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コロナ禍で

2020年になって異変が起きた。


それは、誰かとなにかがあったのでなく、新型コロナの脅威が叫ばれ始めた3月から社内の仕組みが変わり、スタッフはA班とB班に別れて出勤と在宅の交代勤務になった。


そして、河内さんとは班が違っていて、会う機会がなくなった。

コロナ禍当初はお客さんのところに行くことも出来ず、まだweb会議も認知されていなかったので一気に暇に。

会社もそれが分かっていて、自己研鑽としていろいろな資格試験受験が推奨され、業務とは関係ないけど英語のTOEICでも受けようかなとぼんやり考えていた。


ニョーボはパートに週の半分ほど出ていて、パートで家にいない時は同じくweb授業になった大学生の次男のこともあり、全自動調理器の「ホットクック」を買ってお昼ご飯を作っていた。

ホットクックは煮込み料理が得意だから、カレーとかシチューやボルシチなどがマッチする。


そして・・・

涼葉とも会えない日々となった。

なにせ、あの頃は感染すると保健所から「濃厚接触者」が徹底的に洗われていたので、迂闊に会うことも出来ない。もし、感染したら会社ではまるで戦犯のような扱いだし、家族にも誰と何処で会っていたか明らかにされてしまう。それだけは絶対避けないといけない。


まぁ、予想通りネガティブな涼葉は会えない日々が続くと

「これは真面目な主婦に戻れと神様が言っている・・・」

という発想になっていき、またしても連絡が取れなくなった。


こんな時に社内でほんの少しでいいから落ち着かせてくれる人がいれば気持ちが救われたのだろうけど・・・

特に河内さんは1枚だけ涼葉と似ていた写真があったので、少し前ならチラッと会社で姿を見るだけできっと落ち着くことが出来たのだろうに。

でも、河内さんは仮に同じ勤務班であっても2019年のやり取りでむしろ落ち着かない存在になってしまった。遠くから見てるだけに留めておくべきだったのか。


あの頃は通勤の電車もガラガラで、まるでゴーストタウンになってしまったかのように名古屋駅も東端の桜通口から西端の銀時計まで見渡せるなど今から思うとまるで映画のワンシーンのような別世界のような光景だった。

コロナ感染者数はあの第一波の頃は今から思うとたいしたことなかったけど、なにせ致死率が5.34%で、しかもこれと言った特効薬もなかったので重症化がすなわち死に至るのでとにかく感染しないことがあの頃は一番の重要事項だった。


ただ、幸い涼葉は非常事態宣言が終わった頃に連絡があり、注意しながら少しずつ会うことを再開していった。でも、これを機会にマスクをして会うことになったから今までのように知人に見られないように少し離れて歩くとかしなくても良くなった。


その一方で河内さんとは出勤班が違っているため会うことはなく、しかも夏頃のコロナ第二波の影響で河内さんのいる課は原則として在宅勤務となっていたようだった。


そして、少し収まった秋からは河内さんも再び交代出勤となり、たまに見かけるようになった。

コロナ禍以降、社内ではランチでの外食は自粛でお弁当が推奨且つ自席での個食が原則となっている。


そんな11月のある日のこと。

たまたま、従業員出入口付近で河内さんと洞本さんにばったり会った。


すると、河内さんから

「カレー作ってよぉ〜」

すかさず、何故か洞本さんも

「カレー作ってよぉ〜」


まぁ、これは例の「ノリ」ってヤツだな、この人って昨年の今頃もそんなこと言ってきて、「洞本さんとセットなら出来ない」って言ったことはもう覚えてないんだろうなとふと虚しく感じる。

と言うかあの「ノリで」という言葉がもうトラウマのように自分の心の中で浮かんでくるようになってしまった。もう、この人の言葉が入って来なくなっている。


しかも、今回はその洞本さんの前で同じこと言うので仕方なしに


「今ね、ホットクック買ったからパワーアップしたよ」と適当に返す。


すると、


「じゃあ、それを持ってきて作ってよ」


「じゃあ、今度そうするね・・・ってどうやって持ってくるんじゃあんなデカいの。」


我ながら、あり得ない会話するのはしんどいけど、「ノリ」で話す人にはこうして適当に合わすしかないか。彼女の言葉を真に受けると今までみたいに「火傷」するから仕方ない。こんな空虚な会話って実は疲れるだけなんだけど。


この人はただ人と話しをするだけが好きで、相手がそれをどう受け止めるかなんて関係ないのかな・・・

まるで中学生だよな・・・

などと感じながらも、ただの同僚なんだから仕方ないよねと、2020年はそんな感じで過ぎていった。


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