042⚫️パスワード
「問題はパスワードだ。」
「生体認証でなかったのは幸運です。しかし、文字列そのものが不明です。」
「原状維持を厳とせよ。踏み荒らすな。手がかりを探せ。」
「イエス、マム!」
三時間経過。収穫なし。
マチルダの表情がわずかに硬くなる。
「あの・・・艦長。」
隊員の一人が挙手した。若い声だ。
「僕、ジャパニーズ系ギャラン人なんですが・・・‘ナガト’の設計者、ヒロ・エンユウジもジャパニーズ系ですよね。」
「ボビー、それでいいのか。」
「はい。エンユウジは確かにその系統です。・・・それがどうかしたのか?」
「天井の絵が、どうも気になるんです。」
全員が見上げる。
そこには、美しい山の麓で鳴く鳥が描かれていた。
「ジャパニーズ話者だと、この絵で数字が湧くんです。‘富士山麓にオウム鳴く’√5 の記憶句。2 2 3 6 0 6 7 9。」
マチルダは即断する。
「試す価値はある。このまま手をこまねいているわけにはいかない。ボビー、副系統は切替済みか。」
「はい。リトライ制限は6回。ロック時は物理層が落ちます。」
「やろう。入力。」
作業員が数字を打ち込む。
呼吸が浅くなる。スイッチ、オン!ワン、トゥー、スリー。
沈黙。機械音。照明が一段明るく跳ねた。
「コア反応。縮退炉‘ゼロワン’、出力上昇!」
「中央モニター、起動。これは・・・惑星地図?」
「輝点、増加中! 各拠点と握手しています!」
「データ流入!輝点位置は各プラントです!こんなもの、あったんだ?・・・稼働開始していきます!」
「‘対酸化プログラム’が走行!」
「見てください、枝が花を咲かせるみたいに、治癒圏が拡がって!」
オペレーターが一覧に目を丸くする。
「え、‘ジロー’、‘サブロー’、‘シロジロウ・・・‘ハッカイダー’?」
「‘サンジューロー’、‘そろそろシジュウロー’・・・ネーミングの統一感がない!」
「開発研究班員の出身がバラバラだったんですかね?あ、‘世界のクロサワ’って何だあ?!」
輝点はさらに増える。
惑星中に敷設されていたプラネット・クリーナーXYZが、一斉に動き始めた。
「艦長、システム完全起動です。ですが、敵陣営の感知は避けられません。」
「そうだな、ボビー。」マチルダは頷く。
「それでも、世界は動き出した。艦へ戻るぞ。」




