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第六十七話 結界術師、桜花の依頼を受ける

                             第四章 桜花

                    第六十七話 結界術師、桜花の依頼を受ける



「実は…最近放棄された土地が魔王領から攻撃を受けていまして」


 桜花の兵士が話し始めた内容は、どうやら魔王領から攻められているという問題なようだ。


「フスト王国が放棄した町は多く、そちらにまで手が回らないのですよ」


 どうやら、思っていた以上にフスト王国は色々な町を放棄していたようだ。俺は王都に向かうまで村で過ごしていたので、あまり町が何処にあるかやいくつあるかが分からない。フェスティナ大陸に来た桜花の者は元々人数が少ないため、かなり手こずっているようだ。

 それに気付いた魔王領の者が、好機とばかりに攻めて来たのだろう。

 フスト王国にいた腕が立つ者は桜花との戦いに参加したり、新たな王都へと向かっている。そのため現在フスト王国に放棄された土地に残っている者には、強者がいないらしい。なので色々な町を回って、手を貸してくれる者を探していたようだ。

 これは対応を間違えてしまった。俺達が出て来なければ、この村にも強者がいないということで、帰ってくれたかもしれない。しかし、この者にはすでに俺の結界を見られてしまっている。流石に今から断ることはできないだろう。


「相手はかなり手強いものですから、強者でなければ相手ができないのですよ」

「手強い相手とは?」

「一体誰なの?」

「確かに気になるな」


 明らかに戦闘狂三人が反応している。面倒そうだから断ろうと思っていたが、それ以前の問題だったようだ。相手が強いと言われて、彼等が興味を示さない訳がなかったのである。


「相手は魔王軍四天王の一人です。名前は分かりませんが…」


 魔王軍四天王の一人と聞いて、話が変わってきた。流石に彼は戦ったことがないみたいで誰かまでは分からないが、もし破壊のデルダだった場合は俺が倒す。奴はカイとイラの仇だ。勇者がウェンデルト王国で処刑される今、残る仇はデルダだけなのである。


「恐らくフスト王国の旧王都に行けば、誰か分かると思いますよ。戦った人がいるので」


 桜花にはデルダと戦って、生き残った者がいるようだ。勇者ですら全く相手にならなかった者と、戦って生き残ったのだ。かなりの手練れだと思っていいだろう。


「旧王都へ行って、話を聞いてから手を貸すか決める。それでいいか?」

「ええ。強制はできないですからね」


 一度旧王都へ向かうことを約束し、桜花の者と別れる。勝手に話を決めてしまったが、村の者は気にしていないようだ。自分達の村に被害が及ばないことを知ったからだろう。今回俺達が桜花からの依頼を受けようが受けまいが、彼等に影響がないのだ。


「今度はしっかりと、一度帰って来てね!」

「ああ、分かっている」


 桜花の者と話した翌日、ナディス村を出て旧王都へと向かう。父のダルと妹のウリィには、俺達が旧王都へ向かうことを昨夜の内に伝えてあった。

 その際、ウリィにはかなり反対された。わざわざ俺達が対応する必要がないからだ。二人にはフスト王国であったことは一切話していない。

 ダウから王都であったことは聞いているだろうが、チナの神殿跡地であったことは知らないはずである。そのため、俺がウェンデルト王国まで行っていたことを知らない。

 彼女には、最終的に無事に帰るということで許可をもらった。勇者パーティーに入れてもらえなかったとダウから聞いていたのに全く帰らなかったことで、かなり心配させてしまったらしい。

 ダルは俺の話を聞いても、何も言うことはなかった。俺の選択に対して、やってみろといった感じの様子であった。そのため、勝手にやらせてもらうことにする。

 勿論全て任せてくれるということは、責任も全て自分にあるということだ。成人したということで、俺を大人の一人として認めてくれたのだろう。

 村を出る際に、ダルは俺へとサインを送って見せた。今回はウリィに許可をもらうため、何をするかを大まかに話している。

 ウェンデルト王国に行っていたことまでは分からなかっただろうが、いない間に何かしていたことくらいは気付いているだろう。特に冒険者になって、今は仲間も沢山いるのだ。それを見ただけでも、冒険者としてしっかりやっているということは分かってくれているのだろう。

 サインは頑張れ、精一杯やってこいということだ。それに答えるように、俺も同じサインを返しておいた。

 サーシャとウリィがいつの間にかかなり仲良くなっていた。元々サーシャは、かなり人と仲良くなるのが早い。いつも俺が知らない間に、彼女は皆と仲良くなっているのだ。

 今回もやはり村の皆と仲良くなっていた。恐らく俺がゴブリン部隊を討伐しに行って、一日帰って来なかった日だ。あの日は危険だと思ってカリアとサーシャを置いて行った。村も警戒態勢だったので、彼女達は置いて行かれても何も言わなかったのだ。

 一緒に旅をしてきて、どうして一人で行ったのかを理解してくれていたのだろう。おかげで俺も、安心して町で一晩過ごすことができた。


 旧王都は、俺が一度来た時から何も変わっていなかった。一度に沢山の町が放棄されたため、桜花もその対応に追われて旧王都に手を加える暇がなかったのだろう。

 旧王都には沢山の人がいる。その殆どが元々ここに住んでいた者達だ。全員が避難できる訳ではないので、王都を移す際に彼等は置いて行ったのだろう。つまり今もここに住んでいる者達は、フスト王国に見捨てられた者達ということだ。

 桜花がここを侵略するために来た訳ではないのでよかったが、侵略目的だったならば、彼等は今頃奴隷のような扱いを受けていただろう。

 城下町の中心部付近の店は殆どが閉まっていたが、その周囲に存在する店は全てが開いている。やはり金を持っている者達だけが移動できたのだろう。誰も住んでいない家は全て空き家となっていた。桜花の者達が住んでいる形跡はない。

 人数が少ないため、他の町や王城に住んでいるようだ。ここは彼等が介入しなくてもやっていけてるため、あまり住人と関わっていないらしい。


「何者だ!」

「俺達は桜花の者に依頼されて来たんだよ」

「そのランクで大丈夫か?」


 そう言って、フスト王国の冒険者証を見せる。俺のフスト王国での冒険者証はFランクでとなっているため、どうやら力不足と認識されたようだ。

 桜花の兵士は、やはり特殊な武器を持っているらしい。彼の腰に下げられている武器は、かなり剣としては細身の者ものとなってる。

 サーシャも仮の冒険者証を見せようとしていたが、それは後ろ手で止めておく。俺とサーシャ以外はウェンデルト王国の冒険者証しか持っていないからだ。俺だけが見せるならば兎も角、彼女も見せてしまえば他の者が見せないのはおかしくなってしまう。


「付いて来い」


 後ろにいるフランやカリアを見た後、兵士は城内へ案内を始める。二人を見て、俺達が強者であることを認めてくれたようだ。

 一つの部屋へと案内された。それは皮肉にも、俺が一度城へ来た時に案内された部屋だった。そこへ兵を二人後ろへ携えた男が、中へと入って来る。見るからに強者の風格を漂わせるその男は、右目に大きな傷を負っていた。

 剣は皆と同じような形だが、かなり長いものとなっている。そのため、彼は背中に背負っていた。


「ようこそ。君達は手伝うために来たということで、間違いないかな?」

「相手次第だな」


 魔王軍の四天王と戦うのだ。彼等はかなり危険な存在である。戦う理由がなければ、わざわざ戦いたい相手ではない。


「相手は魔王軍四天王、破壊のデルダだ。Aランクの俺と仲間に、傷を負わせて退却させた存在だ」


 そこで一度、彼は言葉を止める。その瞳にはかなりの怒りが宿っていた。Aランク冒険者ですら大怪我を負うレベルの戦いなのだ。彼は言っていないが、恐らく彼等の仲間に戦死者が出たのだろう。


「この目はそいつにやられた。俺も戦いには出るが、守ってやれるほど易しい存在ではない。半端な強さでは、ただ死ぬだけだぞ」


 俺達に脅しをかけるように彼は言う。だが、それは一切関係ない。

 デルダという名前を聞いて、俺の考えは決まった。奴とさらに奴と戦う時には、Aランクである彼も戦ってくれるそうだ。

 二人の仇であるデルダを倒すには戦力がいるので、とても有難いことである。


「俺がデルダを倒す」


 決意を込めた俺の表情を見て、彼は少し驚いた表情を浮かべていた。

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