どっきりカメラ
ただ、少し冷静に考えるとふと不安がよぎる。
“本当にこんなウマい話があるのだろうか・・・
なんか出来過ぎだな。
もしかして何か落とし穴でもないのだろうか・・・。
実は家に行った時に誰かが来て
『俺の女に何するんだ!!』
となったらヤバいな・・・”
プライベートで会ったのはまだ1回だけでお互いの事は詳しく分かっていない。
でも、悲しいかなやはり誘惑に勝てない。
かろうじて土日の外出は断念して月曜日に逢うことにした。
約束した時間に先日沙良が降りた米野駅に着く、小さな駅で改札口は一つしかない。
まだ彼女は来ていないようでメールをした。
【今 駅に着いたよ!!】
≪改札口を出たところで待っているよ≫
即座にメールが返ってきた。
“アレっ、どこだろう??改札口は一ヶ所しかないし・・・”
あたりを見廻したけれど誰もいない。
“おかしいな・・・。これが、どっきりカメラでニョーボがここで『テッテレー』と言ってどっきりのプラカード持って出てきたら笑うけれど・・・”
“そんなこと言ってる場合じゃないな・・・。本当にいないじゃん”
メールがまどろこしくなり電話をしてしまった。
「今 どこ?」
「駅の改札口にいるよ」
「??米野駅の?」
「黄金駅だけど・・・」
普段お店には電車でなくてタクシーを使っている沙良はまだ土地勘がなく先日は本来降りるべき黄金駅でなくて一つ前の米野駅で降りていた。
’’それで5分ぐらいで家に着くはずなのが30分以上も掛かったのか・・・。’’
すっぽかされたわけではないのでホッとして黄金駅に向かう、歩いてもせいぜい10~15分ぐらいだろう。
少し急ぎ足で向かい、黄金駅でようやく沙良と会えた。
何か落とし穴があるのでは・・・と少し警戒していたのだが、かえってこれでリラックスしてしまった。
相変わらずすっぴんで私服姿の彼女はやはり可愛い。
「ごめんね、間違えちゃって」
沙良が詫びてきた。
「ううん、全然いいよ。ここから近いのだっけ?」
「うん」
「ところでさぁ、彼が突然きたりしないよね?」と恐る恐る尋ねた。
「うん、名古屋じゃないから。それに・・・土曜日にケンカしたし・・・」
「でも、ケンカしたなら尚更突然仲直りに来たりしないの?」
「もう別れるって言っちゃたんだ・・・。なんか説教してくるし・・・。前からよくケンカするんだ・・・」
彼とのメールを沙良が見せてくれた、確かに最後の方のやり取りは
(俺はお前のことを本当に思っているから言っているんだ!!)
[もう嫌だ]
(別れたいの?)
[うん、別れてもいいよ]
(じゃあな、楽しかったよ)
そして暫くして彼から
(パジャマはどうするの?)
[捨てていいよ]
こんな感じだった。
これってどうなんだろうか。沙良は別れたつもりだけど、なんとなく彼が未練タラタラな気がして仕方ない。
よく喧嘩するって言っていたから、しれっとか泣き落としかは分からないけど彼が謝って仲直りしたいって言ってくる感じがする。こんな可愛い人を彼女にしておきながら、よく分からない理由で手放すなんてしないだろうから。
それでも、例え今日一日だけとしても『お店のお客さん』ではなく、一人の男性として逢ってくれるなら。それも、もともと一目ぼれの沙良ならこれ程の幸せはないなと思いながら沙良の家に向かった。