59
「ありゃ毒だね」
アリッサが舌打ちする。ブランは、レイモンドの雇った傭兵が毒の煙で死に至ったというハートストンの話を思い出した。
「じゃあ、あれは致死性のある毒ガスってことですよね??」
そのような短いやりとりをしている間にも、煙は恐ろしい勢いで噴き出し続け、次第に倉庫内を満たしていった。
「風の精霊、呼ぶ」
ブン・ラッハがそう言って何かつぶやくと、周囲にヒュッと風が渦巻き、三人を守るように吹き始めた。
倉庫内はついに、風の幕に守られたアリッサたちの周り以外すべて、紫色のガスにおおわれてしまった。ブランはキリー村でのことを思い出し、自分はよくよくガスに縁があるのだなとため息をついた。
「やはりあいつらは平気みたいだね」
毒の霧が立ちこめる中、ゾンビ達は何のダメージを受けることもなく、再びアリッサたちに接近してきた。
「あいつら、風の流れ乱す、危険」
彼らが無理に風の幕に入ってこようとすれば、気流が乱れこちらに毒ガスが入ってきてしまうようだ。
「そんときゃあたしが結界をはるさ。だが、そうしちまったらそこで詰んじまうね」
さすがのアリッサも、三人分の結界を維持しようとすれば守りの一手となってしまう。
「こないだみたいにガスを吹き飛ばしちゃったらどうです?」
キリー村では、アリッサが竜巻を起こし、石化ガスを打ち払ったのだ。
「それをしたいのはやまやまなんだが…」
アリッサは皮肉な笑みを浮かべる。その額には汗が浮かんでいた。
「どうやらそれは無理なようだ」




