扉の向こうに
6月23日(月)
この日の夕方に沙良からメールが入った。
≪今日から休暇に入りました、良かったら連絡して下さいね≫
【今週はいつなら都合が良いの? 今日はどう?】
本当は気分的にもゆったり出来る金曜日にしたかったけれど今週の金曜日は送別会がある。
となると、どうせなら少しでも早く会おうと今日にしようと思った。
≪うん、今日は予定が何もないから良いよ~♪≫
但し、急に決めたのでこちらの仕事の段取りもあり時間はあとで連絡することなった。
なんとか定時で仕事を切り上げて沙良にメールした。
【定時に終わるけど何か食べたい物とかある?】
≪う~ん、今ダイエットしているから家で良いよ~≫
結局、外食でなくいつものように沙良の家に行くことになった。
元々少食でダイエットをしているという理由で家に行くことになったのだがせめて差し入れぐらいしようと思って名鉄百貨店にある、いわゆるデパ地下の「キースマンハッタン」でケーキを買って沙良の家に向かった。二人でケーキを食べようと思ったのだが、そう言えば皿もフォークもない。
「あっ、皿が必要だよね・・・。買わなくちゃ・・・」
沙良はそう言いながら少しきまりの悪そうな顔をしている。ダイエットしているせいかケーキにもあまり喜んだ感じはないのがちょっと寂しい。
そして、沙良に聞きたいことは一杯あった。
この前にここで会ってから今までにに一体何かあったのだろうか?
強がりでなく別に沙良の気持ちが変わったのなら構わない。
こちらは既婚者でもあるので深追いをしないという大人のルールを守るつもりなのだから。
でも、沙良のいつもの愛くるしい顔を見ていると何故か何も言えなくなっていた。
久し振りに来る沙良の家だが相変わらずなにもないが、ただ一つ変化があってクーラーが付いていた。
「へぇ、クーラー買ったんだ」
「うん、猫が暑がると可哀そうだから」
「言えば俺が買ったのに・・・」
「え、いいよ~。そんな・・・」
6月のじめじめした日だったので「ところでシャワー浴びて良い?」と聞くと
「うん、良いよ。はい、これ。花谷さん専用の・・・」
そう言って沙良はバスタオルを渡してくれた。
別に態度に不審な点もなければ変わった様子もない。ただ、沙良のことが好きすぎてこちらが神経質になっていただけなのだろうか?少なくとケンカにはなっていないし、そもそも嫌なら自宅に呼ばないだろう。
見えない魔物と闘うのは確かに疲れる。
素直に今、この時を大切にすべきだなと気を取り直した。
シャワーを浴び、クーラーのスイッチも入っていたので閉め切った沙良の部屋へのドアを開ける。
思わず目を疑った、思いがけないものが目に飛び込んできた。
なんと、そこには・・・




