↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者パーティーに拒否された結界術師、気ままに冒険者を始める  作者: 蜂蜘蛛
第二章 商人の町ユーリア
34/109

第三十四話 結界術師、村を見つける

                          第二章 商人の町ユーリア

                       第三十四話 結界術師、村を見つける



 ウザンを探すためにユーリアを出る。周辺といっても、感じ方は人それぞれだ。一日で往復できる距離を探す者もいれば、近辺のみを捜索する者もいる。

 俺は野宿でも問題ないため、少し遠くまで行くことにした。どの道、そろそろユーリアを出て王都へ行こうと考えていたところだ。もう少しこの町の役に立ってもいいだろう。

 相手は腐ってもCランク冒険者ということで、低ランクの冒険者はいくつかのパーティーで固まって行動している。俺とカーベインのパーティーは、同じCランク冒険者ということで単独で動いていた。


「太陽が気持ちいいです」


 草原を歩くサーシャは、ピクニック気分でいるようだ。とても楽しそうな表情を浮かべている。視界を遮るものが何もないため、周囲を見渡せばすぐに敵に気付くことができる。

 警戒さえ怠っていなければ、奇襲されることもないだろう。

 危険がないため、彼女の好きなようにさせてやる。結構遠くまで歩いてきたのに、あっちに走ったりこっちに走ったりと凄く元気だ。

 カリアも警戒を緩めることはないが、サーシャのはしゃぐ姿を見て嬉しそうな表情である。視線は常にサーシャに向いているが、周囲の気配を探っているのは流石だと思う。

 特に俺はその辺りを空間認識に頼っているので、全くそちらへ意識が向かない。空間認識は優秀だが、範囲に入るまでわからないという短所がある。遠くで何か小細工をされていても、気付くことができないのだ。

 ユーリアから二時間近く歩いたところで、小さめの林があった。


「ここは何処だ?」


 カリアの言葉に、俺もサーシャも首を傾げる。地図には西に行けば山があると書かれていた。確かに遠くを見れば、林のさらに先に山が見える。だが、その手前に林など書かれていなかった。

 小さいと言っても、林なので町一つ分ほどの大きさはある。これだけの大きさがあるのに、地図に載っていないのは明らかにおかしい。


「入ってみるか?」

「ああ」

「はい!」


 俺の言葉に二人が答える。かなり危険ではあるが、ウザン達が逃げ込むならば地図に載っていない林は好都合だ。

 警戒心を強めながら、木々の合間を進んでいく。サーシャもすでに気分を切り替えており、注意深く周囲を確認している。

 木々に囲まれて視界が悪いこの状況では、俺の空間認識はかなり便利だ。どれだけ上手に隠れていようと、範囲に入れば見つけることができる。


「これって…また迷うか?」


 ある程度歩いたところで、どちらから来たのかわからなくなってしまった。これは、何処も同じような見た目をしているからではない。それならば、以前の経験で回避できただろう。それだけ神秘の森には苦労をさせられた。

 今回は明らかにおかしい。まるで、エルフ達が張った認識疎外の魔法にかかっている時みたいに…。

 そこでふと気付く。地図に載っていないのは、何者かによる認識阻害等の魔法によるものではないかと。ウェンデルト王国は亜人をそれほど軽視していない。そのため、この不思議な林にエルフがいてもおかしくはない。


「私も帰り道がわからなくなった。明らかに何者かによるものだろう」


 彼女はエルフなので、自然の中で迷うなんてことはあり得ないのだ。つまり、誰かが妨害しているということだ。それも、エルフである彼女に自然の中で迷わせるほどのレベルで。

 認識阻害は空間認識の最大の弱点とも言える。認識を阻害されるため、役に立たなくなってしまう。


「ここは私が」


 そう言って、カリアが地面に手をつく。すると手から地面に、そして植物へと彼女の魔力が流れていった。

 認識阻害の魔法を妨害するように、魔力が流れた植物が光り出す。その光に触れた空間が揺れ始めた。その場所だけが先ほどと見た目が変わっていく。植物の周辺の景色が変わっていくが、光が全てを覆うことはない。


「はぁ…はぁ…流石に無理か」


 植物の発光が止まる。カリアが脂汗を垂らし、肩で息をしていた。彼女は魔法戦士であり、職業的には戦士系の職業だ。魔術師系とは違い、魔力がそれほど多い訳ではない。

 これだけの規模の認識阻害魔法を打ち消すには、どうやら魔力が足りなかったようだ。

 結局正解の道は見つからず、認識阻害の魔法がかかっているということがわかっただけだった。


「今日はここで休むことにしよう」


 林の中だが、結界を張っていれば安全に寝ることができる。カリアの魔力が回復した後に、少しずつ先ほどの力を使って動くことにした。

 結界の中で食事を取り、寝袋を広げる。カリアは魔力を使い過ぎたようで、寝袋に入るなりすぐに眠りについた。

 サーシャはまだ起きてはいるが、うとうとしていてすぐにでも寝てしまいそうだ。昼間にあれだけ騒いでいたのだ。疲れているのだろう。今日は十時間近く歩き続けていた。

 俺も眠りにつく。


「あれ!?」

「何これ!?」

「何?」


 三つの反応が空間認識に引っかかる。二つが結界に阻まれて戸惑い、もう一つはその様子を後ろから見ている。このために、今回は結界を小さめに張っていた。

 空間認識は結界よりもかなり大きく張っていたのだが、ここまで近付かれるまで気付けなかった。寝ていたということもあるが、やはり認識阻害によるものが大きい。


「結界を張った。お前達は逃がさないぞ」


 居場所さえわかればこちらのものだ。反応を結界で囲む。


「何すんのよ!」

「出られない」

「…」


 結界に捕らわれていたのは妖精だった。その辺りに咲いている花と同じくらいの大きさで、羽の生えた人のような見た目をしている。

 出ようと必死に暴れているが、結界から抜け出すことはない。三人共女のようだが結界の近くにいた二人とは違い、後ろから見ていた者はおとなしい。

 妖精は精霊に似ているが、明確に異なる点がある。妨害系の魔法に特化しており、攻撃魔法は苦手だ。そして、しっかりとした自分の肉体を持っている。そのため、全員が十センチくらいの大きさしかない。

 精霊は魔力で体を構成しているため、突然現れたり変形したり、分身を作ることも可能なのだ。


「どうするの?」


 おとなしい妖精がこちらへと尋ねてくる。脱出できない二人を見て、力尽くで出ることをすでに諦めているようだ。


「俺達はこの林を抜けたいだけだ」

「嘘つくな! 私達を襲いに来たんだろ!」

「そうですね」


 俺の言葉を二人が否定する。


「敵?」


 敵とは誰のことを指すのかわからなかったが、妖精がいるなど知らなかったのだ。俺達が敵であるはずがない。


「俺達は本当に敵ではない」

「「嘘だ!」」

「そう…。こっち」


 騒ぐ二人を無視して、おとなしい妖精が進む方向を教えてくれる。結界に囲まれてるため、彼女はこれ以上案内できない。


「ちょっと! 何でミリアだけ出すのよ!」


 おとなしい妖精はミリアというようだ。案内役として、結界を解除して彼女を自由にした。逃がさないために、他の二人は結界に閉じ込めたままだ。人質として使わせてもらう。


「…こっち」


 彼女はおとなしいだけでなく、口数もあまり多くないようだ。必要なことしか話そうとしない。木々の隙間から光が漏れ始めた。そろそろ林を抜けるのだろう。

 そう思っていたが、現実は違うようだ。


「私達の村」


 円形に林が開けていた。そこだけ光が入り込み、中心にポツンと小さな村がある。ミニチュアの玩具のような大きさだ。妖精の村なので、この大きさが適切なのだろう。大きさ的に、俺達が村へ入ることはできない。

 何故彼女がここに連れていたのかがわからない。だが、騙してここまで連れてきたことに変わりはない。


「何故ここへ連れてきた。俺達は林を抜けたいと言ったはずだ」

「助けて」


 彼女は一言そう言い、俺達へと深く頭を下げた。

妖精の名前がアンのままだったので、ミリアに修正しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。