077●水、み、水・・・
「なんか、もめてるね。」
「おう、水争いか?水路の両側に、ありゃあ、魔物とニンゲンがにらみ合ってるよな。」
「いや、だからうちの畑に水がこないんだよ。流したいんだ!」
「といっても、われらも水を使う。一時的にというが、全部ニンゲン側に流すというのは、困る。」
「こっちはな、生まれる子どもが増えて、畑を増やさんとどうにもならなくなってんだ!」
「われわれも同じだ。あんたら、森を切り開いて畑にしてるだろ。ただでさえ、森の恵みが減って来てるんだぞ。このうえ、生活用水まで全部よこせって、魔物だって、魔法で飲料水がパッと出てくるわけじゃあない!」
「なにを、この魔物やろう!力づくってことかあ!」
「喧嘩を売るなら、買ってやる!さあ、こい!」
一触即発である。
「ちょっと、待ったあ!」
うわっ、でかいな!こいつ、パワー系の奴だな。
だが、上位魔物の我らを止めるのか?うん?えっ、‘ニンゲン’なのか?
ふーん、かわいい!
こんな女の子が手をひろげて立たれると、
ちょっとやりづらいなあ。あれっ?あんた‘魔物’なのか?
‘魔物’は‘ヘラクレス’と‘ヒポクラテス’の族名を聞いて、一旦、落ち着いた。
‘ニンゲン’はガウが自分たちと同じ‘ニンゲン’だと聞き、安心して腰を下ろした。
「そもそも、どうしてこんなことになったのよ?」
「いや、それがですねえ・・・。」
日照りである。雨が降らない。
ため池も底が見えだした。
様々な鳥が、腹を見せる魚を捕獲にやってくる。
このままでは穀物が実らない。
大量の水に支えられてきた、‘ニンゲン’の農業は危機を迎えている。
魔物とて同様だ。ギリギリの量で生活用水を確保している。
森の自然は恵をもたらしてくれるが、
この秋は木の実などの不作が予想されている。
春からの備蓄はあるものの、水のそれは困難である。
「うーん、ということは水源を新たに見つけないとどうにもならん、ということか。」
「水路を適正に分け合うっていうにも、水の量自体が少ないから無理ってことよね。」
「リンリン、魔法で水脈って見つかんないのか?」
「う~ん・・・できたとしても、きっとその水脈まで掘り進むっていうのは、かなり難しいんじゃないかな。」
「海の水を塩だけ抜く魔法、ってないのか?」
「それは夢のようだね。そんなふうに都合よくできれば、いいのになあ。」




