない。そういう不用心なことを不用意に言うな」
麗「誰にでも言うわけないじゃん」
赤「・・・はっ、そりゃそうか」
麗「週末、ちゃんと空けといてね」
赤「・・・善処する」
麗「ん?なんて言った?」
赤「善処する」
麗「きっこえないな。もう一回言って」
赤「・・・・・・行かせていただこう」
麗「うん、楽しみにしてて」
5月29日 土曜日
赤「いらっしゃい」
山「・・・お、おはよう」
茜「おはよぉ・・・」
山「・・・」
茜「・・・」
山「お、俺、用があるんだ。じゃあね!」
赤「・・・ははっ。改めて、いらっしゃい」
茜「やぁ・・・」
赤「山口がいなくなって安心した?それともがっかりした?」
茜「んなっ、違うし!」
赤「なんでもいいけどな。コーヒー?ラテ?何が飲みたい?」
茜「・・・ね、ねぇ山口の誕生日って、7月の15日だよね?」
赤「ああ」
茜「山口って、何が嫌い?」
赤「・・・はははっ、素直じゃあないね」
5月30日 日曜日
麗「おはよう」
赤「悪い、待たせた」
麗「今来たところだよ」
赤「・・・今日、なにするんだ?」
麗「何かしたいことってある?」
赤「そもそも、俺隣町まで行くことないから、ここに何があるかわからん」
麗「じゃ、行こうか」
赤「・・・負けたら奢ってって言ったけどさ、さすがに入場料は払うよ。なんなら阿比留さんの分まで支払うよ」
麗「たったの500円だよ。これで奢りがチャラにできるなら、奢らせて」
赤「わかった」
麗「・・・今、私の左ポケットにお札入れたね」
赤「む、気づかれたか」
麗「もう。ていうかもう入場券買ってあるの。はい」
赤「・・・・・・」
麗「どう?」
赤「美術館なんて、俺は育ちが悪いから初めて来たよ」
麗「育ちが悪い?冗談がお上手で」
赤「うるせー」
麗「この正面の絵、自画像なんだって」
赤「・・・自画像と言っておきながら、周りからはカメラが向けられてる。皮肉なもんだね」
麗「・・・!このカメラは何のメタファーだと思う?」
赤「普通に、周りの目線ってことじゃあないのか?自画像と言いながら周囲の目を気にして取り繕うっていう風刺じゃない?あんま詳しい事わかんないけど」
麗「じゃ、じゃあ、この絵は?タイトルは愛し合う」
赤「いや、この見つめ合う男女も、よく見たら男性しか薬指に指輪が描かれてなかったり、目線が会ってなかったりしてるから、人は分かり合えないってことじゃない」
麗「じゃあ、こっちの絵は!?」
赤「・・・わかりにくいなぁ。思い出ってタイトルの割には写真の張られてないアルバム・・・思い出は記憶の中にあるってのは、些か性善説すぎるか?俺みたいな馬鹿にはわからん」
麗「赤羽、どう?楽しい?」
赤「ああ。美術館を毛嫌いしてたけど、認識を改める必要がありそうだ」
赤「楽しかったな」
麗「うん、すごい楽しかった。正直言うとさ、赤羽楽しまないかもって思ったんだ」
赤「いくら片目が見えないからって絵ぐらいは楽しむよ」
麗「・・・」
赤「・・・おいおい、冗談だよ。本気にしないでよ」
麗「そ、そうだよね・・・冗談だよね」
赤「つい、揶揄いたくなったんだ」
麗「そうだよね・・・」
赤「・・・・・・悪い。忘れてくれ」
麗「赤羽?」
赤「なに?」
麗「話さないなら、聞かないよ。でも、離さないよ」
赤「・・・ははっ」
5月31日 月曜日
山「・・・赤羽の目?いやぁ、知らないなぁ」
麗「そう、ありがとね」
山「あ、でも、小学校の時、なんだっけ、なんか言ってたけど、それかもしれん」
麗「・・・うん、ありがと」
茜「ねぇ、山口ってさ、本当に私の事好きなの?」
赤「さぁね」
茜「は、はぐらかさないでよ!私今赤羽なんかに相談するくらい困ってるんだよ!」
赤「なんかて」
茜「もう、わかんないよ」
赤「・・・もしかして、初恋?」
茜「悪かったですか!?」
赤「ああ。あんな奴に惚れるのが悪い。そろそろ登校してくるだろうし、挨拶の文言でも考えておくんだな」
茜「ちょっと!どこ逃げるの!」
赤「トイレだよ。ま、頑張ってくれ」




