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003⚫️船も人も限界

「深度限界です。これ以上はもちません。」

「わかった。浮上する。ただし海面直下までだ。再び追尾されるのは避けたい。」

艦長席に身を戻す。耐酸被膜もそろそろ寿命だ。

いったん帰港して再塗装せねばならない。


「まだついてくるか。」

「スクリュー音なし。振り切ったようです。」

「やれやれ。手の空いた者は交代で休め。食事も済ませておけ。次がいつ来るかは読めん。」

「イエス、マム!」


この戦争は先が読めない。海洋の酸性化は進み、海は赤く濁る。

水素イオン濃度は上昇、pHは低下し、装備の寿命は確実に削られる。

この海で戦うことそれ自体の意味を、ふと問う瞬間がある。

戦死した夫と、故郷に残した子どもたちの顔がよぎる。

いや、緩んではいけない。


「艦長、少しお休みを。70時間以上、不眠不休です。」

「すまん、ボビー。少しだけ目を閉じる。」

制帽のつばを下ろす。

船体モニターには酸の雨痕が斑に残っている。

深呼吸。短い仮眠の底へ落ちた。


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