088⚫️アリババと四十人の盗賊
「ボビー、休暇中にすまないな。」
「何をおっしゃいます、艦長。・・・で、わざわざ飲むためだけに私を呼び出したわけじゃありませんよね?」
「ふっ、流石に察しが良いな。」
マチルダはグラスの縁を指でなぞり、声を潜めた。
「命令が下った。我々は極秘任務として、新たな’イスカンダル’を探す。」
「ふぅー。・・・’愛と恋と青春と 夢とロマンと冒険を’。今、巷で流行っているドラマのサブタイトルみたいだ。」
「全くだ。・・・だが現実はドラマよりタチが悪い。司令は我々の報告を握り潰した。事実は政治家どもには伝わっていない。・・・もし国民に伝われば、国家存亡の危機だ。いや、我々自身が先に、この世にはいられなくなるだろうな。まあ、覚悟の上だったがな。」
ボビーはバーボンの琥珀色を透かして見た。
「政府が敵国と裏で手を組み、企業利権の確保と人口の調整を行っている・・・。まあ、これこそ’超極秘’の劇薬ですからね。・・・でも、艦長・・・。何かお考えがあるのでしょう?」
「それは’超超極秘’だ。取り敢えず、やりたいことがある。力を貸してくれ。」
ボビーは不敵に笑い、ウィンクしてみせた。
「イエス、マム。あなたには、私を含めて四十人の仲間がついています。」
「アリババみたいだな。」
「いいですね。’マチルダと四十人の盗賊’。秘密を盗むには、お誂え向きの二つ名じゃないですか。」
ボビーは一気にバーボンを飲み干した。
これから始まる試練への覚悟の現れである。




