序章:陽の光の届かぬ場所で
太陽と月の二重螺旋を連載で書いてたつもりでしたが…
短編で描いてましたw
なので連載でより詳しく描いていこうと思っています。
5章からが本当に描きたかったところなのでよろしくお願いします。
日本列島という細長い緑の島々は、幾重もの歴史の層に包まれている。
私たちが学校の教科書で目にする「表の歴史」は、燦然と輝く太陽の物語だ。高天原に端を発し、大和朝廷という強固な中央集権を経て、連綿と受け継がれてきた天照大神の系譜。そのまばゆい光が日本という国の輪郭を描き、今私たちが暮らす平和な日常の礎を築いてきた。それは紛れもない事実であり、深く感謝すべき営みである。
だが、光が強ければ強いほど、その足元には深く、濃い影が落ちる。
太古の昔、波濤の荒れ狂う玄界灘の孤島・壱岐。そこでは、海の満ち引きや星々の運行を読み解く海人たちが、命がけで潮路の安全を守っていた。彼らが手にした亀甲のヒビ(亀卜)は、国の行く末を左右する神託となり、見えざる羅針盤として古代日本の国家運営を水面下で支え続けた。
表舞台の王たちが威儀を正して座すその背後で、夜の闇と星の導きを頼りに、険しい山河を切り開き、あるいは海原を渡って「道」を開き続けた者たちがいた。
神話の中で天孫降臨の道案内をしたとされる猿田彦。
そして、国家の危機や変革の節目に、常に先導者として影から人々を導いた八咫烏。
彼らは名誉や権力を欲しなかった。自らの功績を歴史の表玄関に刻むこともなく、ただ一族の血脈と秘儀、そして「この国を正しく導く」という揺るぎなき使命感だけを、静かに、しかし途切れることなく受け継いできた。
今の私たちが享受している穏やかな平和、美しく守られてきた日本の風景の裏には、こうした名もなき先人たちの血の滲むような歩みと、深い祈りが脈打っている。彼らは決して歴史を乱す者ではなく、この国が迷走しないようにと、静かに舵を取り続けた「影の守り手」だったのだ。
太陽がその光で国を照らすなら、月はその光の届かぬ夜の道標となる。
交わることのない二つの軌道が、幾重もの時代を越えて織りなす、静かなる継承の歴史へ、深い敬意と感謝を込めて、扉が開かれる。




