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035⚫️pH8.1
「マゼラン海域に到達。イスカンダル島まで、巡航速度で1時間です。」
「よし。艦長、全速で最短距離を取ってよろしいですか。」
「うむ。海中環境はどうか。」
「凪いでいます。観測班、酸性度を報告!」
「副長、それが・・・pH約8.1。弱アルカリ性です。生存可能適正惑星の‘標準海水’と同じ値です。」
一瞬、艦橋の空気が止まった。
ここは‘見捨てられた酸の惑星ギャラン’。本来ならpH3〜4の強酸性の海である。
「な・・んだと? 酸性ではないのか?」
驚愕が艦橋を駆け抜ける。
ただ一人、マチルダだけが表情を変えない。だが、その目だけが鋭く光った。
「潜望鏡深度へ。実際に見る。」
‘ナガト’は静かに浮上を始めた。いつも漂う酸霧がない。
まるで、海そのものの肌理が変わったような。‘境界’を越えた感覚があった。
潜望鏡が海面を破る。そこには・・・
紺碧の海が広がっていた。
濁りも、霧も、白化もない。
古い記録で見た“酸化前の時代”の海と同じ、静かな青。
マチルダが低く呟く。
「・・・イスカンダルは、海の色からして違うらしい。」
モニターで共有映像が映し出された艦橋。誰も声を出せない時間が流れた。




