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第九十七話 結界術師、帝花へ向かう

                             第六章 新たな災厄

                         第九十七話 結界術師、帝花へ向かう



 俺達に知らせに来た兵士を追いかけると、村の前に馬が止めてあった。人数分用意されていたので、初めから俺達を連れて行くつもりだったのだろう。しかし、馬は一頭余った。ミリアは普段サーシャの鞄にいるので、カリアの分の馬だろう。

 彼女はエルフの里にいるため、ここにはいない。ここへ来た時のために馬を村長に預け、俺達は帝花へと向かう。兵士が言うには、フラン達は帝花まで運ばれたらしい。


「帝花に着いたら、私はまた呼びかけます」

「分かった。頼む」


 四天王が二体いる。フラン達がやられたという話を聞き、その脅威をサーシャも実感しているのだろう。真剣な面持ちで、彼女は俺に言った。

 カリアやミリアが来たとしても、四天王二体を相手にできるとは思えない。タイミングが偶然同じだっただけで、フェスティナ大陸の魔王軍と桜花の魔王軍が繋がっていないことを願うしかなかった。

 帝花へ到着すると、すぐに城内の医務室のような部屋へと案内された。薬品の香りが充満しており、部屋の外にまで怪我人が溢れかえっている。

 町が一つ壊滅させられたのだ。いくら帝花といえど、人が溢れてしまったらしい。


「久しぶりね」


 俺達が来たことに気付き、カトレアが声をかけて来た。


「大丈夫なのか?」

「ええ、私はね」


 そう言って彼女が視線を向けた先には、包帯を巻かれて寝かされているフランの姿があった。服は血塗れだが、すでに出血は止まっているようだ。回復魔法で治療してもらったのだろう。だが、問題はそこではない。


「回復魔法も万能ではないのよ」


 フランの左腕がなくなっていた。彼の左肩に包帯が巻かれており、その先が続いてないのだ。


「久しぶりですね」


 フランのか細い声が聞こえる。俺達の話声で起こしてしまったようだ。


「起きて大丈夫なのか?」

「はい。左腕以外は、すでに治療済みですからね」

「嘘を吐かないで。失った血は回復魔法でも戻らないんだから」


 フランが寝かされていた理由は、出血による血液不足だったらしい。


「…」

「命に別状はないので心配ないですよ」


 俺の服を摘まんでいたサーシャに、フランは笑いかける。彼の言葉を聞いても、サーシャは表情を硬くしたままだった。


「敵はとても強力です」

「私が話すから」


 そう言って、カトレアは彼を再び寝かしつける。やはり出血で体力をかなり消耗しているようで、彼はすぐに寝息を立て始めた。

 彼女はフランを気遣っているが、自身もそれほど余裕がある訳ではないだろう。一見傷を負っていないように見えるが、ただ回復魔法で治癒しただけだ。先ほど彼女も言っていた通り、失った血は戻って来ない。

 また、住人やフランが死なないように回復魔法を自分以外にもかけていたはずだ。この惨状を見るに、彼女は回復魔法をかなり使っていたに違いない。

 血と魔力を失っているカトレアの顔色も非常に悪かった。それでも、自分の方が傷が浅いからと話し始める。


「敵は巨大な骨の蛇。そして、引き連れている魔物は殆どがアンデッド系の魔物よ。一体一体がとても強かったわ」


 アンデッド(動く屍)、非常に厄介な魔物達だ。すでに死んでいるため、首を斬ろうが関係なく動き続ける。何より、生前の能力に強さが比例するというのがとても厄介な点である。

 邪骨大蛇は桜花から来た魔物だ。そして桜花は、侍という武芸に優れた者達が沢山いる。下手をすると、生前よりも強くなっている可能性だってある。


「本当なら私が倒さなければいけないけれど、邪骨大蛇の瘴気のせいで聖属性の魔法が効きにくいのよね」


 本来ならばアンデッド等は聖属性魔法にとても弱い。その上僧侶等の職業にはアンデッドに特効がある魔法を使える。僧侶の上級職である破壊僧も、同様の魔法が使えるのだ。

 魔法の力を弱めるものが瘴気である。瘴気は闇属性とは別のもので、アンデッドの魔物だけがもつ固有のものだ。上級アンデッドになるほど纏う瘴気が濃くなり、魔法の威力が軽減される。弱点である聖属性の魔法が効かないということは、他の属性はさらに効き目が薄いということになる。

 破壊僧は魔法の威力がそれほど高くない。相手が四天王だということも考えると、彼女の魔法が効かなくても仕方がないといえる。

 フランは今まで二刀流で戦ってきた。片腕がなくなった彼は、以前のような戦い方はもうできないだろう。


「あれは諦めていませんよ」


 俺の表情を見たカトレアがそう呟く。彼女は片腕を失ってなお、フランがまだ戦おうとしていると言っているのだ。

 確かに、彼ならば諦めることはないだろう。どうにかして戦おうとするに違いない。だが、相手にはCランクの魔物もかなり混じっている。フランが強いとはいえ、片腕で勝てるような甘い相手ではない。


「出立の準備を整えて、私達はメルスへ向かいます」


 俺達へ話しかけて来たのは黒だった。彼女は桜花から新たな人員が派遣されて以降もフェスティナ大陸に残り、魔王軍を止めるために前線の集落にいた。メルスが襲われているということで、彼女はこうして帝花へと帰還していたのだ。

 現在前線はかなり下げられており、人員も少ない。フスト王国が潰されたことにより、前線の維持が難しいとされたからである。

 ヌル達は今も王城跡地に滞在していた。そのため、集落にいては予期しない方向から襲われる危険性があったのだ。ヌル達も厄介だが、今は自分達の領土であるメルスを邪骨大蛇から取り戻す方が先だった。


「相手は四天王だが大丈夫なのか?」

「はい。以前の私達ではありませんよ」


 そう言って魔王領の方を見る。彼女は今、雅のことを思い出しているのだろう。四天王デルダとの戦いで俺達は苦戦し、桜花の兵をまとめ上げていた隊長の雅の命と引き換えに勝ったのだ。

 彼は隊長に任命されるほどの実力があり、桜花の侍の中でも頭一つ飛び抜けて強かった。その彼がいてもかなり苦戦を強いられている。それほど四天王は強力なのだ。

 彼女もデルダとの戦いでそれは実感している。何か策があるか、桜花の兵士のレベルが以前と比べて上がったのだろう。


「それでは」


 そう言って彼女はこの場を去った。兵士の数も以前と比べて多い。新たに派遣された兵士がいるからだ。


「繋がりました」


 サーシャの傍らに光の玉が飛んでいる。これが精霊の魔力だ。体を形作ってはいないが、用件を伝えるだけならばこれで問題ない。


「どうかしましたか?」


 光の玉から精霊の声が聞こえてくる。四天王ヌルがフスト王国を消滅させたことや、桜花から邪骨大蛇が来ていることを知らないのだろう。彼女はそういったことにあまり興味がない。


「…カリア達に伝えてくれ」

「まさか精霊を伝令に使うなんて…やはり面白い人ですね。しっかりと伝えておきます」


 俺が用件を伝えると、彼女はすぐに了承を示してくれた。彼女の力を借りることができれば四天王相手でも楽なのだが、彼女は俺達の仲間という訳ではない。わざわざ四天王との戦いに参戦する気もないだろう。

 何故か俺達を気に入っているようで、窮地に立たされると助けてくれる。それでも、彼女の力を借りる前提で動くのは危険だ。

 今回はカリア達に伝えてくれるだけでも有難い。


「取り敢えず、俺達は宿を探すか」


 王城は今、メリル奪還の準備で慌ただしくしている。いつまでも俺達がいては迷惑だろう。フランがいるのでカトレアだけを残し、俺とサーシャは城出た。

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