滾る(タギる)
そして、ついに最終日。
今日で西高祭も終わり、明日の打ち上げで最後になる。
この一週間は密度が濃かった。
一年生の子と知り合ってから急に西高祭、いや高校生活がそれまでの白黒フィルムだったのが急にカラーで彩られることになった。
もっとも、明後日には受験生にそして白黒フィルムに戻るけど。
長瀬のことが好きになっていたことにも気が付いたし、まるで恋愛プロデューサーのようにハジと松田さんの進行も楽しんでいた。
ミスターがペコのことを本気なら応援するけど、ミスターも僕同様に一年生の子に関しては「西高祭限定」と思っていた。
と言うか、まだ知り合って一週間も経っていない。
僕もミスターもこれで好きになるのが難しいというか、好きになってもらえると思うなんておこがましいと思ってた。長瀬だって知り合ってから好きになるまで5か月掛かっている。長瀬がどう思っているかは分からないけれど、「まぁまぁ恰好いいじゃん」って言うぐらいだから少なくとも見た目は彼女の圏内には入ってそう。
そして、この日の混レクは男女各5ペアでラケットにテニスボールを載せて手を繋いで走るという幼稚園レベルだけど、まぁこれは体育祭の余興みたいなもの。
最初は男女それぞれで順番を決めるのだが、じゃんけんに負けた僕はアンカーになった。遊びとはいえ、アンカーは目立つなと思い三番目の1年男子に代わって貰った。柔道部の先輩が言えば素直に一年男子は代わる。
するとパピー(仔犬)のような長瀬がやって来た。
「ねぇ、ねぇ・・・私・・・、アンカーだけどアンカーって誰?」
ここぞとばかり、当然のように僕は答えた。
「あっ、俺だよ」って。
すぐにさっき代わって貰った一年男子のとこに行って
「ごめん、やっぱ俺アンカーでいいわ」
と長瀬に合わせる。
リレーの順番を待っている間、隣りに長瀬がいる。そして、僕の左腕と長瀬の右腕がぴったりくっつく。息遣いが聞こえるほどの至近距離に長瀬がいる、そして僕の心臓の鼓動が左腕を通じて長瀬に聞こえているんじゃないかと思うほどドキドキしている。すっかり気持ちが滾っている。
勝手な思いかもしれないけれど、言葉はこの時要らなかった。
なにも言わなくても通じていた気がする。
もし、言うとしても
「長瀬・・・俺さぁ・・・このままが良い・・・」で充分な気がした。
だから・・・
この時の僕の気持ちがこの後の恋愛の「基準点」となった。
この時を90点とすると、結婚の話しになっても88点ぐらいかなって感じると進めなくなった。まぁ、これは大学を卒業して社会人になってからのお話しだけど。
そして、順番が近づくと僕の左手と長瀬の右手がそっと繋がる。
そして、リレーが終わってもその手を離すのが嫌だった。このままずっと一緒にいたかった。このまま抱きしめたかった、こんな気持ちは人生で初めてだった。
ただ・・・
夢中になっていて忘れていたことがあった。この混レクは学校祭行事だから当然見てる人は見ているんだ。そして、一部一年生は僕が由紀のことを好きと思っていることも。




